2012年11月12日月曜日

実技試験合格見込み!

昨日、知的財産管理技能検定一級(コンテンツ専門業務)の、「実技」試験を受けてきました。

本日、正答が発表され、
筆記試験は、全問正解!

口頭試問で少しモゴモゴしたところはありましたが、おおむね的確な回答ができたのではないかと感じています。
試験官の先生も、「そうですね」とおっしゃっていましたし。

ということで、合格見込みです!

2012年11月10日土曜日

民法の、契約の有効性に関する問題

【問題】
次の1〜3の記述を前提に、契約書の効力に関するア〜ウの記述を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。


マンガ作家甲は、高校時代からすでにマンガ雑誌への連載を行っていたが、当該連載について、18歳だった当時、自分の父親がマンガ雑誌の出版社と交わしていた出版契約書Aを発見した。甲はその存在につき、全く了知していない。


マンガ作家乙は、22歳当時、出版社と交わした出版契約書Bを発見した。著作権者は乙で、自筆でサインし捺印もしている。ところが、よく見ると、出版社としては当時の編集者の個人名が記載されている上、署名欄には出版社の編集部のゴム印と、編集者の三文判が押されているだけである。


マンガ作家丙は、27歳であった5年前に節税対策のために有限会社Xスタジオを設立し、自己の作品の著作権はすべてXスタジオに移転している。ところが、丙は、2年前に旧作を文庫版で出す際に、妻が出版社と交わしていた出版契約書Cを発見した。丙はその内容につき、全く了知していない。


ア 出版契約書Aは甲が未成年のときに取り交わされたものであるので、成人した甲は上記1の契約を取り消すこともできるが、追認も可能である。

イ 上記3の契約は、代理人である妻が本人の承諾を得ていないでした意思表示であり、丙はこれを取り消すことが可能である。

ウ 上記1、2、3の契約のいずれも、有効なものと認められる可能性がある。

(22年11月実施)


【解説】
民法の、契約の有効性に関する問題です。


未成年は民法において、制限(行為)能力者として、単独では完全な法律行為ができない者とされています。そのため、特定の行為を除き、法定代理人の同意を得ないでした行為は、取り消すことができます(5条)。
追認によって取消権の放棄をして、法律行為の効果を確定させることもできます(122条)。
しかし本問において出版契約書Aは、父親が交わした契約書であって、甲自身の法律行為ではないから、取り消しはできません。

第5条(未成年者の法律行為)
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

第122条(取り消すことができる行為の追認)
取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。

第20条(制限行為能力者の相手方の催告権)
制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
2 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。


不適切


日常家事債務として、有効とされる可能性があります。
「日常家事債務」とは、民法761条に規定されています。

第761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

すなわち、
「通常は、夫婦の一方が、夫婦の生活共同体を代表して法律行為を行うことが多いが、それが日常の家事活動の範囲内のものであるときは、夫婦の他方も連帯責任を負うことになる」(法律学小辞典第4版)
ことをいいます。
例えば、住居を借りたり、日用品を買ったり、近所付き合い、子の教育等です。

不適切


契約とは、契約書を作成しないと成立しないのではなく、一般には口頭で意思を確認し合った段階で、成立します。
 
「契約は相対立する二個の意思表示の合致した法的行為であって、債権の発生を目的とするもの」
(我妻栄・有泉亨・川井健『民法2』勁草書房、207ページ)
です。すなわち、申し込みと承諾によって成立するものであって、書面を交わす等の方式は、決められていません〔方式自由の原則〕。

つまり、口約束でも契約は有効なのです。
では契約書はどういう役割かというと、裁判になった時の証拠となるにすぎません。
ですので、一般論から言えば、2も有効になると言えます。

適切

民法の「債務不履行」に関する問題

【問題】
ゲームメーカーX社の契約担当者の契約書に関するア〜エの発言を比較して、最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 「債務不履行による損害賠償額に関する民法416条は強行規定ではなく任意規定だよね」

イ 「債務不履行に対して損害賠償請求ができる条項を設けない場合には、不法行為に基づく損害賠償請求はできるけど、債務不履行による損害賠償請求はできないことになるので注意が必要だ」

ウ 「債務不履行による損害賠償請求について条項を設ける場合として、損害額の立証が不可能であるか困難であることが想定される場合に損害賠償額を予定しておくことがある」

エ 「債務不履行による損害賠償請求について条項を設ける場合として、当事者の一方が当該取引から得ることの維持できる利益の額に比べて、相手方に生じることの予想される損害の額が過大になりそうなことが想定される場合に損害賠償額の限度額を設けることがある」

(22年11月実施)


【解説】
民法の「債務不履行」に関する問題です。
まず条文を見てみましょう。


第415条(債務不履行による損害賠償)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

第416条(損害賠償の範囲)
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

第420条(賠償額の予定)
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3 違約金は、賠償額の予定と推定する。


損害額の算定は、請求者が行わなければならないことが基本です。



416条は任意規定なので、その特約として420条があります。

適切


不法行為に基づく損害賠償請求と、債務不履行による損害賠償請求は、訴訟物を異にするため、両立するという考えが、多数説・判例です(旧訴訟物理論)。
※「訴訟物」については、民事訴訟法の基本的な勉強をすればすぐに出てきますが、ここでは省略します。

不適切


420条1項のとおりです。

適切


これも、416条が任意規定であることから、公序良俗に反しない限り、契約は有効と考えられています。

適切

映画の製作における資金調達の問題

【問題】
X社では新作映画の製作を企画している。資金調達方法及び実施体制に関するX社の社員のア〜エの会話を比較して、最も不適切と考えられるものはどれか。


甲「銀行借入では、映画がヒットしない場合であっても、借入金は全額返済しなければならないリスクがあるよね」
乙「担保物件の限度までしか返済義務がないノンリコース・ローンという方法があるよ。但し、金利が高いという難点があるね」


甲「銀行借入の場合は、銀行側には作品が完成しなかったときや予算の範囲内で完成できなかったときのリスクがあるよね」
乙「米国や欧州では、完成保証会社が銀行に対し、映画が所定の予算内で完成することを保証した保証書を発行し、プロデューサーからその手数料をとる仕組みが、実用化されているよ」


甲「映画の資金調達に関しては、製作委員会方式があるよね」
乙「製作委員会方式は、出資会社のうち一社が幹事会社となって資金のとりまとめや制作プロダクションへの映画制作の発注を行うけれども、完成した映画の著作権は各社の共有になるところが特徴の一つだよ」


甲「製作委員会方式においては、著作権侵害で巨額の損害賠償が生じた場合でも、各出資会社まで責任を負うことはないよね」
乙「製作委員会の法的性質は有限責任事業組合と考えられているので、委員会財産の範囲内での賠償責任に留まり、各出資会社が責任を負うことはないよ」

(22年11月実施)


【解説】
映画の製作における資金調達の問題です。


ノンリコース・ローンについては、Wikipediaに記載がありました。

適切

イ・ウ・エ
個別の方式について、次の資料を参考に、考えてみてください。

民法組合(任意組合)と投資事業有限責任組合の比較(三田行政法務事務所)

(もう一つ資料としたページがあったのですが、今はなくなってしまったようです)


これらを見ると、映画製作委員会の法的性質は、「有限責任事業組合」ではなく、民法上の「組合」(任意組合)に該当するといわれていることが分かります。

エが不適切

知的財産の価値評価に関する問題

【問題】
次の知的財産の価値評価に関する文章の空欄[1]〜[3]に入る語句の組合せとして,最も適切と考えられるものはどれか。

「インカム法」とは、資産が将来生み出す[1]に基づいて知的財産の価値を評価する手法である。[2]はインカム法の最も代表的な手法であり、事業等の価値評価に広く用いられている。[2]を簡単に説明すると、ある資産を経済的に支配することにより、将来にわたり[1]を得ることができる場合に、将来各期における予測[1]フローを[3]価値に引きなおすことの意義は、同額でも、1年後に手に入る場合と5年後に手に入る場合とでは価値が異なるため、この違いを調整するために、すべての[1]フローを資本の機会コストを用いて[3]価値に割り戻すことにある。

ア [1]=マネー     [2]=DCF法        [3]=将来
イ [1]=キャッシュ [2]=マーケット法 [3]=現在
ウ [1]=キャッシュ [2]=DCF法        [3]=現在
エ [1]=マネー     [2]=マーケット法 [3]=将来

(22年11月実施)


【解説】
知的財産の価値評価に関する問題です。
この資料に、定義の説明が書かれています。

鈴木公明「知的財産の価値評価」(特技懇)
(このPDFの1ページ目に、問題文と同じ文章があります)

価値づくり(知的資産活用).com


知的財産の価値評価方法には、
・コスト法
・マーケット法
・インカム法
の3つがあります。

本問では、この内、「インカム法」について問われています。



2012年11月3日土曜日

資金調達における「直接金融」「間接金融」についての問題

【問題】
ゲームメーカーX社では、X社が持つ3D技術を利用して、裸眼による3D機能を搭載したゲーム機を開発することになった。しかしながら、基本特許ライセンス費用やプログラム開発費、新しい製造ラインの整備、さらにアプリケーションなどのコンテンツ制作費などの資金が新たに必要であった。
資金を調達するため財務部と知的財産部が招集され、財務部部長からの方針説明があった。次の文章の空欄[1]〜[4]に入る語句の組合せとして、最も適切と考えられるものはどれか。

資金調達の方法にはいろいろありますが、X社の銀行からの[1]である銀行借入はすでに限度額に達しているので、他の方法を模索したいと考えております。また、一般投資家からの資金調達としては[2][3]化がありますが、増資のための株式発行や[4]の発行は会社の業績が芳しくないので避けたいと思います。
一方、X社の持つ3D技術は、これからのゲーム機の主流となり得る技術であり、業界では特に注目されていると知的財産部から聞いております。よって、投資ファンドの導入を検討したいと思います。

ア [1]=直接金融 [2]=金利     [3]=証券   [4]=証券
イ [1]=直接金融 [2]=間接金融 [3]=公募   [4]=証券
ウ [1]=間接金融 [2]=証券     [3]=ローン [4]=社債
エ [1]=間接金融 [2]=直接金融 [3]=証券   [4]=社債

(22年11月実施)


【解説】
資金調達における「直接金融」「間接金融」についての問題です。
分かりやすくまとめられたページがありましたので、ここを読んでください。
直接金融と間接金融」(有馬秀次著・金融大学  金融用語辞典


[1]
銀行は貸し手と借り手の間を仲介する“金融仲介機関”です。
返済されないリスクは、銀行が負います。
→従って、[1]には「間接金融」が入ります。

[2][3]
金融仲介機関が介在しない場合を直接金融といい、代表的な金融機関は証券会社です。
返済されないリスクは、貸し手が負います。
→そこで、[2]には「直接金融」、[3]には「証券」が入ります。

[4]
株式や社債の発行も、直接金融です。
→[3]で「証券」を使ってしまっているので、[4]には「社債」が入ります。



プロバイダ責任制限法についての問題

【問題】
放送事業者のX社が新たに動画投稿サイトを立ち上げようとしている。このX社の法務担当者が、いわゆるプロバイダ責任制限法について発言している。ア〜エの発言を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 「プロバイダ責任制限法の適用対象としての『特定電気通信』には、放送法や有線テレビジョン放送にいう『放送』も含まれます」

イ 「プロバイダ責任制限法では、著作権侵害を主張してコンテンツの削除依頼があった場合、被害者の迅速な救済を優先するために先に当該コンテンツを削除してから発信者の反論によって復活させることでプロバイダが民事責任を免れる、という仕組みを採用しています」

ウ 「米国のDMCA(Digital Millennium Copyright Act)と比較すると、日本のプロバイダ責任制限法は、著作権侵害の場合に限定されず、名誉毀損やプライバシー侵害の場合も適用対象になります」

エ 「著作権を侵害されたと主張する者からプロバイダが発信者情報の開示の請求を受けた場合でも、発信者から開示に同意する旨の回答を得ていない限り、個人情報保護の観点から発信者情報を開示してはならないこととされています」

(22年11月実施)


【解説】
プロバイダ責任制限法についての問題です。
短い法律ですので、条文を読んでおきましょう。

この法律の概要が、次のサイトでまとめられていますので、これも読んでおけば、大丈夫です。条文も、逐条解説も載っています。
プロバイダ責任制限法 関連情報Webサイト



放送に当たるものは、放送法等で規律するものとして除外されています。

不適切


発信者に対する免責は、削除してから復活させるのではなく、
・権利侵害と信じる相当の理由があるとき
・削除申出を連絡しても7日以内に反論がないとき
は、削除してもよい、と規定されています。

不適切


プロバイダ責任制限法には、「権利の侵害」に限定がありません。

適切


発信者から意見を聴いて判断するよう求められてはいますが、同意のない限り開示してはならないのではなく、権利侵害と信じる相当の理由があれば、開示しても民事責任を問われなくなります。

不適切

2012年11月1日木曜日

アメリカ著作権法の「登録」に関する問題

【問題】
[1]著作権法においては、最初の発行から5年以内に著作権登録がなされた著作権の登録証には、その記載事項について法律上の推定が与えられており、1989年2月までは、著作権登録は[2]であった。また、最初の発行から3カ月以内に著作権登録を経由しておれば、[3]が与えられる利益がある。従って、[1]においては著作権登録を速やかに行うことが慣習化しているといえる。そして、著作権登録について虚偽の事実を申請すれば刑事罰の制裁があることに鑑みると、[1]著作権局発行に係る著作権登録証には、著作権を有することについて、強い事実上の推定力があるといい得るであろう。

[1]
ア 米国
イ 中国
ウ 英国
エ 韓国

[2]
ア 創作年月日を証明するための要件
イ 創作年月日の法律上の推定を受けるための要件
ウ 著作権侵害訴訟を提起するための訴訟要件
エ 著作権侵害訴訟で認容判決を得るための要件

[3]
ア 弁護士費用請求権
イ 創作年月日の法律上の推定効
ウ 最先の創作者であるという推定効
エ 懲罰的損害賠償請求権

(22年11月実施)


【解説】
アメリカ著作権法の「登録」に関する問題です。
アメリカ著作権法については、日本における第一人者といえる山本隆司弁護士がまとめられたファイルが公開されていますので、これを読んでおくことをお勧めいたします。

「アメリカ著作権制度の概要とコンテンツの法的保護」


[1]
この空欄を埋めるには、問題文を読んで、「ああ、これはアメリカ著作権法についてだな」と判断するしか、方法は分かりません……



[2]
アメリカ著作権法において、著作権登録は著作物の保護要件ではありません。
また、訴訟要件でもありません。
ただしこれらは、アメリカがベルヌ条約に加盟した1989年3月1日以降のことなのです。



[3]
アメリカ著作権法における「登録」の効果をまとめてみます。

【著作権登録の効果】
・著作権登録証に記載された事項及び著作権の有効性について、裁判上の一応の証拠となり、法律上の推定を受けられる。
(ただし虚偽の記載は刑事制裁の対象)
著作物の発行後5年以内に登録

・登録後に著作権が侵害された場合、法定賠償請求権と弁護士費用賠償請求権が与えられる。
〔損害賠償等の請求権〕
 a) 現実損害の賠償(日本同様)
 b) 侵害者の利益が現実侵害より大きければ、これを請求できる
 c) 法定賠償
   上記a・bに代えて請求でき、損害の立証を要しない。
   損害がなくても請求可。
     侵害開始前に登録完了 又は
     発行後3カ月以内に登録完了
       の場合、
     著作物1件あたり750〜30,000ドル
     (故意は15万ドルまで。善意無過失は200ドルから)
 d) 裁判費用回復請求権(日本にもある)
 e) 弁護士費用回復請求権
     侵害開始前に登録完了 又は
     発行後3カ月以内に登録完了



アメリカ著作権法の概略についての問題

【問題】
米国における著作権制度に関するア〜エの記述を比較して,最も適切と考えられるものはどれか。

ア 米国の著作権法においては,最初の発行から5年以内に著作権登録がなされていれば,弁護士費用の賠償請求権が与えられる。

イ 米国の著作権法においては,最初の発行から5年以内に著作権登録がなされた著作権の登録証には,その記載事項について法律上の推定が与えられる。

ウ 米国の著作権法による保護を受けるためには,当該著作物の創作を行った時点において新規性を有していることが要件とされる。

エ 日本人が日本国内で創作した著作物について,米国における著作権登録を受けるためには,米国にて最初に発行されなければならない。

(23年7月実施)


【解説】
アメリカ著作権法の概略についての問題です。
前問とかぶる部分が多いので、そちらの解説も参照してください。
重複部分は省略して、簡潔に書きます。


弁護士費用回復請求権が付与されるのは、発行後3カ月以内に登録が完了した場合です。

不適切


登録証記載事項に法律上の推定効が与えられるのは、発行後5年以内の登録についてです。

適切


アメリカ著作権法における保護の要件は、次の3つです。
・著作物性
・創作性
固定性(ここに注意! 日本にはない)

「新規性」はありません。

不適切


アメリカ著作権法における登録の要件に、このような規定はありません。
山本隆司弁護士のインフォテック法律事務所のサイトに、次の説明が記載されています。

(1) 適用範囲
 日本にも著作権登録の制度がありますが、登録できる事項・登録できる場合が限られています。 1.無名・変名著作物について著作者の実名を登録すること、2.著作物の第1発行年月日を登録すること、 3.プログラム著作物について創作年月日を登録すること、4.著作権の譲渡等を登録することができる(75条〜77条)に過ぎません。  これに対して、米国では、著作物を作成したこと自体を登録することができます。 したがって、すべての著作物について著作権登録を受けることができます。

不適切

ベルヌ条約における「本国」の認定の問題

【問題】
ベルヌ条約に規定される本国に関するア〜エの記述を比較して,最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 米国で最初に発行された日本人の著作物(米国以外では発行されていない)は,米国を本国とする。

