2012年5月15日火曜日

商品化に際し、ライセンサーの立場での権利処理の問題

【問題】
X社は日本国内においてビデオ作品を中心に製作販売を行う映像製作会社である。このたび人気ロボット漫画作品を原作として実写版のビデオ作品を製作して販売したところ,大ヒットとなり,玩具会社Y社より「劇中に登場するロボットの音が出る玩具を商品化したい」旨の申し入れを受けた。
ア〜エの記述を比較して,X社がY社に商品化許諾業務を行うにあたり,事前に準備しておかなければならない内容として,最も適切と考えられるものはどれか。

ア 著作物のタイトルは商標使用にはあたらないので,商品化を予定しているアイテムの類別においてでも作品タイトルの商標調査及び登録の作業をする必要はない。

イ この玩具に使用される「音」が,音楽の著作物に該当する場合,その権利構成は当該ビデオ作品とは異なるので,必ずしも商品化権と一括で許諾する必要はない。

ウ 著作権法第16条により「映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」は,すなわちX社であるから,監督やデザイナーなど,当該作品を製作した外部スタッフとの間で特段の契約を締結しなくても,当該商品化許諾業務には不都合はない。

エ 原作者との間には,ビデオ作品を製作するときに原作使用契約を締結しているので,商品化許諾を行うときに,改めて二次利用に関わる契約を締結する必要はない。

(23年7月実施)


【解説】
商品化に際し、ライセンサーの立場での権利処理の問題です。


確かに著作物(ビデオ)のタイトルとしてのみ使用しているだけならば問題にはならないでしょうが、玩具にする場合は、その類別において他社がすでに登録しているかもしれませんので、調査は必要です。そして後々のトラブルを避けるためにも、X社とY社で協議のうえ、商標登録をしておくことが無難といえましょう。

不適切


そのとおりです。また、その音楽の著作物は、他者から許諾を得てビデオ作品に利用したのかもしれません。そうなると、そもそも許諾する権原がないかもしれません。

適切


著作権法16条は、「映画の著作物の著作者」を定めたものです。
当該ロボットは人気漫画を原作としているため、X社が商品化権を持っているとは言い切れません。

不適切


当該契約はビデオ作品化に関する契約と考えられます。二次利用に関わる条項は不明ですから、注意が必要です。

不適切

2012年5月13日日曜日

委託契約における著作権の帰属の問題2

【問題】
契約書を読んで、その内容について答える問題です。
ただし、長文の契約書を全部載せるというわけにもいきませんので、ここでは省略します。
問題文が手元にある方は、それをごらんください。
私の手元にもありますので、ご希望の方は、メールを下さい。

────────────────────────
ソフトウエア開発委託契約書

株式会社X社(以下,「甲」という。)と,
株式会社Y社(以下,「乙」という。)とは,
コンピュータソフトウエアの開発業務の委託に関し,
以下の通り契約する。
(以下略)
────────────────────────
結局,X社は,Y社から提供されたドラフトに修正を加えることなく,契約を締結した。ア〜エの記述を比較して,その後のX社の行為又は考えとして,最も適切と考えられるものはどれか。

ア X社は完成したソフトウエアを子会社のコンピュータにもインストールして使用した。本契約書には使用の範囲について具体的な定めはないが,委託して開発したソフトウエアであるから特に問題は生じない。

イ X社は,Y社が本ソフトウエアのシリーズである続編ソフトを開発してZ社に販売しているのを発見した。本契約に基づくと,X社はZ社を著作権侵害として訴えることができる。

ウ 完成したソフトウエアをX社内で使用したところ軽微なバグが見つかった。X社ではプログラムを一部修正し使用しているが,本契約に基づくと問題が生じる可能性は少ない。

エ X社は,その創作年月日を証明するために,財団法人ソフトウエア情報センターに早急に申請を行い,創作年月日の登録を受けることが望ましい。

(23年7月実施)


【解説】
委託契約における著作権の帰属の問題の続きです。


契約書の条項に、著作権はY社に帰属することが明記されています。
また、職務著作としてX社が著作者となるケースでもありませんので、複製権はY社にあります。X社には所有権があるのみです。
X社ではなく、子会社のコンピュータにもインストールする行為は、複製権の侵害と考えられます。
著作権法47条の3は、
「プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案をすることができる。」
と定めていますが、「自ら利用するために必要と認められる限度において複製できる」のであって、子会社に複製させることができるのではありません。
これは、滅失に備えたバックアップコピー等が許されていると考えるべきです。

