X社は日本国内においてビデオ作品を中心に製作販売を行う映像製作会社である。このたび人気ロボット漫画作品を原作として実写版のビデオ作品を製作して販売したところ,大ヒットとなり,玩具会社Y社より「劇中に登場するロボットの音が出る玩具を商品化したい」旨の申し入れを受けた。
ア〜エの記述を比較して,X社がY社に商品化許諾業務を行うにあたり,事前に準備しておかなければならない内容として,最も適切と考えられるものはどれか。
ア 著作物のタイトルは商標使用にはあたらないので,商品化を予定しているアイテムの類別においてでも作品タイトルの商標調査及び登録の作業をする必要はない。
イ この玩具に使用される「音」が,音楽の著作物に該当する場合,その権利構成は当該ビデオ作品とは異なるので,必ずしも商品化権と一括で許諾する必要はない。
ウ 著作権法第16条により「映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」は,すなわちX社であるから,監督やデザイナーなど,当該作品を製作した外部スタッフとの間で特段の契約を締結しなくても,当該商品化許諾業務には不都合はない。
エ 原作者との間には,ビデオ作品を製作するときに原作使用契約を締結しているので,商品化許諾を行うときに,改めて二次利用に関わる契約を締結する必要はない。
(23年7月実施)
【解説】
商品化に際し、ライセンサーの立場での権利処理の問題です。
ア
確かに著作物(ビデオ)のタイトルとしてのみ使用しているだけならば問題にはならないでしょうが、玩具にする場合は、その類別において他社がすでに登録しているかもしれませんので、調査は必要です。そして後々のトラブルを避けるためにも、X社とY社で協議のうえ、商標登録をしておくことが無難といえましょう。
↓
不適切
イ
そのとおりです。また、その音楽の著作物は、他者から許諾を得てビデオ作品に利用したのかもしれません。そうなると、そもそも許諾する権原がないかもしれません。
↓
適切
ウ
著作権法16条は、「映画の著作物の著作者」を定めたものです。
当該ロボットは人気漫画を原作としているため、X社が商品化権を持っているとは言い切れません。
↓
不適切
エ
当該契約はビデオ作品化に関する契約と考えられます。二次利用に関わる条項は不明ですから、注意が必要です。
↓
不適切