イ 日本で最初に発行された米国人の著作物(日本以外では発行されていない)は,米国を本国とする。

ウ 日本と米国で同時発行された日本人の著作物(日本と米国以外では発行されていない)は,日本を本国とする。

エ 日本と米国で同時発行された米国人の著作物(日本と米国以外では発行されていない)は,日本を本国とする。

(23年7月実施)


【解説】
ベルヌ条約における著作物の「本国」の認定の問題です。
条文を見れば、答えが分かります。

第5条〔保護の原則〕
(4) 次の著作物については、次の国を本国とする。
  (a) いずれかの同盟国において最初に発行された著作物については、その同盟国。
    もつとも、異なる保護期間を認める二以上の同盟国において
    同時に発行された著作物については、これらの国のうち
    法令の許与する保護期間が最も短い国とする。



ア 米国で最初に発行された著作物→米国が本国
イ 日本で最初に発行された著作物→日本が本国
ウ 日米で同時発行された著作物 →保護期間が短い国
エ 日米で同時発行された著作物 →保護期間が短い国

※ウ・エについては、日米の保護期間を比較すると、日本は原則、「著作者の死後50年」です。米国は、原則「死後70年」です。すると、「保護期間が短い国」は、日本になります。


イが不適切

2012年10月31日水曜日

TRIPS協定による輸出入規制の問題

【問題】
知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)に関するア〜ウの記述を比較して,最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 加盟国は権利者に著作権及び商標権を侵害する物品の輸入差止申立権を付与しなければならない。
イ 加盟国は輸出に関しても税関当局による通関停止措置を講じることができる。
ウ 加盟国は並行輸入品及び通過貨物について輸入差止措置を講じる義務を負う。

(23年7月実施)


【解説】
TRIPS協定による輸出入の規制についての問題です。
これは条文どおりですので、51条を見てみましょう。

第51条 税関当局による物品の解放の停止
加盟国は,この節の規定に従い,不正商標商品又は著作権侵害物品(注1)が輸入されるおそれがあると疑うに足りる正当な理由を有する権利者が,これらの物品の自由な流通への解放を税関当局が停止するよう,行政上又は司法上の権限のある当局に対し書面により申立てを提出することができる手続(注2)を採用する。加盟国は,この節の要件を満たす場合には,知的所有権のその他の侵害を伴う物品に関してこのような申立てを可能とすることができる。加盟国は,自国の領域から輸出されようとしている侵害物品の税関当局による解放の停止についても同様の手続を定めることができる。
(注1)
この協定の適用上,
(a) 「不正商標商品」とは,ある商品について有効に登録されている商標と同一であり又はその基本的側面において当該商標と識別できない商標を許諾なしに付した,当該商品と同一の商品(包装を含む。)であって,輸入国の法令上,商標権者の権利を侵害するものをいう。
(b) 「著作権侵害物品」とは,ある国において,権利者又は権利者から正当に許諾を受けた者の承諾を得ないである物品から直接又は間接に作成された複製物であって,当該物品の複製物の作成が,輸入国において行われたとしたならば,当該輸入国の法令上,著作権又は関連する権利の侵害となったであろうものをいう。
(注2)
権利者によって若しくはその承諾を得て他の国の市場に提供された物品の輸入又は通過中の物品については,この手続を適用する義務は生じないと了解する。



「不正商標商品又は著作権侵害物品」の輸入差止を申し立てることができる「手続を採用する」と規定されています。

適切


「自国の領域から輸出されようとしている侵害物品」の差止も同様に、「手続を定めることができる」と規定されています。
任意であることに注意です。

適切


「注2」において、これらの輸入差止手続を採用する義務が除外されています。

不適切

2012年10月30日火曜日

著作権・著作隣接権に関する国際条約の問題

【問題】
出版社X社は、自社の週刊誌の翻訳本を海外に輸出することを検討していて、諸外国における著作権保護レベルについてX社の法務担当者が発言している。ア〜エの発言を比較して、最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 「当社の週刊誌の翻訳本は、日本で発行された著作物ではありますが、輸出先の国において無断で複製された場合には、その輸出先の国の著作権法によって保護されることになります」

イ 「輸出先の国がどのような保護レベルにあるかを検討するにあたっては、まずどのような条約に加盟しているかを確認するといいね」

ウ 「著作権に関する条約といえば、ベルヌ条約と万国著作権条約が有名だね。TRIPS協定では著作権の保護については規定されているが、著作隣接権の保護については規定がないね」

エ 「ベルヌ条約は無方式主義を採用し、万国著作権条約は方式主義を採用しているけど、万国著作権条約を締結している国のうち、ベルヌ条約を締結していない国は数カ国しか存在しておらず、現在では『C』マークを付す意味はほとんどなくなっているね」

(22年11月実施)


【解説】
著作権・著作隣接権に関する国際条約の問題です。

「とるじいや」さんのサイトに、分かりやすくまとめられていますので、このページを見ればすべて回答が分かります。



この場合は、複製行為が行われた国の法律を準拠法として適用すると考えられています。
これを「属地主義」といいます。

適切


現在は、かなりの国がベルヌ条約に加盟し、保護水準が似てきていますが、すべて同じではありません。
ですので、このような調査は当然に必要でしょう。

適切


TRIPS協定の特色として、特許庁HPにまとめられています。

TRIPS協定の概要

(1)基本原則
1-1. ミニマム・スタンダード
……協定の保護水準は、加盟国が遵守すべき最低基準(ミニマム・スタンダード)。
1-2. パリ条約規定の準用
1-3. 内国民待遇、最恵国待遇

(2)保護基準
2-1. 著作権・著作隣接権
a.コンピュータ・プログラム保護。
b.実演家、レコード製作者、放送機関の保護。
c.著作物のレンタル権。

2-2. 商標
a.保護対象・保護期間の明確化。
b.周知商標保護:非類似商品・サービスであって商標権者と関連性を示す場合は保護。

2-3. 地理的表示
a.地理的表示:商品の品質・名声が、原産地の領域・土地に由来する場合に、その土地の原産であることを特定する表示。
b.地理的表示の保護。
c.ワイン・スピリッツの追加的保護。
d.今後の改正検討

2-4. 意匠
a.保護対象・期間の明確化。

2-5. 特許
a.特許対象
b.発明地差別の禁止。
c.保護期間は出願日から20年以上。

2-6. 契約における反競争的行為の規制
a.ライセンス契約などによる競争制限的な行為の規制。

(3)知的財産権の行使(エンフォースメント)
3-1. 一般的義務
a.知的財産侵害行為に対する効果的な行使手続の義務づけ。
b.不必要に複雑な手続、不合理な期間制限、不当な遅延を伴わない裁判手続、行政手続。

3-2. 水際措置
a.水際措置:知的財産侵害物品が輸入されようとする際、これを税関で差し止める手続。
b.商標権者及び著作権者は、適切な証拠があるとき、侵害品の通関の停止を関税当局に申し立てることが可。

(4)紛争の防止及び解決(第63〜64条)
a.加盟国は義務として国内法令をTRIPS理事会に通報国家間の紛争を未然に防止。
b.TRIPS協定違反を巡る国家間紛争に、WTO共通の新たな紛争処理手続を適用。

これらを見ますと、著作隣接権も保護されています。

不適切


万国著作権条約を締結している国のうち、ベルヌ条約を締結していない国は、現在ではカンボジアとラオスの2カ国です。
ですので、この両国で発行する著作物には注意が必要ですが、それ以外の場合なら、無方式主義のベルヌ条約が優先されますので、マルシーマークを付ける必要はありません。
このマルシーマークは、慣行として、いろいろなところで「付けなければならない!」と思われています。
しかし上記のとおり、法的意味はほとんどありません。
書かないと著作権が発生しないわけではありませんし、書いたからと言って特段保護が強くなるわけでもありません。
単なる著作権者は誰かを示す、目印程度の意味ですね。
ちなみに適切な表記方法は、「マルシー+著作権者名+第一発行年」です。

適切

万国著作権条約 第3条〔保護の条件〕
1 締約国は、自国の法令に基づき著作権の保護の条件として納入、登録、表示、公証人による証明、手数料の支払又は自国における製造若しくは発行等の方式に従うことを要求する場合には、この条約に基づいて保護を受ける著作物であつて自国外で最初に発行されかつその著作者が自国民でないものにつき、著作者その他の著作権者の許諾を得て発行された当該著作物のすべての複製物がその最初の発行の時から著作権者の名及び最初の発行の年とともに(c)の記号を表示している限り、その要求が満たされたものと認める。(c)の記号、著作権者の名及び最初の発行の年は、著作権の保護が要求されていることが明らかになるような適当な方法でかつ適当な場所に掲げなければならない。

※(c)は、実際にはマルシーです

知的財産の保護に関する条約の問題

【問題】
次の文章の空欄[1]〜[5]に入る語句の組合せとして、最も適切と考えられるものはどれか。

知的財産権の保護のための取極としては、[1]があります。[2]に対してはその適用に関し[3]が設けられているものの、原則としてすべての[4][1]を遵守する義務を負っています。
すべての[4]で構成されるTRIPS理事会が設置されていますが、その主な役割の一つは、加盟国が[1]に基づく義務を遵守しているか否か、を監視することです。そして、その監視の方法の一つとして、各国の[5]レビューが挙げられます。
具体的には、[1]が定める事項に関し加盟国が実施する[5]等を公表することとなっています。さらに、加盟国における[1]の実施状況を、「検討することに資するために」TRIPS理事会に[5]を通報することと規定されています。[5]レビュー会合においては、通報された[5][1]上の義務を果たしているかどうか、加盟国とレビュー国の間で質疑応答が行われます。

ア [1]=TRIPS協定
   [2]=開発途上国・後発途上国
   [3]=猶予期間
   [4]=WTO加盟国
   [5]=法令
イ [1]=TRIPS協定
   [2]=先進国
   [3]=猶予期間
   [4]=TRIPS加盟国
   [5]=裁判例
ウ [1]=パリ条約
   [2]=開発途上国・後発途上国
   [3]=特別措置
   [4]=パリ同盟国
   [5]=裁判例
エ [1]=パリ条約
   [2]=WTO加盟国
   [3]=特別措置
   [4]=パリ同盟国
   [5]=法令

(22年11月実施)


【解説】
知的財産の保護に関する条約の内容を問う問題です。

知的財産権の保護のための取極としては、TRIPS協定と、パリ条約があります。([1])

【TRIPS協定】(正式名称=知的所有権の貿易関連の側面に関する協定
[基本的な特徴]
・WTO加盟の条件
・猶予期間
・内国民待遇の原則→営業秘密の保護
・最恵国待遇の原則
・知的財産権の侵害行為に対する効果的な措置(エンフォースメント)を国内法において確保する義務
・パリ条約とベルヌ条約の実態条件を満たさなければならない

【パリ条約】(正式名称=1900年12月14日にブラッセルで,1911年6月2日にワシントンで,1925年11月6日にヘーグで,1934年6月2日にロンドンで,1958年10月31日にリスボンで及び1967年7月14日にストックホルムで改正され,並びに1979年9月28日に修正された工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約◆長過ぎ!→工業所有権の保護に関するパリ条約
[基本的な特徴]
・保護対象=工業所有権
・内国民待遇の原則
・優先権
・権利独立の原則


TRIPS協定は、1995年のWTO(世界貿易機関)の創設に合わせて、新たな貿易関連ルールの一つとして発効したものです。
知的財産権の保護に関してWTO加盟国が遵守すべき最低基準(ミニマム・スタンダード)として機能していますので、WTO加盟国はすべて、TRIPS協定を遵守する義務を負っています。([4])
ただし、開発途上国・後発途上国にとっては特に負担が大きいことから、「猶予期間」が設けられています。([3])
猶予期間とは、TRIPS協定によって政策変更が迫られるのはどちらかというと途上国側であることから、履行義務の発生まで、途上国には特に、数年の経過期間が設けられています。現在は、分野によって、少しずつ延長されている状況です。
また、加盟国の国内法令とTRIPS協定との整合性について、「法令レビュー」という審査が行われます。([5])

TRIPS協定については、特許庁の次のページにある、「特許行政年次報告書」を見てみてください。
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/toushin/nenji/nenpou2012_index.htm

第3章の、313-314ページを見ると、ヒントになります。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2012/honpen/4-3.pdf

2012年10月25日木曜日

税関による輸入差止の問題3

【問題】
キャラクターグッズを販売するX社は、キャラクターAが登場するイラストを作成した。ところが、キャラクターAが刺繍されたタオルを輸入業者であるY社がX社に断りなく輸入して販売しようとしていることが判明した。

Y社が輸入しようとしているタオルのイラストは、X社のイラストを一部改変していたものであった。X社の法務担当者甲と乙とのア〜ウの会話を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。


甲「わが社のイラストを一部改変しているようだけど、税関が判断に困ったらどうするのかな」
乙「特許権に基づく場合には特許庁長官に意見照会ができる制度がありますが、著作権に基づく場合に文化庁長官に意見照会を求める制度はありません」


甲「わが社のイラストを一部改変しているようだけど、このことについても何かいえないかな」
乙「著作者人格権侵害となるべき物の輸入もみなし侵害とされていますので、著作者人格権による輸入差止申立が可能です」


甲「わが社のイラストを一部改変しているため、税関の判断には時間がかかるかもしれないね」
乙「迅速な水際措置という趣旨から、一定期間を経過した後は、Y社は担保を提供して認定手続の取りやめを求めてタオルの輸入許可を受けることができます」

(22年11月実施)


【解説】
税関による輸入差止についての諸制度の問題です。


特許庁長官の意見を聴くことを税関長に求めることができる者は、特許権、実用新案権、意匠権に係る権利者及び対象貨物を輸入しようとした者です(関税法69条の17)。
また、育成者権についても、農林水産大臣に対し認定の参考となるべき意見を求めることができます(69条の18)。
ただし、商標権、著作権については、意見照会はできません。

適切


関税法69条の11第1項9号は、著作権、著作隣接権を侵害する物品の輸入を禁止しており、著作権法113条1項1号の規定する著作者人格権、出版権、実演家人格権の侵害物は対象となっていません。

不適切


認定手続において申立人と輸入者の主張が対立する等の理由で、侵害か否かの認定が容易にできなくなる場合、認定手続が長期化することが考えられるため、輸入できないことによって輸入者に生じる損害の賠償を担保するために申立人に対して相当額の金銭を供託させる制度があります。
ただし本問はこれと異なり、通関解放制度の問題です。これは、輸入差止申立が受理された特許権、実用新案権、または意匠権に係る貨物について認定手続が執られたとき、輸入者は一定期間経過後、税関長に対し認定手続の取りやめを求めることができる制度です。
「通関解放制度」の詳細は、税関HPに解説されていますので、お読みください。
この制度の対象には、アと同じく、商標権、著作権は含まれていません。

不適切



第69条の17(輸入してはならない貨物に係る意見を聴くことの求め等)
特許権、実用新案権又は意匠権を侵害する貨物に該当するか否かについての認定手続が執られたときは、当該貨物に係る特許権者等(特許権者、実用新案権者又は意匠権者をいう。以下この条において同じ。)又は輸入者(当該認定手続に係る貨物を輸入しようとする者をいう。以下この条において同じ。)は、政令で定めるところにより、当該特許権者等が第六十九条の十二第一項(輸入してはならない貨物に係る認定手続)の規定による通知を受けた日(以下この項及び第六十九条の二十第二項(輸入してはならない貨物に係る認定手続を取りやめることの求め等)において「通知日」という。)から起算して十日(行政機関の休日の日数は、算入しない。)を経過する日(第六十九条の二十第一項及び第二項において「十日経過日」という。)までの期間(その期間の満了する日前に当該認定手続の進行状況その他の事情を勘案して税関長が当該期間を延長することを必要と認めてその旨を当該特許権者等及び当該輸入者に通知したときは、通知日から起算して二十日(行政機関の休日の日数は、算入しない。)を経過する日(第六十九条の二十第一項において「二十日経過日」という。)までの期間)内は、当該認定手続が執られている間に限り、税関長に対し、当該認定手続に係る貨物が当該特許権者等の特許権、実用新案権又は意匠権を侵害する貨物に該当するか否かに関し、技術的範囲等(特許法第七十条第一項 (特許発明の技術的範囲)(実用新案法第二十六条 (特許法 の準用)において準用する場合を含む。)に規定する技術的範囲又は意匠法第二十五条第一項 (登録意匠の範囲)に規定する範囲をいう。第九項及び第六十九条の十九(輸入してはならない貨物に係る認定手続における専門委員への意見の求め)において同じ。)について特許庁長官の意見を聴くことを求めることができる。
2  税関長は、前項の規定による求めがあつたときは、政令で定めるところにより、特許庁長官に対し、意見を求めるものとする。ただし、同項の規定による求めに係る貨物が第六十九条の十一第一項第九号(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物に該当するか否かが明らかであるときその他特許庁長官の意見を求める必要がないと認めるときは、この限りでない。
3  税関長は、第一項の規定による求めがあつた場合において、前項ただし書の規定により特許庁長官の意見を求めなかつたときは、第一項の規定による求めをした特許権者等又は輸入者に対し、その旨及びその理由を通知しなければならない。
4  特許庁長官は、第二項本文の規定により税関長から意見を求められたときは、その求めがあつた日から起算して三十日以内に、書面により意見を述べなければならない。
5  税関長は、第二項本文の規定により特許庁長官の意見を求めたときは、その求めに係る特許権者等及び輸入者に対し、その旨を通知しなければならない。
6  税関長は、第四項の規定による意見が述べられたときは、その意見に係る特許権者等及び輸入者に対し、その旨及びその内容を通知しなければならない。
7  税関長は、第二項本文の規定により特許庁長官の意見を求めたときは、その求めに係る第四項の規定による意見が述べられる前に、第一項の求めをした者が特許権者等である場合にあつてはその求めに係る貨物が第六十九条の十一第一項第九号に掲げる貨物に該当しないことの認定を、第一項の求めをした者が輸入者である場合にあつてはその求めに係る貨物が同号に掲げる貨物に該当することの認定をしてはならない。
8  税関長は、第二項本文の規定により特許庁長官の意見を求めた場合において、その求めに係る第四項の規定による意見が述べられる前に、第一項の求めをした者が特許権者等である場合にあつてはその求めに係る貨物が第六十九条の十一第一項第九号に掲げる貨物に該当すると認定したとき、若しくは第一項の求めをした者が輸入者である場合にあつてはその求めに係る貨物が同号に掲げる貨物に該当しないと認定したとき、又は第六十九条の十二第六項若しくは第六十九条の十五第十項(輸入差止申立てに係る供託等)の規定により当該貨物について認定手続を取りやめたときは、その旨を特許庁長官に通知するものとする。この場合においては、特許庁長官は、第四項の規定による意見を述べることを要しない。
9  税関長は、特許権、実用新案権又は意匠権を侵害する貨物に該当するか否かについての認定手続において、第六十九条の十二第一項の規定による認定をするために必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、特許庁長官に対し、当該認定手続に係る貨物が特許権者等の特許権、実用新案権又は意匠権を侵害する貨物に該当するか否かに関し、技術的範囲等について意見を求めることができる。
10  第四項から第六項まで及び次条第五項の規定は、前項の規定により意見を求める場合について準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。