不適切


本契約では著作権はY社に帰属することとなっていますし、特許権等もY社に帰属すると規定されていますので、Y社がZ社に販売することは問題ありません。
Z社は、Y社から正式ルートで購入していると考えられますので、Z社には著作権侵害はないと考えるのが普通でしょう。

不適切



契約条項中に
「第21条 (納入物の著作権)
2.甲は,納入物のうちプログラムの複製物を,著作権法第47条の3に従って自己利用に必要な範囲で,複製,翻案することができるものとする。乙は,かかる利用について著作者人格権を行使しないものとする。」
と規定されていますので、X社はバグの修正を行うことができます。
(著作権法47条の3については既述)

適切



プログラムの著作物の創作年月日の登録を受けることができるのは、著作者(=Y社)です。

不適切

2012年5月12日土曜日

委託契約における著作権の帰属の問題

【問題】
契約書を読んで、その内容について答える問題です。
ただし、長文の契約書を全部載せるというわけにもいきませんので、ここでは省略します。
問題文が手元にある方は、それをごらんください。
私の手元にもありますので、ご希望の方は、メールを下さい。

┌────────────────────────┐
│ソフトウエア開発委託契約書                      │
│                                                │
│株式会社X社(以下,「甲」という。)と,        │
│株式会社Y社(以下,「乙」という。)とは,      │
│コンピュータソフトウエアの開発業務の委託に関し,│
│以下の通り契約する。                            │
│(以下略)                                      │
└────────────────────────┘
X社はY社に対し,会計用のソフトウエアの開発を依頼したところ,先方から契約書のドラフトが提供された(なお,本問に関係のない部分については一部省略してある)。この契約書について,X社の担当者である丙と丁が会話している。ア〜エの会話を比較して,最も不適切と考えられるものはどれか。


丙 「開発委託契約は委任契約と請負契約のどっちにあたるんだろう。」
丁 「この開発委託契約は民法上の請負契約に該当し,仕事の目的物の引渡が報酬の対象行為となるから,著作権の移転に関する条項がなくても,開発されたソフトウエアの著
作権はソフトウエアの引渡を受けた時点で当社に移転するよね。」


丙 「『著作権は原始的に甲に帰属する』という条項を入れてはどうかな。」
丁 「著作権法によれば著作者は『著作物を創作する者をいう』から,創作をしていない当社が原始的な著作者になることを意味するこの規定は無効になる可能性があるね。」


丙 「完成したソフトウエアの著作権をY社と当社の共有とした場合はどうだろう。」
丁 「その著作権のX社の持分を譲渡する場合には,Y社の同意が必要になるね。」


丙 「第26条の誠実協議条項って法的な効果はあるのかな。」
丁 「実際に問題が生じたときには,裁判所はこれを強制することはできないよね。」

(23年7月実施)


【解説】
委託契約における著作権の帰属の問題です。


まず、「委任契約」と「請負契約」の違いを見てみましょう。
『法律学小辞典』(第4版)によれば、

■委任契約:当事者の一方(委任者)が他方(受任者)に対して事務の処理を委託し、他方がこれを承諾することによって成立する諾成・不要式の契約。結果の完成を必ずしも必要としない点で、仕事の完成を目的とする請負とは区別される。受任者は、委任の本旨に従い善管注意義務を負う。受任者は原則として自ら委任事務を処理しなければならない。

■請負契約:当事者の一方(請負人)がある仕事を完成させ、他方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約。有償・双務・諾成・不要式の契約である。仕事の完成を目的としている点で、雇傭や、事務処理を目的とし必ずしも結果の完成を必要としない委任と区別される。
請負人は、仕事を完成し、引き渡す義務を負う。仕事の完成は、仕事の性質又は特約により請負人が自ら労務を供することを必要とする場合のほか、第三者を使用し、又は下請負に出すこともできる。仕事の目的物に瑕疵があるときには、請負人は担保責任を負う。

委任・請負のいずれにおいても、職務著作に当たらない限り、当該ソフトウエアの著作権は開発者たる乙に帰属します。

不適切



職務著作に該当すれば、甲が著作者となるかもしれませんが……

適切

※著作権法15条
1 法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づき
その法人等の業務に従事する者が
職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、
その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、
その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、
その法人等とする。

2 法人等の発意に基づき
その法人等の業務に従事する者が
職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、
その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、
その法人等とする。



共同著作物の著作権その他共有に係る著作権については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持ち分を譲渡し、又は質権の目的とすることができません(著作権法65条1項)。

