2012年5月9日水曜日

著作権法46条(公開の美術の著作物等の利用)についての問題

【問題】
次の文章は,バス車体絵画事件(東京地判平成13年7月25日)の判決文の一部である。空欄[1]〜[3]に入る語句の組合せとして,最も適切と考えられるものはどれか。
美術の著作物の原作品が,不特定多数の者が自由に見ることができるような屋外の場所に[1]設置された場合,仮に,当該著作物の利用に対して著作権に基づく権利主張を何らの制限なく認めることになると,一般人の[2]を過度に抑制することになって好ましくないこと,このような場合には,一般人による自由利用を許すのが社会的慣行に合致していること,さらに,多くは[3]の意思にも沿うと解して差し支えないこと等の点を総合考慮して…(以下,略)
ア [1]=一時的に [2]=行動の自由 [3]=一般人
イ [1]=一時的に [2]=表現の自由 [3]=著作者
ウ [1]=恒常的に [2]=表現の自由 [3]=一般人
エ [1]=恒常的に [2]=行動の自由 [3]=著作者
(23年7月実施)

【解説】
著作権法46条(公開の美術の著作物等の利用)についての問題です。
問題文は、判決文の「争点に対する判断」の中で、法46条柱書の趣旨について述べられた部分です。
まあ、判決文を見れば、答えはすぐに分かってしまうのですが……
まずは、法46条を見て、それぞれの空欄に入るべき言葉を考えてみましょう。
「美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一  彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二  建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三  前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四  専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合」
本条において「利用することができる」とされている著作物は、大前提として、「屋外の場所に恒常的に設置されている、公開の美術または建築の著作物」です。
→従って、[1]には「一時的に」は入らず、「恒常的に」が入ることになります。
本条の対象となる著作物は、自由に写真を撮ったり、自分の商品にマークとして入れたり、その他の利用ができるのです。
(ただし、公開されているからといって、絵画を写真に撮ってきれいに印刷し、観賞用として販売するような場合は、4号に該当し、権利侵害となります)
そのような著作物がある場所は、観光名所になることが多いでしょう。
そこで写真撮影したり、ブログに掲載したりするのが違法となっては、非常に面倒です。
見に行った人の、行動の自由が制限されることになりますね。
→ということで、[2]には「表現の自由」ではなく、「行動の自由」が入ります。
そもそもそんな公開の場所に、著作物を恒常的に設置するということは、著作者としてもある程度自由に利用されることを想定しているはずです。
勝手に使われたくないのなら、こういう公開設置をしなければいいのですから。
→[3]には、「一般人」ではなく、「著作者」が入ります。
 日本語から言っても、[3]の位置に入るのが「一般人」ではおかしいですけれどね。

[2]は微妙なので、[1]と[3]が分かれば、答えは出ます。
こう考えていくと、本判決(バス車体絵画事件)の内容を知らなくても正答を導き出すことはできますが、知っていたら、さらに簡単です。
有名な判決の内容を知っていると、試験の時には楽になることが多いでしょう。
日頃から『判例百選』等の判例集に目を通しておくと、合格の確率はグッと高まるはずです。

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