第69条の18(輸入してはならない貨物に係る認定手続における農林水産大臣等への意見の求め)
税関長は、育成者権を侵害する貨物又は第六十九条の十一第一項第十号(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物に該当するか否かについての認定手続において、第六十九条の十二第一項(輸入してはならない貨物に係る認定手続)の規定による認定をするために必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、育成者権を侵害する貨物に該当するか否かについての認定手続にあつては農林水産大臣に、同号に掲げる貨物に該当するか否かについての認定手続にあつては経済産業大臣に対し、当該認定のための参考となるべき意見を求めることができる。
2  農林水産大臣又は経済産業大臣は、前項の規定により税関長から意見を求められたときは、その求めがあつた日から起算して三十日以内に、書面により意見を述べなければならない。
3  税関長は、第一項の規定により意見を求めたときは、認定手続に係る育成者権者又は不正競争差止請求権者及び当該認定手続に係る貨物を輸入しようとする者に対し、その旨を通知しなければならない。
4  税関長は、第二項の規定による意見が述べられたときは、前項の育成者権者又は不正競争差止請求権者及び当該認定手続に係る貨物を輸入しようとする者に対し、その旨及びその内容を通知しなければならない。
5  税関長は、第一項の規定により農林水産大臣又は経済産業大臣の意見を求めた場合において、その求めに係る第二項の規定による意見が述べられる前にその求めに係る貨物が育成者権を侵害する貨物若しくは第六十九条の十一第一項第十号に掲げる貨物に該当すると認定したとき若しくは該当しないと認定したとき、又は第六十九条の十二第六項若しくは第六十九条の十五第十項(輸入差止申立てに係る供託等)の規定により当該貨物について認定手続を取りやめたときは、その旨を農林水産大臣又は経済産業大臣に通知するものとする。この場合においては、農林水産大臣又は経済産業大臣は、第二項の規定による意見を述べることを要しない。


第69条の11(輸入してはならない貨物)
次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
九  特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品
十  不正競争防止法第二条第一項第一号 から第三号 まで、第十号又は第十一号(定義)に掲げる行為(これらの号に掲げる不正競争の区分に応じて同法第十九条第一項第一号 から第五号 まで又は第七号 (適用除外等)に定める行為を除く。)を組成する物品



第113条(侵害とみなす行為)
次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
一  国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
二  著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為

2012年10月24日水曜日

税関による輸入差止申立制度の問題2

【問題】
キャラクターグッズを販売するX社は、キャラクターAが登場するイラストを作成した。ところが、キャラクターAが刺繍されたタオルを輸入業者であるY社がX社に断りなく輸入して販売しようとしていることが判明した。

社内における相談の結果、X社は税関に対して輸入差止の申立をした。X社の法務担当者甲と乙とのア〜エの会話を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。


甲「税関に対する輸入差止の申立の有効期間はあるのかな」
乙「有効期間は最長2年ですので、その後も輸入差止を希望する場合には更新手続が必要になります」


甲「税関から認定手続開始通知書を受け取ったけど、何かする必要はあるのかな」
乙「輸入業者であるY社が争う医師を示さない限り、タオルは自動的に廃棄処分されますので、もう何もする必要はありません」


甲「税関から証拠と意見を提出するように指示されたけど、Y社が輸入しようとするタオルを提出前に確認したいよね」
乙「税関に申し出れば、タオルの数量に関わらず画像情報を電子メールで送ってもらえます」


甲「写真だけでなくもう少し詳しくY社のタオルの確認や検査をしたいけど、できるかな」
乙「タオルはこちらの所有ではないので、これ以上詳しい確認や検査をすることは一切できません」

(22年11月実施)


【解説】
税関による輸入差止申立制度の問題の続きです。
税関ホームページに、詳しい解説が載っていますので、ぜひお読みください。
http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_001.htm


有効期間は、最長2年で、申立人の希望する期間です。
ただし、申立てする権利の存続期間が、この2年間に達していない場合は、その権利の存続期間の最終日までとなります。
更新は、差止申立有効期間の最終日の3カ月前から手続を行うことができ、更新期間は同じく最長2年の希望日までです。

適切


通知書の日付の日の翌日から起算して10執務日以内に、権利者、輸入者双方が、当該疑義物品について意見・証拠を税関に提出します。
税関は、その内容に基づいて当該疑義物品が侵害に該当するか否かの認定を行います。
従って、何もしなければ、侵害に認定されないおそれがあり、その場合は事後の輸入も止められなくなるでしょう。

不適切


申し出により、疑義貨物の画像情報を電子メールにより送ってもらうことができます。
ただしそれは、証拠・意見を提出するために必要な場合であって、認定手続開始通知書に記載されている疑義貨物の数量が10個以下の場合に限られます。
また、税関が、業務遂行上、真にやむをえない理由により電子メールの送信ができない場合は除かれます。

不適切


権利者及び輸入者は、申請により、当該疑義物品を点検することができます。
また申立者は、申請により、承認条件を満たし、かつ、見本検査に係る供託を行った場合、見本検査(分解・分析)を実施することができます。
税関の立会に加え、輸入者が立ち会うことも可能です。

不適切

2012年10月23日火曜日

税関による輸入差止申立制度の問題

【問題】
キャラクターグッズを販売するX社は、キャラクターAが登場するイラストを作成した。ところが、キャラクターAが刺繍されたタオルを輸入業者であるY社がX社に断りなく輸入して販売しようとしていることが判明した。

X社の法務担当者甲と乙とのア〜エの会話を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。


甲「税関にY社のタオルの輸入差止はできるのかな」
乙「税関は行政機関なので、司法機関である裁判所の決定や判決書がなければ輸入差止の申立ができません」


甲「そもそも税関にY社のタオルの輸入差止を申し立てなければ、税関は差し止めてくれないのかな」
乙「知的財産侵害疑義物品については、税関は申立があった場合に限り、申立人の提出した識別ポイントに従って、タオルに限って輸入差止に関する手続を行います」


甲「輸入差止の申立をお願いする場合、誰に依頼したらいいのかな」
乙「弁護士又は弁理士に依頼できます」


甲「税関は9つあるようだけど、申立先の税関は1つでいいのかな」
乙「Y社がどの税関から通関しているかわからないので、9つすべての税関にそれぞれ申立をしなければいけません」

(22年11月実施)


【解説】
税関による輸入差止申立制度の問題です。
税関ホームページに、詳しい解説が載っていますので、ぜひお読みください。
http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_001.htm


輸入差止申立制度は、知的財産権を有する者または不正競争差止請求権者が、自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に、税関長に対し、当該貨物の輸入を差し止め、認定手続きを執るべきことを申し立てる制度であり、申立の主体は権利者です。
裁判所の決定や判決書は参考資料ではあるが、必要書類ではありません。
また、この行政手続と裁判所の司法手続とは別個独立のものであるため、権利者は、税関に対して輸入差止の申立を行う一方、同時に裁判所に対して輸入禁止の仮処分を求める申立を行うことや輸入差止の訴えを提起することも可能です。

不適切


輸入差止には、税関が自主的に行う場合と、権利者や輸入者等の申立に基づいてなされる場合の2とおりがあります。
税関の知的財産調査官は、侵害物品の輸入の取り締まりのため、資料等の収集に努めるものとされています。
関税法69条の11第2項には、
税関長は、前項第1号から第6号まで、第9号又は第10号に掲げる貨物で輸入されようとするものを没収して廃棄し、又は当該貨物を輸入しようとする者にその積戻しを命ずることができる
と規定されており、また69条の12第1項では、
税関長は、この章に定めるところに従い輸入されようとする貨物のうちに前条第1項第9号又は第10号に掲げる貨物に該当する貨物があると思料するときは、政令で定めるところにより、当該貨物がこれらの号に掲げる貨物に該当するか否かを認定するための手続(認定手続)を執らなければならない
と規定されていて、権利者等の申立は、要件とされていません。

不適切


税関ホームページに、「輸入差止申立ての要件」というページがあります。
http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_002.htm

このページの中の、「1.権利者であるか」の欄に、書かれています。

適切


税関ホームページの、「輸入差止申立ての一般的手順」のページの内、「2 提出窓口(申立先税関及び担当部門)」の欄に、書かれています。
http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_003.htm

関税法69条の13第1項では、「いずれかの税関長に対し、(中略)申し立てることができる」と規定されています。

不適切



第69条の11(輸入してはならない貨物)
次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
 一 麻薬及び向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚醒剤(覚せい剤取締法にいう覚せい剤原料を含む。)並びにあへん吸煙具。ただし、政府が輸入するもの及び他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
 二 拳銃、小銃、機関銃及び砲並びにこれらの銃砲弾並びに拳銃部品。ただし、他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
 三 爆発物。ただし、他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
 四 火薬類。ただし、他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
 五 化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律第二条第三項(定義等)に規定する特定物質。ただし、条約又は他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該条約又は他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
 五の二 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第六条第二十項(定義)に規定する一種病原体等及び同条第二十一項に規定する二種病原体等。ただし、他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
 六 貨幣、紙幣若しくは銀行券、印紙若しくは郵便切手又は有価証券の偽造品、変造品及び模造品並びに不正に作られた代金若しくは料金の支払用又は預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録をその構成部分とするカード
 七 公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品(次号に掲げる貨物に該当するものを除く。)
 八 児童ポルノ
 九 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品
 十 不正競争防止法第二条第一項第一号から第三号まで、第十号又は第十一号(定義)に掲げる行為を組成する物品
2 税関長は、前項第一号から第六号まで、第九号又は第十号に掲げる貨物で輸入されようとするものを没収して廃棄し、又は当該貨物を輸入しようとする者にその積戻しを命ずることができる。
3 税関長は、この章に定めるところに従い輸入されようとする貨物のうちに第一項第七号又は第八号に掲げる貨物に該当すると認めるのに相当の理由がある貨物があるときは、当該貨物を輸入しようとする者に対し、その旨を通知しなければならない。


第69条の12(輸入してはならない貨物に係る認定手続)
税関長は、この章に定めるところに従い輸入されようとする貨物のうちに前条第一項第九号又は第十号に掲げる貨物に該当する貨物があると思料するときは、政令で定めるところにより、当該貨物がこれらの号に掲げる貨物に該当するか否かを認定するための手続(以下この条から第六十九条の二十までにおいて「認定手続」という。)を執らなければならない。この場合において、税関長は、政令で定めるところにより、当該貨物に係る特許権者等(特許権者、実用新案権者、意匠権者、商標権者、著作権者、著作隣接権者、回路配置利用権者若しくは育成者権者又は不正競争差止請求権者及び当該貨物を輸入しようとする者に対し、当該貨物について認定手続を執る旨並びに当該貨物が前条第一項第九号又は第十号に掲げる貨物に該当するか否かについてこれらの者が証拠を提出し、及び意見を述べることができる旨その他の政令で定める事項を通知しなければならない。
2 税関長は、前項の規定による通知を行う場合には、当該貨物に係る特許権者等に対しては当該貨物を輸入しようとする者及び当該貨物の仕出人の氏名又は名称及び住所を、当該貨物を輸入しようとする者に対しては当該特許権者等の氏名又は名称及び住所を、併せて通知するものとする。
3 税関長は、認定手続が執られる貨物の輸入に係る第六十七条(輸出又は輸入の許可)の規定に基づく輸入申告書その他の税関長に提出された書類、当該認定手続において税関長に提出された書類又は当該貨物における表示から、当該貨物を生産した者の氏名若しくは名称又は住所が明らかであると認める場合には、第一項の通知と併せて、又は当該通知の後で当該認定手続が執られている間、その氏名若しくは名称又は住所を当該貨物に係る特許権者等に通知するものとする。
4 税関長は、認定手続を経た後でなければ、この章に定めるところに従い輸入されようとする貨物について前条第二項の措置をとることができない。
5 税関長は、認定手続が執られた貨物が前条第一項第九号又は第十号に掲げる貨物に該当すると認定したとき、又は該当しないと認定したときは、それぞれその旨及びその理由を当該認定がされた貨物に係る特許権者等及び当該認定がされた貨物を輸入しようとする者に通知しなければならない。ただし、次項の規定による通知をした場合は、この限りでない。
6 税関長は、前項本文の規定による疑義貨物に係る認定の通知をする前に次の各号に掲げる場合のいずれかに該当することとなつたときは、当該疑義貨物に係る特許権者等に対し、その旨を通知するとともに、認定手続を取りやめるものとする。
 一 第三十四条(外国貨物の廃棄)の規定により当該疑義貨物が廃棄された場合
 二 第四十五条第一項ただし書(許可を受けた者の関税の納付義務等)の規定により当該疑義貨物が滅却された場合
 三 第七十五条(外国貨物の積戻し)の規定により当該疑義貨物が積み戻された場合
 四 前三号に掲げる場合のほか、当該疑義貨物が輸入されないこととなつた場合
7 第二項若しくは第三項の規定による通知を受けた者又は第六十九条の十六第二項の規定により承認を受けた同項に規定する申請者は、当該通知を受けた事項又は当該申請に係る見本の検査その他当該見本の取扱いにおいて知り得た事項を、みだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。



第69条の13(輸入してはならない貨物に係る申立て手続等)
特許権者、実用新案権者、意匠権者、商標権者、著作権者、著作隣接権者若しくは育成者権者又は不正競争差止請求権者は、自己の特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権若しくは育成者権又は営業上の利益を侵害すると認める貨物に関し、政令で定めるところにより、いずれかの税関長に対し、その侵害の事実を疎明するために必要な証拠を提出し、当該貨物がこの章に定めるところに従い輸入されようとする場合は当該貨物について当該税関長又は他の税関長が認定手続を執るべきことを申し立てることができる。この場合において、不正競争差止請求権者は、不正競争防止法第二条第一項第一号(定義)に規定する商品等表示であつて当該不正競争差止請求権者に係るものが需要者の間に広く認識されているものであることその他の経済産業省令で定める事項について、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣の意見を求め、その意見が記載された書面を申立先税関長に提出しなければならない。
2 申立先税関長は、前項の規定による申立てがあつた場合において、当該申立てに係る侵害の事実を疎明するに足りる証拠がないと認めるときは、当該申立てを受理しないことができる。
3 申立先税関長は、第一項の規定による申立てがあつた場合において、当該申立てを受理したときはその旨及び当該申立てが効力を有する期間を、前項の規定により当該申立てを受理しなかつたときはその旨及びその理由を当該申立てをした者に通知しなければならない。
1 税関長は、第一項の規定による申立てを受理した場合又は当該申立てが他の税関長により受理された場合において、当該申立てに係る貨物について認定手続を執つたときは、政令で定めるところにより、当該申立てをした者又は当該貨物を輸入しようとする者に対し、それぞれその申請により、当該貨物を点検する機会を与えなければならない。ただし、前条第六項の規定により当該認定手続を取りやめたときは、この限りでない。

2012年10月17日水曜日

JASRACによる著作権管理事業の範囲についての問題

【問題】
東京に本社をおくX社では,アジア系アーティストの人気が高いため,海外へ向けての音楽配信事業を計画している。事業の立案に際し法務担当者へ意見を求めたところ,回答があった。ア〜ウの記述を比較して,法務担当者の回答として,最も適切と考えられるものはどれか。

ア JASRACが管理している日本の楽曲については,JASRACから許諾を受けることができれば,各国にサーバーを設置し配信をしてもよい。

イ 外国の楽曲については,JASRACが演奏権を管理している場合は,JASRACの許諾を受けることができれば海外に向けた配信が可能である。

ウ 楽曲を有料配信するか無料配信するかの違いによって実演家の権利処理が変わることはない。

(23年7月実施)


【解説】
JASRACによる著作権管理事業の範囲についての問題です。


JASRACが管理しているのは、日本国内の権利のみです。

不適切


同上

不適切


実演家の権利処理が変わるのは、著作権法38条(営利を目的としない上演等)の場合のみと考えられます。

適切

2012年10月13日土曜日

著作権等管理事業法に基づく「著作権等管理事業者」についての問題

【問題】
著作権等管理事業法に関するア〜エの記述を比較して,最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 使用料規程は文化庁に届け出され,かつ公示されているが,そこに定められた使用料の額について,交渉して減額することは許される。

イ 著作権等管理事業者が管理する著作物等は,権利者本人から直接その利用の許諾を得ることは一切できない。

ウ 一定の場合,文化庁に著作権等管理事業者の登録をせずに第三者の著作権等の管理を行うことができる。

エ 文化庁に登録された著作権等管理事業者から許諾を得ても,当該管理事業者が著作権者から著作権の管理委託を受けていない場合には,その利用は著作権侵害となる。

(23年7月実施)