適切



理想的な契約書は、可能な限り事前に全ての条件が規定されているものです。誠実協議条項のような無意味な条項は、欧米ではかえって実務能力を疑われることもあります。

適切

2012年5月10日木曜日

著作権と所有権等との関係、著作権の「侵害」を問う問題

【問題】
出版社であるX社では,他の出版社であるY社が発行しているある文献に依拠して新たな文献を執筆・発行することを企画している。この企画に関する法務部の部員のア〜ウの発言を比較して,最も適切と考えられるものはどれか。

ア 「出版社Y社の文献は,創作的表現を欠くために著作物性がないことが確実であれば,その文献に依拠してそれと極めて類似した文献を執筆・発行しても法律的な問題が発生することはない。」

イ 「出版社Y社の出版物の中には『Z美術館所有』という出所表示がついた平安時代の絵巻物の写真が含まれている。従って,この写真をZ美術館に許諾を得ないで転載するとZ美術館の所有権侵害の問題になる。」

ウ 「出版社Y社の文献の全体的な構成がありふれたものであったとしても,その部分である具体的表現に創作性が認められる場合には,その創作的表現をそのまま利用してしまうと著作権侵害を免れないから注意しなくてはならない。」

(23年7月実施)


【解説】
著作権と、所有権等他の権利との関係、そして著作権の「侵害」とは何かを問う問題です。


著作権法で問題がなくても、不正競争防止法や、民法の不法行為の問題が考えられます。

不適切


所有権が問題になるのは絵巻物の原作品自体についてであり、その写真の著作権とは別個の権利であるから、所有権を侵害することはありません。

不適切


著作権法が保護しているのは、創作的な「表現」です。
その「表現」に創作性が認められれば、保護されます。
全体的な構成は、著作権法が保護しているものではありませんので、ここでは考慮する必要はありません。

適切

2012年5月9日水曜日

著作権法46条(公開の美術の著作物等の利用)についての問題

【問題】
次の文章は,バス車体絵画事件(東京地判平成13年7月25日)の判決文の一部である。空欄[1]〜[3]に入る語句の組合せとして,最も適切と考えられるものはどれか。
美術の著作物の原作品が,不特定多数の者が自由に見ることができるような屋外の場所に[1]設置された場合,仮に,当該著作物の利用に対して著作権に基づく権利主張を何らの制限なく認めることになると,一般人の[2]を過度に抑制することになって好ましくないこと,このような場合には,一般人による自由利用を許すのが社会的慣行に合致していること,さらに,多くは[3]の意思にも沿うと解して差し支えないこと等の点を総合考慮して…(以下,略)
ア [1]=一時的に [2]=行動の自由 [3]=一般人
イ [1]=一時的に [2]=表現の自由 [3]=著作者
ウ [1]=恒常的に [2]=表現の自由 [3]=一般人
エ [1]=恒常的に [2]=行動の自由 [3]=著作者
(23年7月実施)

【解説】
著作権法46条(公開の美術の著作物等の利用)についての問題です。
問題文は、判決文の「争点に対する判断」の中で、法46条柱書の趣旨について述べられた部分です。
まあ、判決文を見れば、答えはすぐに分かってしまうのですが……
まずは、法46条を見て、それぞれの空欄に入るべき言葉を考えてみましょう。
「美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一  彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二  建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三  前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四  専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合」
本条において「利用することができる」とされている著作物は、大前提として、「屋外の場所に恒常的に設置されている、公開の美術または建築の著作物」です。
→従って、[1]には「一時的に」は入らず、「恒常的に」が入ることになります。
本条の対象となる著作物は、自由に写真を撮ったり、自分の商品にマークとして入れたり、その他の利用ができるのです。
(ただし、公開されているからといって、絵画を写真に撮ってきれいに印刷し、観賞用として販売するような場合は、4号に該当し、権利侵害となります)
そのような著作物がある場所は、観光名所になることが多いでしょう。
そこで写真撮影したり、ブログに掲載したりするのが違法となっては、非常に面倒です。
見に行った人の、行動の自由が制限されることになりますね。
→ということで、[2]には「表現の自由」ではなく、「行動の自由」が入ります。
そもそもそんな公開の場所に、著作物を恒常的に設置するということは、著作者としてもある程度自由に利用されることを想定しているはずです。
勝手に使われたくないのなら、こういう公開設置をしなければいいのですから。
→[3]には、「一般人」ではなく、「著作者」が入ります。
 日本語から言っても、[3]の位置に入るのが「一般人」ではおかしいですけれどね。

