【問題】
出版社であるX社では,他の出版社であるY社が発行しているある文献に依拠して新たな文献を執筆・発行することを企画している。この企画に関する法務部の部員のア〜ウの発言を比較して,最も適切と考えられるものはどれか。
ア 「出版社Y社の文献は,創作的表現を欠くために著作物性がないことが確実であれば,その文献に依拠してそれと極めて類似した文献を執筆・発行しても法律的な問題が発生することはない。」
イ 「出版社Y社の出版物の中には『Z美術館所有』という出所表示がついた平安時代の絵巻物の写真が含まれている。従って,この写真をZ美術館に許諾を得ないで転載するとZ美術館の所有権侵害の問題になる。」
ウ 「出版社Y社の文献の全体的な構成がありふれたものであったとしても,その部分である具体的表現に創作性が認められる場合には,その創作的表現をそのまま利用してしまうと著作権侵害を免れないから注意しなくてはならない。」
(23年7月実施)
【解説】
著作権と、所有権等他の権利との関係、そして著作権の「侵害」とは何かを問う問題です。
ア
著作権法で問題がなくても、不正競争防止法や、民法の不法行為の問題が考えられます。
↓
不適切
イ
所有権が問題になるのは絵巻物の原作品自体についてであり、その写真の著作権とは別個の権利であるから、所有権を侵害することはありません。
↓
不適切
ウ
著作権法が保護しているのは、創作的な「表現」です。
その「表現」に創作性が認められれば、保護されます。
全体的な構成は、著作権法が保護しているものではありませんので、ここでは考慮する必要はありません。
↓
適切
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