【解説】
著作権等管理事業法に基づく、「著作権等管理事業者」とは何か、何ができるか、についての問題です。


使用料規程に定める額を超えた使用料の徴収は、たとえ利用者との合意に基づくものであっても無効となります。また、著作物の利用形態は日々進化・多様化するものでありますから、既存の規程を適用することができない利用形態については、協議のうえで当面の使用料額を決めて許諾することが認められています。

適切


委託者による管理の留保や制限が認められているので、その分は委託者自らが管理し、許諾することとなります。

不適切


非一任型の管理のみを行う場合や、密接関係者(親族間や親会社・子会社間等)のみの管理を行う場合等、著作権等管理事業法の規制対象外となり、登録不要な場合があります。
文化庁サイトに詳しい説明が載っています。
※下部にある(参考)の表の「許諾件の管理」は、「許諾権の管理」の誤りではないかと思います。

適切


当たり前です……

適切

2012年10月2日火曜日

著作権等管理事業法の対象範囲に関する問題

【問題】
著作権等管理事業法に関するア〜ウの記述を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 受託者が、予定された範囲の利用行為についての著作権者等の許諾の意思表示を伝達するにすぎない場合であっても、本法における管理委託契約に含まれる。

イ 受託者が、取次や代理により著作権の管理を業として行う場合は、権利者は受託者となるため、差止請求や訴訟提起の業務を行うこともできると解される。

ウ 受託者が、著作物等の利用を許諾するに際し、委託者が自らの判断において使用料の額を決定する場合は、本法の対象となる管理委託契約から除かれる。

(22年11月実施)


【解説】
著作権等管理事業法の対象範囲に関する問題です。

著作権等管理事業法は、委託者(多くは著作権者)が受託者(著作権等管理事業者)に対し、「管理委託契約」に基づいて、著作権の管理を委託する際のルールを定めた法律です。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO131.html

著作権等管理事業者の代表的なものには、JASRAC(日本音楽著作権協会)がありますが、実はそのほかにもたくさんの団体が登録されており、平成24年6月1日現在で32団体あります。

著作権等管理事業者登録状況一覧
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/kanrijigyouhou/touroku_jyokyo/pdf/touroku_jyokyo_ver07.pdf

では「管理委託契約」とはどのようなものでしょうか。
第2条(定義)に定められています。

この法律において「管理委託契約」とは、次に掲げる契約であって、受託者による著作物、実演、レコード、放送又は有線放送の利用の許諾に際して委託者が使用料の額を決定することとされているもの以外のものをいう。
 一 委託者が受託者に著作権又は著作隣接権を移転し、著作物等の利用の許諾その他の当該著作権等の管理を行わせることを目的とする信託契約
 二 委託者が受託者に著作物等の利用の許諾の取次ぎ又は代理をさせ、併せて当該取次ぎ又は代理に伴う著作権等の管理を行わせることを目的とする委任契約

基本的には、受託者に管理を任せますよ、という「一任型」の管理が、本法における管理委託契約に該当し、委託者自身も一定の管理を行う「非一任型」の場合は該当しません。

具体的にはどういうことでしょうか。
本問の解説をしていくことで、分かってきます。



本問のような、著作権者と利用者との間を取り結び、契約の成立を目指す行為を、「媒介」といいます。最終的に契約を結ぶ主体となるのは、委託者と受託者です。
(例えれば、仲人さんのようなものでしょうか。最終的には結婚するのは新郎と新婦ですし、決定するのも本人たちですよね)
このような媒介行為は仲介業務法では規制対象だったのですが、媒介する者の裁量によって最終的に契約を成立させるものではないことから、管理事業法では非一任型の管理であるとして規制の範囲外となりました。
2条を見ると、「信託」「委任」(「取次」「代理」)の文言はありますが、「媒介」はありません。

不適切


まず「取次」「代理」の意味を見てみましょう。

取次を営業として行う商人を問屋といい、それは商法第551条に定義されています。

問屋トハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為メニ物品ノ販売又ハ買入ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ

つまり、「自己の名を以て他人の為めに物品の販売又は買入を為す」ことを、「取次」というのです。
この法律効果は、いったん自己に帰属した後に、直ちに本人に移転することになります。

次は代理です。
民法第99条(代理行為の要件及び効果)を読んでみましょう。

代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

この法律効果も、本人に生じます。

ということは、取次も代理も、管理の目的たる著作権は、受託者に移転しないのです。
すなわち、受託者は、著作権者ではありません。
ですから、受託者たる管理事業者が、差止請求や訴訟提起をすることはできません。
行えるのは、権利者である作家等のみです。

では信託契約の場合はどうでしょうか。
「信託」では、財産権が委託者から受託者に移転するのです。
従って、受託者たる管理事業者が著作権者として、直接、差止請求や訴訟提起をすることができます。

不適切


これは、上に書いた、「管理委託契約」第2条のとおりです。

適切

2012年8月27日月曜日

著作権等管理事業法の制定経緯に関する問題

【問題】
空欄[1]〜[4]に入る語句の組合せとして、最も適切と考えられるものはどれか。

わが国の著作権の管理事業は、60年以上にわたって、「昭和14年法律第67号(著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律)」(仲介業務法)によって、その法的基盤が定められてきましたが、

1,業務実施の[1]により新規参入を制限していること
2,著作物の利用契約の媒介行為など、原著作者の利益が害されるおそれが低い形態までをも、「著作権ニ関スル仲介業務」として規制対象としていたこと
3,適用対象範囲が小説、脚本、楽曲を伴う場合における歌詞及び楽曲に制限されており、現在の著作物の利用実態に適応していないこと
4,行政庁の裁量権を広範に認める一方で、委託者及び利用者の保護のために必要な業務運営に関する規定が不十分であること

など、IT時代における多様な社会的要請に適合していないという指摘がありました。
 本法は、このような社会的要請に応えるため、仲介業務法を廃止し、新たな制度的基盤を確立するもので、

1,新規参入を容易にするため、[1][2]に改めること
2,「著作権ニ関スル仲介業務」の考え方を改め、委託者が著作権等を自ら管理している場合に準ずると考えられる形態を規制対象から外し、それ以外の管理形態のみを「著作権等管理事業」として規制対象とすること
3,利用実態の変化に対応して、適用対象範囲を著作権及び著作隣接権の及ぶすべての分野(著作物一般、実演、レコード、放送、有線放送)に拡大すること
4,委託者及び利用者の保護のために最低限必要と考えられる業務運営に関する規定を設けるとともに、著作物等の使用料が円滑かつ適正に設定されるよう、使用料規定の[3]の廃止にあわせて使用料規定に関する[4]を整備すること

などを内容としています。

(22年11月実施)


【解説】
著作権等管理事業法の制定経緯に関する問題です。

著作権等管理事業法


この問題文は、次のページに書かれているままですので、このページを読んで理解すれば、そのまま答えが分かります。

著作権等管理事業法の制定とその背景(文化庁)

管理事業法と仲介業務法の比較



よって解説するまでもないのですが、一応書いておきます。

[1]と[2]には、
「登録制」か「許可制」か、どちらかを選択して入れます。

仲介業務法第2条では、
著作権に関する仲介業務を為さんとする者は文部科学省令の定むる所に依り業務の範囲及業務執行の方法を定め文化庁長官の許可を受くべし
として、「許可制」を採っていました。

それが著作権等管理事業法に代わり、第3条で、
著作権等管理事業を行おうとする者は、文化庁長官の登録を受けなければならない。
と、「登録制」に改められました。


そして[3]と[4]には、
「協議・裁定制度」か「認可制」か、どちらかを選択して入れます。

仲介業務法第3条では、
前条の許可を受けたる者(以下仲介人と称す)は文部科学省令の定むる所に依り著作物使用料規程を定め文化庁長官の認可を受くべし之を変更せんとするとき亦同じ
として、「認可制」になっていました。

それが著作権等管理事業法第23条で、
(2項)指定著作権等管理事業者は、当該利用区分に係る利用者代表から、第13条第1項の規定による届出をした使用料規程に関する協議を求められたときは、これに応じなければならない。
(4項)文化庁長官は、利用者代表が協議を求めたにもかかわらず指定著作権等管理事業者が当該協議に応じず、又は協議が成立しなかった場合であって、当該利用者代表から申立てがあったときは、当該指定著作権等管理事業者に対し、その協議の開始又は再開を命ずることができる。
と「協議」の制度が設けられ、第24条で
前条第4項の規定による命令があった場合において、協議が成立しないときは、その当事者は、当該使用料規程について文化庁長官の裁定を申請することができる。
として「裁定」の制度が設けられています。

2012年8月21日火曜日

JASRACの音楽著作物の信託についての問題

【問題】
著作権の管理、利用、保護に関するア〜ウの記述を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 原著作物たる楽曲の編曲・翻案権が音楽出版社に譲渡されている場合、二次的著作物の利用権をJASRACが管理することはできない。

イ 音楽著作物の編曲や翻案を許諾する権利は、たとえ契約書に編曲・翻案権が音楽出版社に譲渡されることが明記されていても著作権に留保される。

ウ 音楽出版社が、譲渡された音楽著作物の編曲・翻案権を行使する際も、著作者の同一性保持権に配慮しなければならない。

(22年11月実施)


【解説】
著作権等管理事業法に基づく「著作権等管理事業者」(本文ではJASRAC)の、音楽著作物の信託についての問題です。
背景には、音楽の著作物の著作権は音楽出版社に譲渡されることが一般的だ、という事情があります。
その点、言語の著作物(書籍)等とは異なっています。


二次的著作物の利用権(著作権法28条)は、JASRACの信託契約約款に特掲されているので、信託の対象になっていると解されます。

著作権法28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

JASRAC信託契約約款 第3条(著作権の信託)
委託者は、その有するすべての著作権及び将来取得するすべての著作権を、本契約の期間中、信託財産として受託者に移転し、受託者は、委託者のためにその著作権を管理し、その管理によって得た著作物使用料等を受益者に分配する。この場合において、委託者が受託者に移転する著作権には、著作権法第28条に規定する権利を含むものとする。
(★著作権法第27条「翻訳権、翻案権等」が含まれていないことに注意!)

不適切


著作権法61条2項(著作権の譲渡)
著作権を譲渡する契約において、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。

適切


著作者人格権は一身専属ですので、譲渡することはできません。
よって、音楽出版社に一切の著作権が譲渡されたとしても、著作者人格権たる「同一性保持権」は音楽出版社ではなく、著作者にありますので、注意が必要です。

適切


2012年8月20日月曜日

国際私法の「管轄」や「準拠法」についての問題

【問題】
日本法人であるX社では,米国法人であるY社と著作物の利用許諾契約を締結することを検討している。ア〜エの発言を比較して,この契約に関するX社の著作権部の担当者の発言として,最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 「国際裁判管轄と準拠法は,それぞれ言葉は異なるが,一つの事件ではそれぞれが別の国となることはないので実質的には同じ問題と考えていいと思う。」

イ 「準拠法というのは,どの国の法律を適用することによって,国際的な私人間の法律関係を規律するかという問題だ。」

ウ 「国際裁判管轄というのは,簡単にいえば,どの国が裁判を行うべきかという問題だよ。」

エ 「この契約に関する準拠法をどこにするかは当事者の合意で決めることができるので,日本法を前提に問題を処理したいのであれば,契約書にその旨を明記しておくべきだ。」

(23年7月実施)


【解説】
国際私法の、管轄や準拠法についての問題です。
知識があるかないかが分かれ目でしょう。

日本における国際私法は、「法の適用に関する通則法」です。


用語の意味を、『法律学小辞典』(第4版)ではどう書かれているでしょう
か。
まず「国際裁判管轄」とは、

国際法上認められる国家の裁判権の範囲内において、当事者の公平、裁判の適正、迅速という手続法的な理念から裁判を行う範囲をさらに自己抑制したもの


次に「準拠法」とは、

国際私法によって、渉外的法律関係を規律すべきものとして決定された法


分かりにくい文章ですね……




国際裁判管轄と準拠法の関係については、次のページに詳しく書かれています。
国際裁判管轄と準拠法(レックスウェル法律特許事務所)

このページの最後に書かれているとおり、裁判管轄と準拠法は、別の国になることはあります。

不適切


問題文のとおりです。

適切


問題文のとおりです。

適切


問題文のとおりです。

適切


2012年8月19日日曜日

知的財産権侵害行為に対する差止請求についての問題

【問題】
知的財産権に基づく差止請求について甲と乙とが会話をしている。ア〜エの会話を比較して,最も不適切と考えられるものはどれか。


甲 「知的財産に関する差止請求をするためには現実に侵害行為が行われていることが必要でしょうか。」
乙 「特許権については侵害行為が現実に行われていない場合であっても,侵害のおそれがあれば差止請求が認められますが,著作権については侵害のおそれのみでは差止請求は認められません。」


甲 「差止請求とともに所定の廃棄・除却等の請求を行う場合は,廃棄・除却の請求分についても訴額の算定の必要がありますか。」
乙 「実務においては,廃棄・除却等の請求は差止請求とは別個独立に請求することができないこともあり,訴額を別途算定する必要はないとされています。」


甲 「知的財産権の差止請求権に関しては仮処分の申立をすることができますよね。」
乙 「できます。仮処分は,判決まで侵害行為が継続するおそれがある場合に,民事保全法に基づき裁判所が命ずる暫定的措置です。」


甲 「差止の判決が確定したのに,被告が侵害行為を停止しない場合は,どのような措置をとることができますか。」
乙 「執行裁判所に対し,確定判決を債務名義として執行文の付与を申し立て,それに基づいて間接強制を申し立てることができます。」

(23年7月実施)


【解説】
知的財産権の侵害行為に対して行える、差止請求についての問題です。
基本的に、条文どおりの、シンプルな問題と言えます。


著作権法112条(差止請求権)
1項
著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

不適切


著作権法112条(差止請求権)
2項
著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によつて作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。

適切


問題文のとおりです。

適切


問題文のとおりです。

適切

2012年8月18日土曜日

【コラム】複製権を時効取得できるのなら……

ちょっと試験問題からそれて、コラム的に一つ書いてみます。

最近は、著作権に関する意識が高まり、人の書いたものを勝手に使ってはいけない、ということは、常識として周知されてきたように思います。
昔はそうではなかったわけで、何十年も前に書かれた本を見ると、他の人が書いた本にあった表現をそのまま自分の文章として使っているようなものも、現在以上に数多く見受けられます。それは、わざとコピーして使ったというよりも、現代なら著作権侵害として問題になるような使い方だとは知らずに、「参考文献」として使ってしまった、という場合が多いのではないでしょうか。

さて、そんな本を書いた人(Aさんとします)が、20年後、書店に行ってみると、自分の書いた本と同じことが書かれている本を見つけたとします。

人は、自分が他者の著作物を利用する際は「これくらいはいいだろう」と寛容になっても、他者が自己の著作物を利用する際には「そこまでやったらダメだよ」と厳しくなりがちです。

見つけた本の著者(Bさんとします)に対して、「おまえの書いた本は、俺の書いた本のパクリだ!」つまり複製権(もしくは翻案権)侵害だ、と主張したら、どうでしょう。

実は、Aさんの書いた本も、別の人が書いた本(C本とします)のパクリだったのです。Aさんにはその自覚がなかっただけです。Aさんが元にしたC本は、30年も前に出版された本で、そんな古い本に著作権が関係あるとは、Aさんは全く知らなかったのです。完全に自分の著作物だと考えています。
これまでも、ネットで自分の本の内容を勝手に掲載していた相手に対しては、そのつど警告を発し、相手に削除させる、ということが何度かありました。
その間、Cさんが名乗り出てくることは、ありませんでした。

Bさんは、実際はAさんの本をパクった(依拠して複製or翻案した)のでしたが、たまたま、C本の存在を知り、
「私はAさんの本に依拠したのではない。C本に依拠して書いたのだ。Aさんの本には、創作性がなく、著作権はAさんにはない」
と主張しました。

このBさんの主張が認められれば、著作権はC本の著者(Cさんとします)にあります。
Cさんが死後50年たっていれば、C本はパブリック・ドメインですから、Bさんの本は著作権侵害とはなりません。

しかし、Aさんは納得できません。
「俺の著作物なのに、どうして……」という思いは、ますます強くなります。


こんな場合、Aさんが「複製権を時効により取得していた」と考えたら、どうでしょうか。
民法にある「自己のためにする意思をもって平穏かつ公然に著作物の全部又は一部につき継続して複製権を行使する者」という要件は、Aさんは満たしていそうです。
また、判例の「著作物の全部又は一部につきこれを複製する権利を専有する状態、すなわち外形的に著作権者と同様に複製権を独占的、排他的に行使する状態が継続されていること」という要件も、満たしていると言えそうです。
それによってAさんに複製権の時効取得が認められ、BさんはAさんの著作権を侵害していた、という結論が導き出された、ということも、ありそうに思います。

いかがでしょうか?