[2]は微妙なので、[1]と[3]が分かれば、答えは出ます。
こう考えていくと、本判決(バス車体絵画事件)の内容を知らなくても正答を導き出すことはできますが、知っていたら、さらに簡単です。
有名な判決の内容を知っていると、試験の時には楽になることが多いでしょう。
日頃から『判例百選』等の判例集に目を通しておくと、合格の確率はグッと高まるはずです。

2012年5月8日火曜日

「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」についての問題

【問題】
ベンチャー企業X社は、インターネットを利用して、動画やコンピュータプログラムを有料で配信するビジネスを行うこととした。その際の法的問題を検討するにあたり、平成19年3月に経済産業省から発表された「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(平成20年8月改訂)の内容を確認することとした。X社の法務担当者のア〜エの発言を比較して、この準則に照らして最も適切と考えられるものはどれか。

ア 「サイトの利用規約の法的拘束力に関してだが、利用者が利用規約に同意の上で取引を申し込んだのであれば、利用規約の内容は利用者とサイト運営者との間の取引契約の内容に組み込まれることにより拘束力を持つと考えられる。他方、利用規約を取引実行の条件として必ず同意クリックを必要とするのは非現実的である。従って、ウェブサイト中の利用者が必ず気付くと考えられる場所に利用規約が掲載されていれば(例えば、取引の申込画面にサイト利用規約へのリンクが目立つ形で張られているなど)、利用者は利用規約には拘束されることになる」

イ 「サイトの利用規約の表題であるが、『ご利用にあたって』という表題にすると法的拘束力が弱いため、『利用規約』あるいは『利用規則』とすべきである。これにより、法的拘束力が認められやすくなる」

ウ 「動画ファイルのダウンロード希望者による申込に対し、自動返信メールにおいて、承諾の意思表示が別途なされることを明記した場合、例えば『本メールは受信確認メールであり、承諾通知ではありません。改めて正式な承諾通知をお送りします。』といったように、契約申込への承諾が別途なされることを明記した場合であっても運営者側が、あえて自動返信の仕組みを利用して応答している以上、承諾通知に該当し、少なくとも契約は成立していると考えられる」

エ 「情報財が著作権法で保護されている場合、同法の規定により著作権が制限されている部分(著作権法第30条から第49条まで)が存在する。この部分は著作権法によってユーザーに著作物の利用が認められているものであるが、基本的には任意規定であり、契約で利用を制限することが可能であるとの解釈がある。しかしながら、上記規定について情報財の利用を制限するようなライセンス契約の条項は無効であるとの解釈も存在している。この解釈によれば、例えば、私的複製やバックアップコピーを完全に禁止する条項が、上記により無効となる可能性がある」

(22年11月実施)



【解説】
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の内容を知っているかどうかの問題です。
ただし、本準則は毎年のように改訂されており、本問が出題された時と、現在とでは、内容が異なります。
経緯は→ http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/index.html#01

本問はあくまで「平成20年8月改訂」の準則に則っての問題であることに注意が必要です。

平成20年8月改訂版
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/080829jyunsoku.pdf

そんな問題を今さら詳しく解説しても……と思いますので、現在最新の「平成23年6月改訂」準則ではどうなっているかも、併せて記述します。



「ウェブサイトの利用規約の有効性」についての問題です。
「平成20年8月改訂版」では、次のように記されていました。

=======================
1.考え方
物品の販売やサービスの提供などの取引を目的とするウェブサイトについては、利用者がサイト利用規約に同意の上で取引を申し込んだのであれば、サイト利用規約の内容は利用者とサイト運営者との間の取引契約の内容に組み込まれることにより拘束力を持つ。
   ↓
サイト利用規約への同意クリックなど利用者からのサイト利用規約への同意の意思表示が確認されない限り取引が実施されない仕組みが構築されていない場合には、サイト利用規約に法的効力が認められない可能性が残る。
=======================

また、米裁判例では、同意クリック等の利用者の同意を確認できる仕組みを要件としたものがあることも、紹介されています。

不適切

※では、「平成23年6月改訂版」ではどうなっているでしょうか。
 まさにこれが、改訂された大きな論点の一つです。
=======================
(1)ウェブサイトの利用規約の有効性に関する論点の修正
◆改訂前準則の「ウェブサイトの利用規約の有効性」の項目は、「インターネット取引はまだ新しい取引形態であり、現時点でウェブサイトに掲載されたサイト利用規約に従って取引を行う商慣行が成立しているとは断定できない」との前提で記述されていたが、ウェブサイトに掲載されたサイト利用規約に従って取引を行うことは、近年より一般的になってきていることから、そのような利用規約が契約の一部として有効となるための要件について改めて検討して記述した。特に、現在の取引の実態を踏まえ、必ずしも利用規約への同意クリックの仕組みが無くても、利用規約の内容が契約に組み入れられる場合があることを明示的に記述することとした。
また、項目名を「ウェブサイトの利用規約の有効性」から「ウェブサイトの利用規約の契約への組入れと有効性」に修正し、利用規約の契約への組入れの問題と規約の条項の有効性の問題との区別を明確にした。

(準則 i.23 頁)
…ところで、インターネットを利用した電子商取引は今日では広く普及しており、ウェブサイトにサイト利用規約を掲載し、これに基づき取引の申込みを行わせる取引の仕組みは、少なくともインターネット利用者の間では相当程度認識が広まっていると考えられる。従って、取引の申込みにあたりサイト利用規約への同意クリックが要求されている場合は勿論、例えば取引の申込み画面(例えば、購入ボタンが表示される画面)にわかりやすくサイト利用規約へのリンクを設置するなど、当該取引がサイト利用規約に従い行われることを明示し且つサイト利用規約を容易にアクセスできるように開示している場合には、必ずしもサイト利用規約への同意クリックを要求する仕組みまでなくても、購入ボタンのクリック等により取引の申込みが行われることをもって、サイト利用規約の条件に従って取引を行う意思を認めることができる。
=======================
したがって、現在なら、アの選択肢も「適切」と考えていいでしょうね。



同じく、「ウェブサイトの利用規約の有効性」についての問題です。
「平成20年8月改訂版」を見てみましょう。

=======================
なお、サイト利用規約には、例えば「利用条件」、「利用規則」、「ご同意事項」、「ご利用あたって」など、サイトごとに様々な表題が付されているが、サイト利用規約につきサイト側が付している表題は特段の事情がない限り効力に影響しない。
=======================

これは簡単ですね。
表題は、特段の事情がない限り、効力に影響しません。
表題によって法的拘束力が異なるというのは、常識的に考えてもおかしいと思うはずです。
民法における契約の基本は、諾成契約(当事者の合意だけで成立する契約←→要物契約)であることを考えても、感覚的に分かるのではないでしょうか。

不適切

※「平成23年6月改訂版」でも、変化はありません。



「契約の成立時期」の問題です。
「平成20年8月改訂版」では、

=======================
電子メール等の電子的な方式による契約の承諾通知は原則として極めて短時間で相手に到達するため、隔地者間の契約において承諾通知が電子メール等の電子的方式で行われる場合には、民法第526 条第1項及び第527 条が適用されず、当該契約は、承諾通知が到達したときに成立する(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(以下「電子契約法」という。)第4条、民法第97条第1項)。
なお、「本メールは受信確認メールであり、承諾通知ではありません。在庫を確認の上、受注が可能な場合には改めて正式な承諾通知をお送りします。」といったように、契約の申込への承諾が別途なされることが明記されている場合などは、受信の事実を通知したにすぎず、そもそも承諾通知には該当しないと考えられるので、注意が必要である。
=======================

と書かれています。
ちなみに民法第97条1項とは、「隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」という条文です。

不適切

※「平成23年6月改訂版」でも、変化はありません。



「契約中の不当条項」の問題です。
「平成20年8月改訂版」を見てみます。

=======================
著作権法第30条から第49条までの規定は、法律で著作権を部分的に制限している(すなわちユーザーに対してその部分の利用を認めている)規定であるが、これらの規定は基本的には任意規定であり、契約で制限することが可能であるとの解釈がある。しかしながら、ユーザーに対してそれらの規定よりも利用を制限しているライセンス契約の条項は無効であるとの解釈も存在している。

(著作権法上の権利制限規定がある部分についてユーザーの利用制限を課している契約条項は無効であるとの解釈をとった場合、不当条項に該当する可能性がある条項例)
・私的複製やバックアップコピーを完全に禁止する条項


情報財が著作権法で保護されている場合、同法の規定により著作権が制限されている部分(著作権法第30条から第49条まで)が存在する。この部分は著作権法によってユーザーに著作物の利用が認められているものであるが、基本的には任意規定であり、契約で利用を制限することが可能であるとの解釈がある。しかしながら、上記規定について情報財の利用を制限するようなライセンス契約の条項は無効であるとの解釈も存在している。この解釈によれば、例えば、私的複製やバックアップコピーを完全に禁止する条項が、上記により無効となる可能性がある。
=======================


適切

※「平成23年6月改訂版」でも、変化はありません。