参考記事「知的財産権と時効の関係を問う問題

知的財産権と時効の関係を問う問題

【問題】
時効に関するア〜エの記述を比較して,最高裁判例に照らし,最も適切と考えられるものはどれか。

ア 複製権を時効により取得できる場合がある。
イ 特許権を時効により取得できる場合がある。
ウ 商標権を時効により失う場合がある。
エ 意匠権を時効により失う場合がある。

(23年7月実施)


【解説】
知的財産権と時効の関係を問う問題です。

「時効」とは、『法律学小辞典』によれば、

一定の事実状態が法定期間継続した場合に、その事実状態が真実の権利関係に合致するかどうかを問わないで、権利の取得や消滅という法律効果を認める制度をいう。権利取得の効果を認めるのが取得時効、権利消滅の効果を認めるのが消滅時効である。

ということです。
根拠として、
・長年継続した事実状態を尊重して、法的安定を図ること
・長期間経過によって権利関係の立証が困難になること
・権利の上に眠る者は保護する必要がないこと
等が言われています。

しかし、知的財産権には保護期間の定めがあり、その期間経過後はパブリックドメインとなって誰でも利用できるようになるのだから、時効の適用は必要ない、とも考えられそうです。

では、全く適用されることはないのか、というのが、本問で問われている課題です。



著作権も財産権ですから、民法163条を適用できれば、時効取得できるように考えられます。

民法163条(所有権以外の財産権の取得時効)
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する。

そこで参考になるのは、「ポパイ・ネクタイ事件」の最高裁判決です。
(最判平成9年7月17日 民集51巻6号2714頁)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319122323439805.pdf

この判決は、次のように述べています。

著作権法21条に規定する複製権は、民法163条にいう「所有権以外ノ財産権」に含まれるから、自己のためにする意思をもって平穏かつ公然に著作物の全部又は一部につき継続して複製権を行使する者は、複製権を時効により取得すると解することができる……

ただし、著作権の特徴から、次のような制限を加えています。

……が、複製権が著作物の複製についての排他的支配を内容とする権利であることに照らせば、時効取得の要件としての複製権の継続的な行使があるというためには、著作物の全部又は一部につきこれを複製する権利を専有する状態、すなわち外形的に著作権者と同様に複製権を独占的、排他的に行使する状態が継続されていることを要し、そのことについては取得時効の成立を主張する者が立証責任を負うものと解するのが相当である。

ちなみに、現行著作権法の立法時の試案では、時効制度を著作権に適用することを否定する規定があったそうですが、結局は条文には盛り込まれずに、解釈にゆだねられた、という経緯があるようです。
著作権は、知的財産権の中でも特に保護期間が長いので、他の権利とは考え方を異にする必要があるともいえるでしょう。

適切


特許権は、登録が権利発生要件となっていますから、公示のない時効取得は、権利の安定性を欠き、認められないと考えられます。
また、取得時効は20年、善意無過失なら10年ですが、特許は公示されるため、無権利者による実施は、過失の推定を受けます(特許法第103条)。
そうすると、特許権の存続期間は出願の日から20年ですから、時効取得する時には特許権は消滅していることが多いと考えられ、実行取得の実効性はほぼないと言えるでしょう。
ただし、特許権も消滅時効の対象にはなります。

不適切


商標権は、不正競争防止法と異なり、周知・著名ではない標章であっても、登録をしてあれば、権利を行使することができます。
そのため、新たな商品(ブランド)を発売したい時や、サービスを始めたい時等、実際に使用する前に予防的に商標登録をしておくことが可能です。
その結果、結局は使わなかった、という登録商標も、ありえます。
不使用商標は、設定登録から10年たって、更新しなければ(商標権は更新することができ、繰り返せば永続的な権利保護が可能)、消滅します。
また、期間満了の前でも、3年間不使用ならば、第三者が「不使用取消審判」を請求することができます。

第50条 (商標登録の取消しの審判)
継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。

商標権に消滅時効を認めてしまうと、この制度の意味がなくなりますので、時効によって失う場合はない、と考えられます。

不適切


意匠権の保護期間は、設定登録から20年です。
その期間内に時効によって消滅してしまうとなると、保護期間が定められている知的財産権の趣旨に合わなくなりますから、消滅時効にはかからない、と考えられています。

不適切


2012年7月6日金曜日

不正アクセスと著作権法との関係の問題

【問題】
X社は昭和の人気アニメーションを有料にてインターネット配信している。このサイトにアクセスし,アニメーションを視聴するためにはID及びパスワードが必要である。ある時,X社はこのIDとパスワードが第三者によりインターネット上で販売されているのを発見した。この販売者甲の責任に関するア〜エの記述を比較して,最も不適切と考えられるものはどれか。

ア ID及びパスワードが,インターネットを通じて他のコンピュータを利用するためのものであって,X社又は当該ID及びパスワードを付与されているユーザーに無断で,かつ,当該ID及びパスワード等がどのコンピュータを利用するためのものかを明らかにして提供する販売者甲の行為は,不正アクセス行為の禁止等に関する法律により禁止されている行為に該当する。

イ X社がユーザーにID及びパスワードを提供するにあたって,X社とユーザーとの間にID及びパスワードを第三者に提供することを禁止する契約が締結されている場合は,ID及びパスワードをインターネット上で販売しているユーザーである甲は債務不履行責任を負う。

ウ インターネット上でID及びパスワードを販売する行為については,仮に著作権法や不正競争防止法などの個別の権利を定めた法律について違反していなくても,法的保護に値する利益が違法に侵害された場合であれば販売者甲の行為について不法行為が成立するものと考えられる。

エ ID及びパスワードをインターネット上で販売することにより,デジタルコンテンツの視聴制限,いわゆるアクセスコントロールを回避することは,著作権法上の技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変を行うことにあたるので,販売者甲の行為は複製権等の侵害の幇助行為に該当する。

(23年7月実施)


【解説】
不正アクセスと著作権法との関係を問われる問題です。
ここでは、いわゆる「不正アクセス禁止法」(不正アクセス行為の禁止等に関する法律)と、著作権法、そして不正競争防止法の関係を知っておく必要があります。


不正アクセス禁止法については、警察庁のページにまとめられているので、読んでみてください。

「不正アクセス」で問題になるのは、ネットワークに接続されているコンピュータへのアクセスです。
インターネットに接続されているコンピュータはもちろん、外部から独立している企業内LANも含みます。



上記警察庁の資料には、次のように書かれています。

4 不正アクセス行為を助長する行為の禁止、処罰(第4条、第9条関係)

他人の識別符号を第三者に提供する行為、例えば、「○○システムを利用するためのIDは△△、パスワードは□□である。」と他人に口頭や電子メール、文書などで教えたり、電子掲示板などに掲示したりする行為は、その識別符号を利用すれば誰でも容易に不正アクセス行為を行うことが可能となる点で不正アクセス行為を助長するものですから、これを放置することは、不正アクセス行為を禁止することの実効性を著しく損なうこととなります。

そこで、他人の識別符号を、その識別符号がどの特定電子計算機の特定利用に係るものであるか(すなわち、どのコンピュータ(のサービス)に対する識別符号であるのかということ。)を明らかにして、又はこれを知っている者の求めに応じて、アクセス管理者や当該識別符号を付与されている利用権者に無断で第三者に提供する行為を禁止、処罰することとしています。

この不正アクセス行為助長罪が成立するためには、

  ●識別符号が、それが付与された者に無断で提供されたこと。
  ●どの特定電子計算機の特定利用に係るものであるかを明らかにして、又はこれを知っている者の求めに応じて提供されたこと。

が必要です。識別符号の提供手段には限定がなく、電子掲示板に掲示する、電子メールで送付するといったオンラインで行うもののほか、口頭で伝達したり紙に印刷して手渡したりフロッピーディスクに記録して渡したりといったオフラインでの提供であっても犯罪は成立します。また、提供行為によって金銭的な利益を得たかどうかは犯罪の成立には無関係ですので、他人のID・パスワードを販売しても、無料で提供しても罪に問われます。

不正アクセス行為を助長する行為の禁止に違反した者は、30万円以下の罰金に処せられることとなっています(第9条)。

なお、アクセス管理者が行う場合及びアクセス管理者又は当該識別符号を所有している利用権者の承諾を得て行う場合については、これらの場合には他人の識別符号を入力しても不正アクセス行為には当たらないこととしていることから、不正アクセス行為を助長するおそれが認められないので、禁止の対象から除外しています。

※不正アクセス禁止法は改正され、ここで言う「第4条」は「第5条」になり、「第9条」は「第13条」になっています。


では条文を見てみましょう。

第5条(不正アクセス行為を助長する行為の禁止)
何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を、当該アクセス制御機能に係るアクセス管理者及び当該識別符号に係る利用権者以外の者に提供してはならない。

第13条
第5条の規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処する。

5条には、専門用語が多数出てきますので、他の条を参照して、定義を調べておかないといけません。
定義条項は、第2条です。

「アクセス制御機能」とは、パスワード等による認証を通らないと利用できないようにしている機能等です。
「識別符号」とは、パスワードや指紋や虹彩、署名等です。
「アクセス管理者」とは、利用できる人・範囲を決定できる権限を有している者です。

これらを見ていけば、本問における甲の提供行為は、第5条で禁止されている行為に該当することが分かります。

適切


明らかに契約違反ですから、債務不履行と言えます。
第三者への提供を禁止することが、公序良俗に反して無効、ということもないでしょう。
cf. 民法415条(債務不履行による損害賠償)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

適切


民法709条(不法行為による損害賠償)では、
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
と定めています。

適切


著作権法30条1項2号は、「技術的保護手段の回避」によって複製することは、私的複製に当たらず、複製権を侵害すると定めています。

技術的保護手段の回避技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第120条の2第1号及び第2号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

アクセスコントロールの回避は、著作権法上の「技術的保護手段の回避」には当たりません(不正競争防止法の「技術的制限手段の効果を妨げる行為」には該当します)。
著作権法上の「技術的保護手段」は、コピーコントロールを指します。
従って、本文における甲の行為は、「複製権の侵害」には該当しません。
★著作権法における「技術的保護手段」は、平成24年6月20日成立の改正によって、範囲が拡大しますので、注意が必要です。ただし、それでも本問のケースには該当しないと思われます。

不適切



2012年6月23日土曜日

著作物裁定制度を利用する際の準備作業の問題

【問題】
映像制作会社X社では,劇場公開用映画を製作することになり,X社の企画部の部員甲がその企画立案を行っていたところ,偶然とある小説を発見し,これを原作として映像製作を進行したいと考えた。しかしながら,甲が原作使用権取得のために著作権者を調査したところ,作家はすでに亡くなっており,その著作権継承者の連絡先も不明であった。またこの書籍を発行した出版社も10年ほど前に倒産しており,現在では手掛かりすら掴めない状況であることが判明した。クランクイン予定の日程が迫る中,企画をあきらめきれない甲は映像化実現の可能性について,X社の著作権部の担当者乙に相談したところ,乙は「著作権権利者不明の場合の裁定制度」を利用することを提案した。

裁定制度を利用することになった場合,乙が社内各担当者に準備を指示しておかなければならない内容として,ア〜エの記述を比較して最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 裁定が受けられるとしても,申請からは相当の時間を要するので,クランクインの時期を含めた,全体の製作のスケジュールを修正するよう指示する。

イ 一般的な原作使用料の慣行に照らし担保金(あるいは補償金)を製作予算に組み込んでおくよう指示する。

ウ 裁定申請を行ったのち,文化庁長官の裁定が行われる前であっても「申請中利用」の制度を利用して製作作業を進行することはできるので,この制度を利用するかどうかの方針を決定しておくよう指示する。

エ 裁定申請を行った場合,その許諾相談窓口は文化庁に一本化しなければならないので,権利者の調査を即刻に中止し,万一連絡がとれた場合も交渉は一切行わないよう関係部署に徹底するよう指示する。

(23年7月実施)


【解説】
著作物裁定制度を利用する際の準備作業の問題です。
裁定制度については、前に詳しく書きましたので、ここでは省略します。
詳細は、次の『裁定の手引き』をお読みください。
http://www.bunka.go.jp/1tyosaku/c-l/pdf/tebiki.pdf


文化庁では、手続きに必要な標準処理期間を3か月としています(ただし、あくまでも目安であって、最近の実績では1か月程度で処理している例も多いそうです)。

適切


補償金の額は、申請のあった著作物等を利用する場合の一般的な利用料金等を参考に、文化庁長官が決定します。著作権法67条では、「通常の使用料の額に相当する」額とされています。
加えて、手数料(1申請あたり13,000円)も必要です。

適切


著作権法の平成21年改正により、「申請中利用制度」ができました。これは、
「文化庁に裁定申請を行い、文化庁長官の定める担保金を供託すれば、著作者や実演家等が著作物等の利用を廃絶しようとしていることが明らかな場合を除き、裁定の決定前であっても著作物等の利用が開始でき」る、
という制度です。
この制度を利用することによって、裁定の決定を待って利用を開始する場合と比べて、早期に著作物等の利用を開始することができるようになりました。

適切


新設された「申請中利用制度」では、裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間に(つまり裁定を申請して結論が出るまでの間に)、著作権者と連絡をすることができるに至った場合、
「当該担保金の額が……著作権者が弁済を受けることができる額を超えることとなつたときは……その全部又は一部を取り戻すことができる」(著作権法67条の2第7項
とされています。
ということは、権利者との直接交渉によって、支払う額を担保金以下に抑えることができるかもしれません。権利者の調査を中止し、一切の交渉を行わないとなると、その可能性を排除してしまうことになりますから、払わなくてもよいお金を払ってしまう結果になりかねません。それはもったいないことですね。

不適切

2012年6月20日水曜日

著作物の裁定制度の問題

【問題】
映像制作会社X社では,劇場公開用映画を製作することになり,X社の企画部の部員甲がその企画立案を行っていたところ,偶然とある小説を発見し,これを原作として映像製作を進行したいと考えた。しかしながら,甲が原作使用権取得のために著作権者を調査したところ,作家はすでに亡くなっており,その著作権継承者の連絡先も不明であった。またこの書籍を発行した出版社も10年ほど前に倒産しており,現在では手掛かりすら掴めない状況であることが判明した。クランクイン予定の日程が迫る中,企画をあきらめきれない甲は映像化実現の可能性について,X社の著作権部の担当者乙に相談したところ,乙は「著作権権利者不明の場合の裁定制度」を利用することを提案した。

ア〜エの項目を比較して,裁定制度の利用申請を行うにあたり,確認しておかなければならない事項として,最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 裁定申請の対象となるものは,「すでに公表が行われた著作物」であるので,この小説の発行形態が「公表」にあたるものであるかどうかの確認

イ 裁定申請は,「相当な努力を払っても権利者と連絡することができない場合」であることが前提条件なので,X社の企画部の部員甲の連絡先の調査が「相当の努力」にあたるものであるかどうかの確認

ウ 海外での利用を行う場合は,担保金(あるいは補償金)が対象国ごとに設定されるので,劇場公開とそれに続くビデオグラム化の海外展開予定状況の確認

エ 著作者人格権は裁定の対象に含まれないので,原作者の同一性保持権を侵害しない使い方であるかどうかの確認

(23年7月実施)


【解説】
著作物の裁定制度の問題です。
通常、それほど利用は多くない制度だと思うのですが、知的財産管理技能検定においては、頻出の、重要事項です!

著作権法67条から70条は、
「第八節 裁定による著作物の利用」
を定めています。

「裁定制度」とは、何でしょうか?
概要が、文化庁で次のように説明されています。

他人の著作物や実演(歌手の歌唱や演奏、俳優の演技など)、レコード(CDなど)、放送番組または有線放送番組を利用(出版、DVD販売、インターネット配信など)するときには、「著作権者」や「著作隣接権者」の了解を得ることが必要になります。
しかし、権利者の了解を得て利用しようとしても、「著作権者が誰だか分からない」、「著作権者がどこにいるのか分からない」、「亡くなった著作権者の相続人が誰でどこにいるのか分からない」、「過去に放送された番組に出演した俳優がどこにいるのか分からない」等の理由で了解を得ることができない場合があります。
このような場合に、権利者の了解を得る代わりに文化庁長官の裁定を受け、著作物等の通常の使用料額に相当する補償金を供託することにより適法にその著作物等を利用することができるのが本制度です(法第67条)。

※出典: 文化庁の説明ページ
「著作権者不明等の場合の裁定制度」
http://www.bunka.go.jp/1tyosaku/c-l/index.html


ここは、平成21年の著作権法改正において変更があった条項ですので、要注意です。
具体的には、以下の3点です。
  • 著作隣接権者が不明の場合でも、裁定制度を利用できるようになった
  • 裁定の申請から処分を受けるまで(結果が出るまで)の間に、担保金の供託によって当該著作物を利用できるようになった
  • 67条の「相当な努力」について、次のように具体的に定められた
権利者の氏名や住所等の権利者と連絡するために必要な情報(以下「権利者情報」という。)を得るために以下のすべての措置をとり,かつ,それによって得られた権利者情報等に基づき権利者と連絡するための措置をとったにもかかわらず,連絡ができなかった場合
  1. 広く権利者情報を掲載している名簿,名鑑,検索サイト等を閲覧すること
  2. 広く権利者情報を保有している著作権等管理事業者,出版社,学会等に照会すること
  3. [1]日刊新聞紙への掲載又は[2]社団法人著作権情報センターのウェブサイトへ30日以上の期間継続して掲載することにより,公衆に対して権利者情報の提供を求めること


改正の概要は、次のページにまとめられています。
「平成21年通常国会 著作権法改正等について」
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/21_houkaisei.html


これらを踏まえたうえで、本問の解説をしていきます。
まず著作権法67条(著作権者不明等の場合における著作物の利用)1項の条文を見ておきましょう。

公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払つてもその著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合は、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により利用することができる。



公表またはそれに準ずることが要件の一つになっていますので、「公表」されているかどうかの確認は大切です。

適切


「相当な努力」を払ったことが要件になっていますが、その「相当な努力」とはどういうものか、上記のとおりに定められましたので、これに当てはまるかどうかの確認は、大切です。

適切


海外における著作物の利用については、原則として我が国の著作権法の効力が及ばないので、裁定制度の適用を受けることはできません。

不適切


裁定の対象になるのは、著作(財産)権と著作隣接権です。著作者人格権は含まれませんので、注意してください。もし人格権にまで裁定制度の適用を認めてしまうと、人格権の趣旨が損なわれてしまうでしょうね。

適切

2012年6月19日火曜日

著作物の保護期間(戦時加算)についての問題

【問題】
X社では,チェコの有名小説家甲の書籍にあるイラストのキャラクターのアニメーションを日本で制作することを企画している。そのイラストは小説家自身が描いたものであり,小説家甲はすでに1942年に死亡している。その後,2004年にチェコが欧州連合に加盟した結果,同国の著作権の存続期間が延長され,現在小説家甲の著作物は保護の対象となっている。この著作物の利用に関するア〜ウの記述を比較して,最も適切と考えられるものはどれか。

ア この著作物の権利者であった小説家甲の権利は,チェコの欧州連合への加盟により現在保護の対象となっており,権利元から許諾を得ないで制作することはできない。

イ この著作物の権利は日本ではパブリック・ドメインとなっており,商標権等の他の権利が存在していない場合は,制作するアニメーションに関して何ら許諾を得る必要はなく,また制作したアニメーションは日本国内では自由に利用できると考えられる。

ウ この著作物の権利者であった小説家甲が国籍を有するチェコは日本と平和条約の締結国であるため,戦時加算を考慮せねばならない。よって,わが国でパブリック・ドメインになっているか否かは不明であり,X社のアニメーション制作は権利元から許諾を得る必要がある。

(23年7月実施)


【解説】
著作物の保護期間(戦時加算)についての問題です。


我が国の著作権法においては、イラストの著作権は著作者の死後50年しか保護されないのであるから、1942年に死去したイラストレーターの作品の保護期間は1992年までであり、現在、当該イラストは日本国内においてはパブリックドメインとなっている。
従って、許諾を得ずにアニメを制作することができる。
(ただし、イにあるように、商標権等の他の権利が問題になる場合はある)

不適切


アの反対です。問題文のとおりです。

適切


戦時加算は、最長で4413日(約12年。レバノン)であり、もし適用されれば、考慮しなければならないかもしれない。しかし、チェコは連合国ではないので、適用されない。よって、本問において戦時加算を考慮する必要はない。
[参考判例]
東京地判平成10・3・20 チェコ人ミュシャ絵画の著作物の戦時期間加算事件
http://www.translan.com/jucc/precedent-1998-03-20.html

不適切


※〈参考〉戦時加算の詳細な日数

4413日 レバノン
4180日 ギリシャ
3929日 南アフリカ
3910日 ベルギー
3846日 ノルウェー
3844日 オランダ
3816日 ブラジル
3794日 イギリス
        オーストラリア
        カナダ
        ニュージーランド
        パキスタン
        フランス
        セイロン(現スリランカ)
        アメリカ合衆国

2012年6月13日水曜日

私的複製の例外規定についての問題(違法ダウンロード)

【問題】
ア〜ウの記述を比較して,インターネットを利用した行為についての説明として,最も適切と考えられるものはどれか。

ア インターネット上へ著作権等を侵害してアップロードされた音楽ファイルを,ユーザーがその事実を知りながらダウンロードする行為は,私的使用を目的とする場合であっても,著作権又は著作隣接権の侵害となる。
イ インターネット上へ著作権等を侵害してアップロードされた書籍ファイルを,ユーザーがその事実を知りながらダウンロードする行為は,私的使用を目的とする場合であっても,著作権の侵害となる。

ウ 外国のサーバーに著作権等を侵害してアップロードされた動画ファイルを,ユーザーがその事実を知りながらダウンロードする行為は,私的使用を目的とするものである場合は,著作権又は著作隣接権の侵害とならない。

(23年7月実施)


【解説】
私的複製の例外規定についての問題です。
これは、平成22年1月施行の、著作権法改正で設けられた規定です。
このような、改正された部分は、極めて重要です。

著作権法第五款「著作権の制限」にある、30条(私的使用のための複製)では、次のように定められています。

著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

一 (条文略。レンタルビデオ店の店頭などにある自動ダビング機を使ってコピーする場合)
二 (条文略。コピーガードを外したり、外された海賊版を、そうだと知ってコピーする場合)
三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

この「三号」が、新たな規定です。


30条1項柱書は、「次に掲げる場合を除き……複製することができる」と定められています。
サーバーから自分のコンピュータ等へダウンロードする行為は、「複製」です。
私的複製は、著作権が制限され、自由に行ってよいことになっていますが、では私的複製であっても違法アップロードされたものという事実を知りながらダウンロード(複製)する場合はどうなのか。
従来は、アップロードは違法でしたが、ダウンロードは違法ではありませんでした。
それが、新たに規定された「三号」によって、ダウンロードも違法(=権利侵害行為)となったのです。
(知らないでダウンロードした場合は、侵害行為にはなりません)

適切


書籍ファイルのダウンロードは、「録音又は録画」に当たりません。
よって、「三号」に該当せず、侵害行為にはなりません。

不適切


アと同じ理由です。ダウンロード自体が違法となりましたので、たとえ外国のサーバーからであっても、侵害行為となります。

不適切


2012年6月7日木曜日

著作権の登録制度の問題

【問題】
著作権の登録について,著作権部の部長と部員が会話をしている。ア〜エの会話を比較して,最も不適切と考えられるものはどれか。


部長 「著作権の登録制度の趣旨を述べてみてください。」
部員 「著作権の登録制度は,著作権法上必要とされる一定の推定効果を付与したり,取引安全のための権利変動の状況を公示したりするために設けられた制度です。」


部長 「著作権の登録制度を簡単に説明してください。」
部員 「登録の種類には,実名登録,第一発行年月日登録,創作年月日登録,著作権譲渡の登録があります。登録は,文化庁の登録原簿への登録により行いますが,文化庁長官から指定登録機関として指定された民間団体が登録事務を行っている分野もあります。」


部長 「登録を申請できる人はどんな人ですか。」
部員 「自然人,法人ができます。そして著作権法第2条第6項により,不動産登記などと異なって,著作権法では法人格なき社団も法人に含まれます。従って,業務執行組合員の定めのある製作委員会の場合は,すべて製作委員会名義で登録することができます。」


部長 「著作権の登録制度の問題点を挙げてください。」
部員 「登録を欠いても不都合な事態がほとんど生じないためあまり活用されていません。また諸外国をみても,対抗要件としての登録制度を有する例はほとんどなく,ベルヌ条約の無方式主義に反するおそれがあるという意見もあります。」

(23年7月実施)


【解説】
著作権の登録制度の問題です。


そのとおりです。

適切


プログラムの著作物については、指定登録期間に登録事務を行わせることができます。
(プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律 5条)
現在は、一般財団法人ソフトウェア情報センターのみが指定されています。

適切


映画の著作物の著作権は、通常、映画製作者である映画会社に帰属します。政策委員会に帰属するのではありません。
(実名登録は、団体はできません)

不適切


そのとおりです。

適切

2012年6月6日水曜日

JASRAC信託音楽を編曲利用する際の権利処理の問題

【問題】
レコード会社X社の新人アイドルである甲は,今回,昨年大ヒットしたアーティスト乙の代表曲Aをカバーし,CDをリリースすることになった。レコーディングにあたっては,甲のために編曲(アレンジ)をした上で,実演を収録した。ア〜エの記述を比較して,レコード会社X社及び新人アイドル甲が注意すべき点として,最も適切と考えられるものはどれか。なお,代表曲Aは音楽出版社Y社を通じて,JASRACに信託・譲渡された管理楽曲とする。

ア 代表曲Aについては,JASRACに対し通常の楽曲使用申請をするだけで使用できる。

イ 新人アイドル甲のために編曲(アレンジ)を加えるため,著作権法第27条の編曲権の処理が必要となり,代表曲Aの著作権者である音楽出版社Y社の許諾を得る必要がある。

ウ 代表曲Aに関し,新人アイドル甲のために編曲(アレンジ)を加えるため,アーティスト乙の実演を収録した原盤に係る権利を有するレコード製作者の許諾を得る必要がある。

エ 代表曲Aはアーティスト乙の実演を収録した原盤により大ヒットしたため,編曲(アレンジ)に際しては,実演家であるアーティスト乙の許諾を得る必要がある。

(23年7月実施)


【解説】
JASRACに信託された音楽を編曲して利用する際の権利処理の問題です。
(この問題の解説は、少しあいまいな部分があります。より正確な解説をご存じの方があれば、ご教示お願いいたします)


編曲は翻案に当たります。Aの権利がJASRACに譲渡されたといっても、翻案権はY社に留保されたものと推定される(著作権法61条2項)から、通常の楽曲使用申請では足りません。

不適切


同上

適切


レコード製作者には編曲権は認められていません。

不適切


レコード製作者には編曲権は認められていません。

不適切

※アとイについての別の理由として考えられるのは、
「編曲をすると、同一性保持権の問題が発生しますが、人格権は著作者だけが持っている権利(一身専属性)であるため、JASRACも関与できません」
とも言えそうです。

商品化に際し、ライセンシーの立場での権利処理の問題

【問題】
X社は日本国内においてビデオ作品を中心に製作販売を行う映像製作会社である。このたび人気ロボット漫画作品を原作として実写版のビデオ作品を製作して販売したところ,大ヒットとなり,玩具会社Y社より「劇中に登場するロボットの音が出る玩具を商品化したい」旨の申し入れを受けた。
ア〜エの記述を比較して,商品を実際に企画,製造するためにY社がライセンシーとして権利処理する内容として,最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 契約に特段の定めがない場合,ロボットの各部分の配色は自由に変更できるが,その変更後のロボットが第三者の知的財産権を侵害していないかどうかは確認する必要がある。

イ パッケージに作品出演の俳優の肖像を利用する場合,当該俳優のパブリシティ権の権利処理をしておく必要がある。

ウ この玩具を海外でも販売することが予定されている場合,日本での契約とは別に許諾申請を行わなければならない場合があるので,その予定されている国での商品化権許諾状況や契約条件などを確認しておく必要がある。

エ 商品の広告媒体としてインターネットを利用しようとする場合,その許諾がX社との許諾契約の中に含まれるかどうかを確認する必要がある。

(23年7月実施)


【解説】
今度は、商品化に際し、ライセンシーの立場での権利処理の問題です。


ロボットの配色変更は、原作者・デザイナーの同一性保持権を侵害するおそれがあります。

不適切


そのとおりです。

適切


そのとおりです。

適切


そのとおりです。

適切

2012年6月1日金曜日

著作者人格権侵害に対する回復措置ならびに著作権侵害訴訟の訴訟物の問題

【問題】
空欄[1]〜[2]に入る語句の組合せとして,最も適切と考えられるものはどれか。

著作者人格権が侵害された場合には,著作者の名誉もしくは声望を回復するために,[1]を請求することができる旨が明文に規定されており,この請求は,損害の賠償に代えて又は損害の賠償とともにすることができる。
なお,著作財産権と著作者人格権とはそれぞれ保護法益を異にするものであるため,同一の行為によって著作財産権と著作者人格権が侵害された場合であっても,それぞれについて精神的損害が両立し得るものであるため,両者の賠償を訴訟上併せて請求するときは,[2]を異にする二個の請求が併合されているものと解される。

ア [1]=謝罪広告   [2]=訴訟物
イ [1]=謝罪広告   [2]=請求し得る法的地位
ウ [1]=適当な措置 [2]=請求し得る法的地位
エ [1]=適当な措置 [2]=訴訟物

(23年7月実施)


【解説】
著作者人格権侵害に対する回復措置ならびに著作権侵害訴訟の訴訟物の問題です。

著作権法115条(名誉回復等の措置)を見てみましょう。

著作者又は実演家は、故意又は過失によりその著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者に対し、損害の賠償に代えて、又は損害の賠償とともに、著作者又は実演家であることを確保し、又は訂正その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができる

これを読めば、[1]には「適当な措置」が入ることが分かります。
次に[2]ですが、まず用語の意味を確認しておきます。
有斐閣『法律学小辞典』より)

訴訟物=原告が被告に対して主張する権利・法律関係。
(訴訟上の)請求=原告の被告に対する一定の権利主張とそれに基づく裁判所に対する特定の判決の要求とをいい、狭義には被告に対する権利主張のみをいう。この主張される権利関係を訴訟物と呼ぶ。

実は本問後段は、最高裁昭和61年5月30日第二小法廷判決[モンタージュ写真事件第2次上告審]によって明らかにされた論点です。
(『判例百選』204ページに掲載されています)

判旨は、
「複製権を内容とする著作財産権と公表権、氏名表示権及び同一性保持権を内容とする著作者人格権とは、それぞれ保護法益を異にし、また、著作財産権には譲渡性及び相続性が認められ、保護期間が定められているが、著作者人格権には譲渡性及び相続性がなく、保護期間の定めがないなど、両者は、法的保護の態様を異にしている。したがつて、当該著作物に対する同一の行為により著作財産権と著作者人格権とが侵害された場合であつても、著作財産権侵害による精神的損害と著作者人格権侵害による精神的損害とは両立しうるものであつて、両者の賠償を訴訟上併せて請求するときは、訴訟物を異にする二個の請求が併合されているものであるから、被侵害利益の相違に従い著作財産権侵害に基づく慰謝料額と著作者人格権侵害に基づく慰謝料額とをそれぞれ特定して請求すべきである」

ということで、[2]には「訴訟物」が入ることが分かります。

2012年5月15日火曜日

商品化に際し、ライセンサーの立場での権利処理の問題

【問題】
X社は日本国内においてビデオ作品を中心に製作販売を行う映像製作会社である。このたび人気ロボット漫画作品を原作として実写版のビデオ作品を製作して販売したところ,大ヒットとなり,玩具会社Y社より「劇中に登場するロボットの音が出る玩具を商品化したい」旨の申し入れを受けた。
ア〜エの記述を比較して,X社がY社に商品化許諾業務を行うにあたり,事前に準備しておかなければならない内容として,最も適切と考えられるものはどれか。

ア 著作物のタイトルは商標使用にはあたらないので,商品化を予定しているアイテムの類別においてでも作品タイトルの商標調査及び登録の作業をする必要はない。

イ この玩具に使用される「音」が,音楽の著作物に該当する場合,その権利構成は当該ビデオ作品とは異なるので,必ずしも商品化権と一括で許諾する必要はない。

ウ 著作権法第16条により「映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」は,すなわちX社であるから,監督やデザイナーなど,当該作品を製作した外部スタッフとの間で特段の契約を締結しなくても,当該商品化許諾業務には不都合はない。

エ 原作者との間には,ビデオ作品を製作するときに原作使用契約を締結しているので,商品化許諾を行うときに,改めて二次利用に関わる契約を締結する必要はない。

(23年7月実施)


【解説】
商品化に際し、ライセンサーの立場での権利処理の問題です。


確かに著作物(ビデオ)のタイトルとしてのみ使用しているだけならば問題にはならないでしょうが、玩具にする場合は、その類別において他社がすでに登録しているかもしれませんので、調査は必要です。そして後々のトラブルを避けるためにも、X社とY社で協議のうえ、商標登録をしておくことが無難といえましょう。

不適切


そのとおりです。また、その音楽の著作物は、他者から許諾を得てビデオ作品に利用したのかもしれません。そうなると、そもそも許諾する権原がないかもしれません。

適切


著作権法16条は、「映画の著作物の著作者」を定めたものです。
当該ロボットは人気漫画を原作としているため、X社が商品化権を持っているとは言い切れません。

不適切


当該契約はビデオ作品化に関する契約と考えられます。二次利用に関わる条項は不明ですから、注意が必要です。

不適切

2012年5月13日日曜日

委託契約における著作権の帰属の問題2

【問題】
契約書を読んで、その内容について答える問題です。
ただし、長文の契約書を全部載せるというわけにもいきませんので、ここでは省略します。
問題文が手元にある方は、それをごらんください。
私の手元にもありますので、ご希望の方は、メールを下さい。

────────────────────────
ソフトウエア開発委託契約書

株式会社X社(以下,「甲」という。)と,
株式会社Y社(以下,「乙」という。)とは,
コンピュータソフトウエアの開発業務の委託に関し,
以下の通り契約する。
(以下略)
────────────────────────
結局,X社は,Y社から提供されたドラフトに修正を加えることなく,契約を締結した。ア〜エの記述を比較して,その後のX社の行為又は考えとして,最も適切と考えられるものはどれか。

ア X社は完成したソフトウエアを子会社のコンピュータにもインストールして使用した。本契約書には使用の範囲について具体的な定めはないが,委託して開発したソフトウエアであるから特に問題は生じない。

イ X社は,Y社が本ソフトウエアのシリーズである続編ソフトを開発してZ社に販売しているのを発見した。本契約に基づくと,X社はZ社を著作権侵害として訴えることができる。

ウ 完成したソフトウエアをX社内で使用したところ軽微なバグが見つかった。X社ではプログラムを一部修正し使用しているが,本契約に基づくと問題が生じる可能性は少ない。

エ X社は,その創作年月日を証明するために,財団法人ソフトウエア情報センターに早急に申請を行い,創作年月日の登録を受けることが望ましい。

(23年7月実施)


【解説】
委託契約における著作権の帰属の問題の続きです。


契約書の条項に、著作権はY社に帰属することが明記されています。
また、職務著作としてX社が著作者となるケースでもありませんので、複製権はY社にあります。X社には所有権があるのみです。
X社ではなく、子会社のコンピュータにもインストールする行為は、複製権の侵害と考えられます。
著作権法47条の3は、
「プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案をすることができる。」
と定めていますが、「自ら利用するために必要と認められる限度において複製できる」のであって、子会社に複製させることができるのではありません。
これは、滅失に備えたバックアップコピー等が許されていると考えるべきです。

不適切


本契約では著作権はY社に帰属することとなっていますし、特許権等もY社に帰属すると規定されていますので、Y社がZ社に販売することは問題ありません。
Z社は、Y社から正式ルートで購入していると考えられますので、Z社には著作権侵害はないと考えるのが普通でしょう。

不適切



契約条項中に
「第21条 (納入物の著作権)
2.甲は,納入物のうちプログラムの複製物を,著作権法第47条の3に従って自己利用に必要な範囲で,複製,翻案することができるものとする。乙は,かかる利用について著作者人格権を行使しないものとする。」
と規定されていますので、X社はバグの修正を行うことができます。
(著作権法47条の3については既述)

適切



プログラムの著作物の創作年月日の登録を受けることができるのは、著作者(=Y社)です。

不適切

2012年5月12日土曜日

委託契約における著作権の帰属の問題

【問題】
契約書を読んで、その内容について答える問題です。
ただし、長文の契約書を全部載せるというわけにもいきませんので、ここでは省略します。
問題文が手元にある方は、それをごらんください。
私の手元にもありますので、ご希望の方は、メールを下さい。

┌────────────────────────┐
│ソフトウエア開発委託契約書                      │
│                                                │
│株式会社X社(以下,「甲」という。)と,        │
│株式会社Y社(以下,「乙」という。)とは,      │
│コンピュータソフトウエアの開発業務の委託に関し,│
│以下の通り契約する。                            │
│(以下略)                                      │
└────────────────────────┘
X社はY社に対し,会計用のソフトウエアの開発を依頼したところ,先方から契約書のドラフトが提供された(なお,本問に関係のない部分については一部省略してある)。この契約書について,X社の担当者である丙と丁が会話している。ア〜エの会話を比較して,最も不適切と考えられるものはどれか。


丙 「開発委託契約は委任契約と請負契約のどっちにあたるんだろう。」
丁 「この開発委託契約は民法上の請負契約に該当し,仕事の目的物の引渡が報酬の対象行為となるから,著作権の移転に関する条項がなくても,開発されたソフトウエアの著
作権はソフトウエアの引渡を受けた時点で当社に移転するよね。」


丙 「『著作権は原始的に甲に帰属する』という条項を入れてはどうかな。」
丁 「著作権法によれば著作者は『著作物を創作する者をいう』から,創作をしていない当社が原始的な著作者になることを意味するこの規定は無効になる可能性があるね。」


丙 「完成したソフトウエアの著作権をY社と当社の共有とした場合はどうだろう。」
丁 「その著作権のX社の持分を譲渡する場合には,Y社の同意が必要になるね。」


丙 「第26条の誠実協議条項って法的な効果はあるのかな。」
丁 「実際に問題が生じたときには,裁判所はこれを強制することはできないよね。」

(23年7月実施)


【解説】
委託契約における著作権の帰属の問題です。


まず、「委任契約」と「請負契約」の違いを見てみましょう。
『法律学小辞典』(第4版)によれば、

■委任契約:当事者の一方(委任者)が他方(受任者)に対して事務の処理を委託し、他方がこれを承諾することによって成立する諾成・不要式の契約。結果の完成を必ずしも必要としない点で、仕事の完成を目的とする請負とは区別される。受任者は、委任の本旨に従い善管注意義務を負う。受任者は原則として自ら委任事務を処理しなければならない。

■請負契約:当事者の一方(請負人)がある仕事を完成させ、他方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約。有償・双務・諾成・不要式の契約である。仕事の完成を目的としている点で、雇傭や、事務処理を目的とし必ずしも結果の完成を必要としない委任と区別される。
請負人は、仕事を完成し、引き渡す義務を負う。仕事の完成は、仕事の性質又は特約により請負人が自ら労務を供することを必要とする場合のほか、第三者を使用し、又は下請負に出すこともできる。仕事の目的物に瑕疵があるときには、請負人は担保責任を負う。

委任・請負のいずれにおいても、職務著作に当たらない限り、当該ソフトウエアの著作権は開発者たる乙に帰属します。

不適切



職務著作に該当すれば、甲が著作者となるかもしれませんが……

適切

※著作権法15条
1 法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づき
その法人等の業務に従事する者が
職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、
その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、
その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、
その法人等とする。

2 法人等の発意に基づき
その法人等の業務に従事する者が
職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、
その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、
その法人等とする。



共同著作物の著作権その他共有に係る著作権については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持ち分を譲渡し、又は質権の目的とすることができません(著作権法65条1項)。

適切



理想的な契約書は、可能な限り事前に全ての条件が規定されているものです。誠実協議条項のような無意味な条項は、欧米ではかえって実務能力を疑われることもあります。

適切

2012年5月10日木曜日

著作権と所有権等との関係、著作権の「侵害」を問う問題

【問題】
出版社であるX社では,他の出版社であるY社が発行しているある文献に依拠して新たな文献を執筆・発行することを企画している。この企画に関する法務部の部員のア〜ウの発言を比較して,最も適切と考えられるものはどれか。

ア 「出版社Y社の文献は,創作的表現を欠くために著作物性がないことが確実であれば,その文献に依拠してそれと極めて類似した文献を執筆・発行しても法律的な問題が発生することはない。」

イ 「出版社Y社の出版物の中には『Z美術館所有』という出所表示がついた平安時代の絵巻物の写真が含まれている。従って,この写真をZ美術館に許諾を得ないで転載するとZ美術館の所有権侵害の問題になる。」

ウ 「出版社Y社の文献の全体的な構成がありふれたものであったとしても,その部分である具体的表現に創作性が認められる場合には,その創作的表現をそのまま利用してしまうと著作権侵害を免れないから注意しなくてはならない。」

(23年7月実施)


【解説】
著作権と、所有権等他の権利との関係、そして著作権の「侵害」とは何かを問う問題です。


著作権法で問題がなくても、不正競争防止法や、民法の不法行為の問題が考えられます。

不適切


所有権が問題になるのは絵巻物の原作品自体についてであり、その写真の著作権とは別個の権利であるから、所有権を侵害することはありません。

不適切


著作権法が保護しているのは、創作的な「表現」です。
その「表現」に創作性が認められれば、保護されます。
全体的な構成は、著作権法が保護しているものではありませんので、ここでは考慮する必要はありません。

適切

2012年5月9日水曜日

著作権法46条(公開の美術の著作物等の利用)についての問題

【問題】
次の文章は,バス車体絵画事件(東京地判平成13年7月25日)の判決文の一部である。空欄[1]〜[3]に入る語句の組合せとして,最も適切と考えられるものはどれか。
美術の著作物の原作品が,不特定多数の者が自由に見ることができるような屋外の場所に[1]設置された場合,仮に,当該著作物の利用に対して著作権に基づく権利主張を何らの制限なく認めることになると,一般人の[2]を過度に抑制することになって好ましくないこと,このような場合には,一般人による自由利用を許すのが社会的慣行に合致していること,さらに,多くは[3]の意思にも沿うと解して差し支えないこと等の点を総合考慮して…(以下,略)
ア [1]=一時的に [2]=行動の自由 [3]=一般人
イ [1]=一時的に [2]=表現の自由 [3]=著作者
ウ [1]=恒常的に [2]=表現の自由 [3]=一般人
エ [1]=恒常的に [2]=行動の自由 [3]=著作者
(23年7月実施)

【解説】
著作権法46条(公開の美術の著作物等の利用)についての問題です。
問題文は、判決文の「争点に対する判断」の中で、法46条柱書の趣旨について述べられた部分です。
まあ、判決文を見れば、答えはすぐに分かってしまうのですが……
まずは、法46条を見て、それぞれの空欄に入るべき言葉を考えてみましょう。
「美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一  彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二  建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三  前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四  専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合」
本条において「利用することができる」とされている著作物は、大前提として、「屋外の場所に恒常的に設置されている、公開の美術または建築の著作物」です。
→従って、[1]には「一時的に」は入らず、「恒常的に」が入ることになります。
本条の対象となる著作物は、自由に写真を撮ったり、自分の商品にマークとして入れたり、その他の利用ができるのです。
(ただし、公開されているからといって、絵画を写真に撮ってきれいに印刷し、観賞用として販売するような場合は、4号に該当し、権利侵害となります)
そのような著作物がある場所は、観光名所になることが多いでしょう。
そこで写真撮影したり、ブログに掲載したりするのが違法となっては、非常に面倒です。
見に行った人の、行動の自由が制限されることになりますね。
→ということで、[2]には「表現の自由」ではなく、「行動の自由」が入ります。
そもそもそんな公開の場所に、著作物を恒常的に設置するということは、著作者としてもある程度自由に利用されることを想定しているはずです。
勝手に使われたくないのなら、こういう公開設置をしなければいいのですから。
→[3]には、「一般人」ではなく、「著作者」が入ります。
 日本語から言っても、[3]の位置に入るのが「一般人」ではおかしいですけれどね。

[2]は微妙なので、[1]と[3]が分かれば、答えは出ます。
こう考えていくと、本判決(バス車体絵画事件)の内容を知らなくても正答を導き出すことはできますが、知っていたら、さらに簡単です。
有名な判決の内容を知っていると、試験の時には楽になることが多いでしょう。
日頃から『判例百選』等の判例集に目を通しておくと、合格の確率はグッと高まるはずです。

2012年5月8日火曜日

「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」についての問題

【問題】
ベンチャー企業X社は、インターネットを利用して、動画やコンピュータプログラムを有料で配信するビジネスを行うこととした。その際の法的問題を検討するにあたり、平成19年3月に経済産業省から発表された「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(平成20年8月改訂)の内容を確認することとした。X社の法務担当者のア〜エの発言を比較して、この準則に照らして最も適切と考えられるものはどれか。

ア 「サイトの利用規約の法的拘束力に関してだが、利用者が利用規約に同意の上で取引を申し込んだのであれば、利用規約の内容は利用者とサイト運営者との間の取引契約の内容に組み込まれることにより拘束力を持つと考えられる。他方、利用規約を取引実行の条件として必ず同意クリックを必要とするのは非現実的である。従って、ウェブサイト中の利用者が必ず気付くと考えられる場所に利用規約が掲載されていれば(例えば、取引の申込画面にサイト利用規約へのリンクが目立つ形で張られているなど)、利用者は利用規約には拘束されることになる」

イ 「サイトの利用規約の表題であるが、『ご利用にあたって』という表題にすると法的拘束力が弱いため、『利用規約』あるいは『利用規則』とすべきである。これにより、法的拘束力が認められやすくなる」

ウ 「動画ファイルのダウンロード希望者による申込に対し、自動返信メールにおいて、承諾の意思表示が別途なされることを明記した場合、例えば『本メールは受信確認メールであり、承諾通知ではありません。改めて正式な承諾通知をお送りします。』といったように、契約申込への承諾が別途なされることを明記した場合であっても運営者側が、あえて自動返信の仕組みを利用して応答している以上、承諾通知に該当し、少なくとも契約は成立していると考えられる」

エ 「情報財が著作権法で保護されている場合、同法の規定により著作権が制限されている部分(著作権法第30条から第49条まで)が存在する。この部分は著作権法によってユーザーに著作物の利用が認められているものであるが、基本的には任意規定であり、契約で利用を制限することが可能であるとの解釈がある。しかしながら、上記規定について情報財の利用を制限するようなライセンス契約の条項は無効であるとの解釈も存在している。この解釈によれば、例えば、私的複製やバックアップコピーを完全に禁止する条項が、上記により無効となる可能性がある」

(22年11月実施)



【解説】
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の内容を知っているかどうかの問題です。
ただし、本準則は毎年のように改訂されており、本問が出題された時と、現在とでは、内容が異なります。
経緯は→ http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/index.html#01

本問はあくまで「平成20年8月改訂」の準則に則っての問題であることに注意が必要です。

平成20年8月改訂版
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/080829jyunsoku.pdf

そんな問題を今さら詳しく解説しても……と思いますので、現在最新の「平成23年6月改訂」準則ではどうなっているかも、併せて記述します。



「ウェブサイトの利用規約の有効性」についての問題です。
「平成20年8月改訂版」では、次のように記されていました。

=======================
1.考え方
物品の販売やサービスの提供などの取引を目的とするウェブサイトについては、利用者がサイト利用規約に同意の上で取引を申し込んだのであれば、サイト利用規約の内容は利用者とサイト運営者との間の取引契約の内容に組み込まれることにより拘束力を持つ。
   ↓
サイト利用規約への同意クリックなど利用者からのサイト利用規約への同意の意思表示が確認されない限り取引が実施されない仕組みが構築されていない場合には、サイト利用規約に法的効力が認められない可能性が残る。
=======================

また、米裁判例では、同意クリック等の利用者の同意を確認できる仕組みを要件としたものがあることも、紹介されています。

不適切

※では、「平成23年6月改訂版」ではどうなっているでしょうか。
 まさにこれが、改訂された大きな論点の一つです。
=======================
(1)ウェブサイトの利用規約の有効性に関する論点の修正
◆改訂前準則の「ウェブサイトの利用規約の有効性」の項目は、「インターネット取引はまだ新しい取引形態であり、現時点でウェブサイトに掲載されたサイト利用規約に従って取引を行う商慣行が成立しているとは断定できない」との前提で記述されていたが、ウェブサイトに掲載されたサイト利用規約に従って取引を行うことは、近年より一般的になってきていることから、そのような利用規約が契約の一部として有効となるための要件について改めて検討して記述した。特に、現在の取引の実態を踏まえ、必ずしも利用規約への同意クリックの仕組みが無くても、利用規約の内容が契約に組み入れられる場合があることを明示的に記述することとした。
また、項目名を「ウェブサイトの利用規約の有効性」から「ウェブサイトの利用規約の契約への組入れと有効性」に修正し、利用規約の契約への組入れの問題と規約の条項の有効性の問題との区別を明確にした。

(準則 i.23 頁)
…ところで、インターネットを利用した電子商取引は今日では広く普及しており、ウェブサイトにサイト利用規約を掲載し、これに基づき取引の申込みを行わせる取引の仕組みは、少なくともインターネット利用者の間では相当程度認識が広まっていると考えられる。従って、取引の申込みにあたりサイト利用規約への同意クリックが要求されている場合は勿論、例えば取引の申込み画面(例えば、購入ボタンが表示される画面)にわかりやすくサイト利用規約へのリンクを設置するなど、当該取引がサイト利用規約に従い行われることを明示し且つサイト利用規約を容易にアクセスできるように開示している場合には、必ずしもサイト利用規約への同意クリックを要求する仕組みまでなくても、購入ボタンのクリック等により取引の申込みが行われることをもって、サイト利用規約の条件に従って取引を行う意思を認めることができる。
=======================
したがって、現在なら、アの選択肢も「適切」と考えていいでしょうね。



同じく、「ウェブサイトの利用規約の有効性」についての問題です。
「平成20年8月改訂版」を見てみましょう。

=======================
なお、サイト利用規約には、例えば「利用条件」、「利用規則」、「ご同意事項」、「ご利用あたって」など、サイトごとに様々な表題が付されているが、サイト利用規約につきサイト側が付している表題は特段の事情がない限り効力に影響しない。
=======================

これは簡単ですね。
表題は、特段の事情がない限り、効力に影響しません。
表題によって法的拘束力が異なるというのは、常識的に考えてもおかしいと思うはずです。
民法における契約の基本は、諾成契約(当事者の合意だけで成立する契約←→要物契約)であることを考えても、感覚的に分かるのではないでしょうか。

不適切

※「平成23年6月改訂版」でも、変化はありません。



「契約の成立時期」の問題です。
「平成20年8月改訂版」では、

=======================
電子メール等の電子的な方式による契約の承諾通知は原則として極めて短時間で相手に到達するため、隔地者間の契約において承諾通知が電子メール等の電子的方式で行われる場合には、民法第526 条第1項及び第527 条が適用されず、当該契約は、承諾通知が到達したときに成立する(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(以下「電子契約法」という。)第4条、民法第97条第1項)。
なお、「本メールは受信確認メールであり、承諾通知ではありません。在庫を確認の上、受注が可能な場合には改めて正式な承諾通知をお送りします。」といったように、契約の申込への承諾が別途なされることが明記されている場合などは、受信の事実を通知したにすぎず、そもそも承諾通知には該当しないと考えられるので、注意が必要である。
=======================

と書かれています。
ちなみに民法第97条1項とは、「隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」という条文です。

不適切

※「平成23年6月改訂版」でも、変化はありません。



「契約中の不当条項」の問題です。
「平成20年8月改訂版」を見てみます。

=======================
著作権法第30条から第49条までの規定は、法律で著作権を部分的に制限している(すなわちユーザーに対してその部分の利用を認めている)規定であるが、これらの規定は基本的には任意規定であり、契約で制限することが可能であるとの解釈がある。しかしながら、ユーザーに対してそれらの規定よりも利用を制限しているライセンス契約の条項は無効であるとの解釈も存在している。

(著作権法上の権利制限規定がある部分についてユーザーの利用制限を課している契約条項は無効であるとの解釈をとった場合、不当条項に該当する可能性がある条項例)
・私的複製やバックアップコピーを完全に禁止する条項


情報財が著作権法で保護されている場合、同法の規定により著作権が制限されている部分(著作権法第30条から第49条まで)が存在する。この部分は著作権法によってユーザーに著作物の利用が認められているものであるが、基本的には任意規定であり、契約で利用を制限することが可能であるとの解釈がある。しかしながら、上記規定について情報財の利用を制限するようなライセンス契約の条項は無効であるとの解釈も存在している。この解釈によれば、例えば、私的複製やバックアップコピーを完全に禁止する条項が、上記により無効となる可能性がある。
=======================


適切

※「平成23年6月改訂版」でも、変化はありません。

2012年4月28日土曜日

裁定制度の問題

【問題】
テレビ局であるX社では、開局50周年記念に、X社で制作した往年の人気ドラマAをビデオグラム化することになった。ところが、ビデオ担当スタッフから1998年10月5日放送のスペシャルドラマ(1話)についてアーカイヴデータの記録が見当たらず、いくつかの権利処理ができないと報告があった。

ドラマAの出演者の中で所在が不明で連絡がとれない者が二人いる。裁定制度の利用に関するビデオ担当スタッフのア〜エの発言を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 「裁定制度は、過去の放送番組等のコンテンツをインターネットで二次利用する場合の制度なので、ビデオグラム化については適用されないよね」

イ 「裁定制度は、著作権者を対象としているので、著作隣接権者である出演者には適用されないよね」

ウ 「裁定申請の際に供託金を納付すれば、裁定結果が出る前であっても暫定的な利用ができるよね」

エ 「改正によって、裁定申請の際に相当な努力を払って権利者を探す必要がなくなったから以前より利用しやすくなったね」

(22年11月実施)



【解説】
裁定制度の問題です。
本検定においては、けっこう、出題されやすい分野です。要注意。


裁定制度に、そのような制限はありません。

不適切


平成21年改正により、著作隣接権者と連絡することができない場合にも、裁定が受けられるようになりました。
(著作権法103条。67条・67条の2を準用)

不適切


平成21年改正により、67条1項の裁定の申請中であっても、一定条件の下、申請者は申請に係る著作物を利用することができるようになりました(著作権法67条の2)。

適切


平成21年改正によって変わったのは、

「著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払ってもその著作権者と連絡することができないとき」
   ↓
「著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払ってもその著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合は

であって、「相当な努力の要件を政令で定めることとしたものの、「相当な努力」が不要になったのではありません。

不適切


2012年4月26日木曜日

テレビドラマをビデオグラム化する際の、音楽の権利処理の問題

【問題】
テレビ局であるX社では、開局50周年記念に、X社で制作した往年の人気ドラマAをビデオグラム化することになった。ところが、ビデオ担当スタッフから1998年10月5日放送のスペシャルドラマ(1話)についてアーカイヴデータの記録が見当たらず、いくつかの権利処理ができないと報告があった。

ドラマA内で使用されている劇伴音楽(ドラマで使用された楽曲)の中で、一つだけ著作権等管理事業者に管理委託されていない楽曲があった。ア〜エの記述を比較して、ビデオ担当スタッフの行為として、最も適切と考えられるものはどれか。

ア インターネットで調べたところ、同じ楽曲について有料ダウンロードサービスをしていたので、楽曲を正規に購入して使用した。

イ ドラマA用に作曲されたオリジナル楽曲なので、制作に関わった音楽出版社に連絡をとり作曲家を探すことにした。

ウ この楽曲はドラマA内で一度しか使われないため、「引用」としてテロップを出すことにした。

エ ドラマA内で使用されている劇伴音楽を調べてみたところ3小節であり、法的に許諾を得る必要がない4小節以内なので、そのまま使用することにした。

(22年11月実施)

【解説】
テレビドラマをビデオグラム化する際の、音楽の権利処理の問題です。


正規に購入したとしても、複製の許諾を得たとは考えにくいため、ビデオグラム化すると複製権の侵害となります。

不適切


作曲家が見つかって許諾を受ければ、問題ありません。

適切


これは「引用」とは言えません。引用については、別の問題のところで、詳しく触れたいと思います。

不適切


「4小節以内は許諾不要」は、法的根拠はありません。
これは、まったくのデマと考えて、差し支えありません。

不適切

2012年4月25日水曜日

実演家の、放送に関する権利の問題2

【問題】
テレビ局X社は、ドラマ番組Aの放送を企画している。また、その放送直後には見逃し視聴としてインターネットによるオンデマンド配信を予定している。デジタル事業部のスタッフとしては番組制作と同時にインターネット配信の権利処理を行っておきたい。ア〜エの項目を比較して、インターネット配信を行う場合に権利処理が必要な権利の組合せとして、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 脚本家の翻案権と実演家の自動公衆送信権

イ 脚本家の自動公衆送信権と実演家の送信可能化権

ウ 脚本家と実演家の自動公衆送信権

エ 脚本家と実演家の追加報酬請求権

(23年7月実施)

【解説】
実演家に認められている、放送に関する権利にどういうものがあるか、という問題です。
前に紹介した問題と、内容は全く同じで、選択肢アとウが入れ替わっただけです。


実演家には自動公衆送信権は認められず、送信可能化権のみを有します(著作権法92条の2)。
さらに、元のドラマをそのままインターネット配信する際には、ドラマ自体が変更されているわけではないので、脚本家の翻案権は問題になりません。脚本の上演は「複製」に当たりますから(著作権法2条1項15号イ)、問題になるのは複製権です。

不適切


ア前段と同じです。

適切


イと同じです。
このことを覚えてしまうのが、いちばん手っ取り早いでしょう。

不適切


「追加報酬請求権」とは、著作権法上認められた権利ではありません。

不適切

2012年4月24日火曜日

実演家の、放送に関する権利の問題

【問題】
テレビ局であるX社では、人気俳優である甲の芸能生活30周年を記念して、甲が出演している作品のうち、X社が制作した過去のテレビドラマを記念DVDとしてビデオグラム化して発売する予定である。

テレビ局X社は、DVDの発売にあわせて、30周年特集番組Aの放送を企画している。また、その放送直後には見逃し視聴としてインターネットによるオンデマンド配信を予定している。デジタル事業部のスタッフとしては番組制作と同時にインターネット配信の権利処理を行っておきたい。ア〜エの項目を比較して、インターネット配信を行う場合に権利処理が必要な権利の組合せとして、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 脚本家と実演家の自動公衆送信権

イ 脚本家の自動公衆送信権と実演家の送信可能化権

ウ 脚本家の翻案権と実演家の自動公衆送信権

エ 脚本家と実演家の追加報酬請求権

(22年11月実施)

【解説】
実演家に認められている、放送に関する権利にどういうものがあるか、という問題です。


実演家には自動公衆送信権は認められず、送信可能化権のみを有します(著作権法92条の2)。
このことを覚えてしまうのが、いちばん手っ取り早いでしょう。

不適切


アと同じです。

適切


アと同じです。
さらに、元のドラマをそのままインターネット配信する際には、ドラマ自体が変更されているわけではないので、脚本家の翻案権は問題になりません。脚本の上演は「複製」に当たりますから(著作権法2条1項15号イ)、問題になるのは複製権です。

不適切


「追加報酬請求権」とは、著作権法上認められた権利ではありません。

不適切

2012年4月20日金曜日

テレビドラマのビデオグラム化に関する実演家の権利の問題

【問題】
テレビ局であるX社では、人気俳優である甲の芸能生活30周年を記念して、甲が出演している作品のうち、X社が制作した過去のテレビドラマを記念DVDとしてビデオグラム化して発売する予定である。

X社がDVDの発売を企画した理由に関するX社の社員のア〜エの発言を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 「甲の権利は、いわゆるワンチャンス主義で制限され、自由に使えるからね」

イ 「他局で制作された甲の出演したドラマの著作権について、他局から許諾を受けられたから大丈夫だよ」

ウ 「甲は、当社と出演時に専属契約を結び、現在も当社に権利があるからね」

エ 「甲の許諾も得られたし、甲の出演したドラマを制作したのは当社だからね」

(22年11月実施)



【解説】
テレビドラマのビデオグラム化に関する実演家の権利の問題です。

放送をビデオグラム化する際、俳優(実演家)の著作隣接権や、素材(音楽等)の著作権は、よく問題になっています。
本検定でも、問われる可能性が極めて高いAランク問題です。

まず、「ワンチャンス主義」とは何か、まとめておきましょう。
文化庁が公開しているマニュアル、テキストには、次のように書かれています。

*   *   *   *   *
演奏や上演を著作権法上は「実演」といい、演奏や上演をする人を「実演家」といいます。
著作権法上、実演家の了解を得て映画の著作物(劇場上映用以外の映像作品も含みます。)に録音・録画された実演について、実演家はその後の利用に関する権利が原則として制限されています。したがって、最初に録音・録画するときの契約が大変重要になってきます。最初の1回の契約でその後の実演の利用までを念頭においた契約条件を決めておく必要があるという意味で、「ワンチャンス主義」といわれることがあります。
「誰でもできる著作権契約マニュアル」
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/keiyaku_manual/2_2_2.html

「映画の著作物に録音・録画された実演」の場合,俳優などの実演家の了解を得て録音・録画された実演は,原則として,権利がありません(第91条第2項,第92条第2項,第92条の2第2項)。
文化庁長官官房著作権課『著作権テキスト 〜 初めて学ぶ人のために 〜』平成21年度
*   *   *   *   *

つまり、実演家が一度録音・録画を許諾したならば、その実演が収録された録音・録画物を複製することに対し、権利を及ぼすことができない(=イヤと言えない)のです。
ではテレビドラマはどうなのか。
出演時に、実演家と制作側が、どういう契約を交わしているのかが問題になります。


テレビドラマは、一般に録音・録画の許諾を受けず、放送の許諾だけを得ています(放送のための録画はOK。著作権法93・94条)。ビデオグラム化するには、録音・録画の許諾が、別途必要になってきます(放送はワンチャンス主義によって、可能です)。

不適切


別のドラマについての権利と、本問ドラマについての権利は別です。当たり前ですね。
ドラマについて著作権の許諾を得られたとしても、甲の、実演家としての著作隣接権の許諾は得ていませんから、「大丈夫」ではありません。

不適切


「専属契約」といっても、その内容は不明ですし、職務著作と言える(?)かどうかは検討の余地がありますので、「最も適切」とは言えないでしょう。

不適切


ドラマを制作した時点で、その素材についての著作権処理は解決していると考えられ、さらに実演家たる甲の許諾も得ているので、問題ないと考えられます。

適切

2012年4月18日水曜日

テレビドラマをビデオグラム化する際の著作隣接権の問題

【問題】
テレビ局であるX社では、人気俳優である甲の芸能生活30周年を記念して、甲が出演している作品のうち、X社が制作した過去のテレビドラマを記念DVDとしてビデオグラム化して発売する予定である。

過去に放送されたテレビドラマのDVD制作にあたり、ア〜エの項目を比較して、X社が新たに許諾を得る必要のないものとして、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 日本脚本家連盟に著作権を信託している脚本家が書いたドラマの脚本に関する権利

イ ドラマで使われている明治時代(1868年〜1912年)に撮影されて公表された風景写真に関する権利

ウ ドラマに出演し、テレビ放送を許諾した俳優の実演に関する権利

エ ドラマで主題歌として使用している市販CDに収録されている曲に関する権利

(22年11月実施)

【解説】
ここから、主に著作隣接権(実演家の権利)の問題になります。

まず、「ビデオグラム」とは何でしょうか。
JASRACの規定によれば、「ビデオテープ、ビデオディスク、DVDなどに映像を連続して固定したものであって、映画フィルム以外のものをいう」とあります。
一般にはあまり使いませんよね。


著作権法2条1項15号に、次のように規定されています。

「複製──印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物──当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。」

脚本は、これを上演して録画することが、「複製」になるのです。
ということは、本問脚本家の複製権につき、許諾が必要になります。

不適切


写真の著作物の保護期間は、現行著作権法施行時は"公表後"50年とされていました。
それが平成8年(1996)改正により、著作者の"死後"50年となりました。
しかし旧著作権法では、発行後10年であり、暫定的に13年まで延長されはしましたが、いずれにしろ昭和31年(1956)以前に発行された写真の著作権は、消滅しています。

適切


著作権法93条は、「放送のための固定」として、次のように規定しています。

「実演の放送について第92条第1項に規定する権利を有する者の許諾を得た放送事業者は、その実演を放送のために録音し、又は録画することができる。ただし、契約に別段の定めがある場合及び当該許諾に係る放送番組と異なる内容の放送番組に使用する目的で録音し、又は録画する場合は、この限りでない。
 2  次に掲げる者は、第91条第1項の録音又は録画を行なつたものとみなす。
  一  前項の規定により作成された録音物又は録画物を放送の目的以外の目的又は同項ただし書に規定する目的のために使用し、又は提供した者」

92条1項とは何かというと、実演家の「放送権及び有線放送権」を規定した条文です。

「実演家は、その実演を放送し、又は有線放送する権利を専有する」

つまり実演家は、放送権を有しています。
第三者が無断で放送を行うと、放送権の侵害になります。

本問ではテレビ放送を許諾していますから、テレビ局は「第92条第1項に規定する権利を有する者の許諾を得た放送事業者」になります。
テレビ局は、放送のために録画することはできます。

ところが、その「放送のための録画」を、「放送の目的以外の目的」、例えばビデオグラム化するという目的のために使用・提供すると、"91条1項の録画"に当たるのです。

では"91条1項の録画"とは何か。
91条には、「録音権及び録画権」として、

「実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する」

と規定されています。
従って、実演家が専有する録画権を、テレビ局X社が行使(→無許諾だから侵害)することになるのです。

不適切


著作権法91条は、実演家の「録音権及び録画権」として、次のように規定しています。

「実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。
 2 前項の規定は、同項に規定する権利を有する者の許諾を得て映画の著作物において録音され、又は録画された実演については、これを録音物(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)に録音する場合を除き、適用しない。」

本問で問題となるのは、2項でしょう。
これは、実演家の録音権が及ばない場合が規定されています。
映画の著作物において録音された実演を、録音物に録音する場合は、1項が適用されます。
つまり無許諾では行えない、ということです。
ただし音を専ら映像とともに再生することを目的とするものは除かれていますから、ビデオグラム化する場合は除かれる(=無許諾で行える)ようにも読めます。

ところが、本問で問題になっている権利は、「曲に関する権利」なのです。
ということは、著作隣接権ではなく、著作権が問題となります。

たとえこのCDに収録されている局をドラマで主題歌として使用することを許諾されていたとしても、それをビデオグラム化(=複製。2条1項15号)することまで許諾されているかどうかは、本問からは明らかではありませんが、通常はなされていないと考えるべきでしょう。

著作権につき、許諾を得る必要がない場合とは、30条以下に規定されている「著作権の制限」規定に当てはまるかどうかです。
私的使用や引用、非営利利用等、どうやら該当するものはなさそうです。

不適切

2012年4月6日金曜日

著作権侵害における「依拠」の要件についての問題

【問題】
Y社に対して著作権侵害訴訟を提起した新聞社X社の法務担当者のア〜エの発言をを比較して、最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 「われわれとしては、Y社の複製物がわが社の著作物に『依拠』して作成されていることを主張・立証しなければならないね。」

イ 「『依拠』というのは、条文には明記されていないものの、著作権は相対的独占権であるがゆえに要求される要件だね。」

ウ 「依拠性は、要はY社がわが社の著作物の存在を知っていたという事実によって立証できればよいが、このような主観的事実を立証するのは相当に難しいね。」

エ 「依拠性については、Y社がわが社の著作物にアクセスし得る十分な蓋然性があるというだけでは足りず、実際にアクセスした事実を立証する必要があるね。」

(22年11月実施)


【解説】
著作権(特に複製権・翻案権)の侵害に際し問題となる、「依拠」の要件についての問題です。


依拠性は、著作権侵害を主張する者が立証責任を負います。

適切


著作権は、結果として既存の著作物と同じ著作物が創作されたとしても、既存の著作物とは独自に創作されたものであれば、独自の著作物として保護されるという、相対的独占権です。
ここで「相対権」と「絶対権」とは何でしょうか。
『法律学小辞典』を調べると、次のような意味だと書かれています。

相対権……特定の人に対してしか主張できない権利
絶対権……権利者以外の誰に対してでも法律上の主張ができる種類の権利


絶対権として代表的なものに、所有権があります。
これは誰に対してでも主張できます。
そして特許権も、絶対権と言えます。

では著作権はどうでしょうか。
たとえ同じ著作物ができたとしても、既存著作物に依拠して作られたものでなければ、それぞれが独自の著作物として保護されます。
逆に言えば、既存著作物に依拠して作られた著作物は、著作権侵害が問題になる、ということです。
このように、著作権は相対権なのです。

適切


依拠性は、相手方の主観的事実を問題とするものであるため、多くの場合、間接事実から推認せざるをえません。
つまり、「独自に創作したか」「依拠して複製・翻案したか」は、その既存著作物を知っていたかどうかという主観に左右されるのです。
この主観は、基本的に、外見から分かるものではないために、「おまえ知っていただろう!」と立証するのは、難しいものです。

適切


ウと同じことが問題になります。「実際にアクセスした事実」を立証するのは、事実上不可能というべきでしょう。そこで、既存著作物に「アクセスし得る十分な蓋然性」があれば、依拠を認めてよいといわれています。

不適切

2012年3月28日水曜日

著作権侵害訴訟における、立証責任の問題

【問題】
著作権侵害訴訟における原告と被告の主張・立証すべき事実の組合せとして、ア〜エの項目を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 原告=著作物について著作権を有すること
  被告=対象物の著作物性
イ 原告=侵害行為の存在
  被告=侵害行為と損害との因果関係
ウ 原告=著作権の制限規定に該当する事実
  被告=許諾を得ている事実
エ 原告=損害の発生
  被告=権利濫用に該当する事実

(22年11月実施)


【解説】
著作権侵害訴訟における、立証責任の問題ですね。


「対象物の著作物性」は、原告の立証すべき事実です。
→不適切


「侵害行為と損害との因果関係」は、原告の立証すべき事実です。
→不適切


「著作権の制限規定に該当する事実」は、被告の立証すべき事実です。
→不適切


→適切


【正解】







「知的財産管理技能検定1級(コンテンツ専門業務)」合格ブログ始めました

私は、昨年11月の「知的財産管理技能検定1級(コンテンツ専門業務)」の学科試験に合格し、今年11月の実技試験合格(=一級知的財産管理技能士〈コンテンツ専門業務〉の資格取得)を目指しています。

これは、現在までに、まだ50人しかおらず、次に取得できれば51人目になるわけです。

学科試験の勉強にあたり、インターネットで情報を探しましたが、全くと言っていいほど、ありませんでした。そのため、独学で勉強せざるをえず、暗中模索でした。

そこで、実技試験に向け、自分の勉強を兼ねて、本ブログでこれまでの学科試験過去問を解説してみようと思いました。

私は弁護士・弁理士ではありません。
まだ素人のレベルだと思います。
ですから、この解説もどこまで正しいかは分かりません。
(逆に言えば、このレベルまで勉強すれば、合格できる、ということです)

このブログを読まれた方から、間違いの指摘、改善点のアドバイスなど、頂けますと、とてもありがたく思います。

些細なことでも結構ですので、遠慮なくご教示ください。

では、始めます。
(記事の順番は、統一性はありません。書けるところから、です)