2012年4月28日土曜日

裁定制度の問題

【問題】
テレビ局であるX社では、開局50周年記念に、X社で制作した往年の人気ドラマAをビデオグラム化することになった。ところが、ビデオ担当スタッフから1998年10月5日放送のスペシャルドラマ(1話)についてアーカイヴデータの記録が見当たらず、いくつかの権利処理ができないと報告があった。

ドラマAの出演者の中で所在が不明で連絡がとれない者が二人いる。裁定制度の利用に関するビデオ担当スタッフのア〜エの発言を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 「裁定制度は、過去の放送番組等のコンテンツをインターネットで二次利用する場合の制度なので、ビデオグラム化については適用されないよね」

イ 「裁定制度は、著作権者を対象としているので、著作隣接権者である出演者には適用されないよね」

ウ 「裁定申請の際に供託金を納付すれば、裁定結果が出る前であっても暫定的な利用ができるよね」

エ 「改正によって、裁定申請の際に相当な努力を払って権利者を探す必要がなくなったから以前より利用しやすくなったね」

(22年11月実施)



【解説】
裁定制度の問題です。
本検定においては、けっこう、出題されやすい分野です。要注意。


裁定制度に、そのような制限はありません。

不適切


平成21年改正により、著作隣接権者と連絡することができない場合にも、裁定が受けられるようになりました。
(著作権法103条。67条・67条の2を準用)

不適切


平成21年改正により、67条1項の裁定の申請中であっても、一定条件の下、申請者は申請に係る著作物を利用することができるようになりました(著作権法67条の2)。

適切


平成21年改正によって変わったのは、

「著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払ってもその著作権者と連絡することができないとき」
   ↓
「著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払ってもその著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合は

であって、「相当な努力の要件を政令で定めることとしたものの、「相当な努力」が不要になったのではありません。

不適切


2012年4月26日木曜日

テレビドラマをビデオグラム化する際の、音楽の権利処理の問題

【問題】
テレビ局であるX社では、開局50周年記念に、X社で制作した往年の人気ドラマAをビデオグラム化することになった。ところが、ビデオ担当スタッフから1998年10月5日放送のスペシャルドラマ(1話)についてアーカイヴデータの記録が見当たらず、いくつかの権利処理ができないと報告があった。

ドラマA内で使用されている劇伴音楽(ドラマで使用された楽曲)の中で、一つだけ著作権等管理事業者に管理委託されていない楽曲があった。ア〜エの記述を比較して、ビデオ担当スタッフの行為として、最も適切と考えられるものはどれか。

ア インターネットで調べたところ、同じ楽曲について有料ダウンロードサービスをしていたので、楽曲を正規に購入して使用した。

イ ドラマA用に作曲されたオリジナル楽曲なので、制作に関わった音楽出版社に連絡をとり作曲家を探すことにした。

ウ この楽曲はドラマA内で一度しか使われないため、「引用」としてテロップを出すことにした。

エ ドラマA内で使用されている劇伴音楽を調べてみたところ3小節であり、法的に許諾を得る必要がない4小節以内なので、そのまま使用することにした。

(22年11月実施)

【解説】
テレビドラマをビデオグラム化する際の、音楽の権利処理の問題です。


正規に購入したとしても、複製の許諾を得たとは考えにくいため、ビデオグラム化すると複製権の侵害となります。

不適切


作曲家が見つかって許諾を受ければ、問題ありません。

適切


これは「引用」とは言えません。引用については、別の問題のところで、詳しく触れたいと思います。

不適切


「4小節以内は許諾不要」は、法的根拠はありません。
これは、まったくのデマと考えて、差し支えありません。

不適切

2012年4月25日水曜日

実演家の、放送に関する権利の問題2

【問題】
テレビ局X社は、ドラマ番組Aの放送を企画している。また、その放送直後には見逃し視聴としてインターネットによるオンデマンド配信を予定している。デジタル事業部のスタッフとしては番組制作と同時にインターネット配信の権利処理を行っておきたい。ア〜エの項目を比較して、インターネット配信を行う場合に権利処理が必要な権利の組合せとして、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 脚本家の翻案権と実演家の自動公衆送信権

イ 脚本家の自動公衆送信権と実演家の送信可能化権

ウ 脚本家と実演家の自動公衆送信権

エ 脚本家と実演家の追加報酬請求権

(23年7月実施)

【解説】
実演家に認められている、放送に関する権利にどういうものがあるか、という問題です。
前に紹介した問題と、内容は全く同じで、選択肢アとウが入れ替わっただけです。


実演家には自動公衆送信権は認められず、送信可能化権のみを有します(著作権法92条の2)。
さらに、元のドラマをそのままインターネット配信する際には、ドラマ自体が変更されているわけではないので、脚本家の翻案権は問題になりません。脚本の上演は「複製」に当たりますから(著作権法2条1項15号イ)、問題になるのは複製権です。

不適切


ア前段と同じです。

適切


イと同じです。
このことを覚えてしまうのが、いちばん手っ取り早いでしょう。

不適切


「追加報酬請求権」とは、著作権法上認められた権利ではありません。

不適切

2012年4月24日火曜日

実演家の、放送に関する権利の問題

【問題】
テレビ局であるX社では、人気俳優である甲の芸能生活30周年を記念して、甲が出演している作品のうち、X社が制作した過去のテレビドラマを記念DVDとしてビデオグラム化して発売する予定である。

テレビ局X社は、DVDの発売にあわせて、30周年特集番組Aの放送を企画している。また、その放送直後には見逃し視聴としてインターネットによるオンデマンド配信を予定している。デジタル事業部のスタッフとしては番組制作と同時にインターネット配信の権利処理を行っておきたい。ア〜エの項目を比較して、インターネット配信を行う場合に権利処理が必要な権利の組合せとして、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 脚本家と実演家の自動公衆送信権

イ 脚本家の自動公衆送信権と実演家の送信可能化権

ウ 脚本家の翻案権と実演家の自動公衆送信権

エ 脚本家と実演家の追加報酬請求権

(22年11月実施)

【解説】
実演家に認められている、放送に関する権利にどういうものがあるか、という問題です。


実演家には自動公衆送信権は認められず、送信可能化権のみを有します(著作権法92条の2)。
このことを覚えてしまうのが、いちばん手っ取り早いでしょう。

不適切


アと同じです。

適切


アと同じです。
さらに、元のドラマをそのままインターネット配信する際には、ドラマ自体が変更されているわけではないので、脚本家の翻案権は問題になりません。脚本の上演は「複製」に当たりますから(著作権法2条1項15号イ)、問題になるのは複製権です。

不適切


「追加報酬請求権」とは、著作権法上認められた権利ではありません。

不適切

2012年4月20日金曜日

テレビドラマのビデオグラム化に関する実演家の権利の問題

【問題】
テレビ局であるX社では、人気俳優である甲の芸能生活30周年を記念して、甲が出演している作品のうち、X社が制作した過去のテレビドラマを記念DVDとしてビデオグラム化して発売する予定である。

X社がDVDの発売を企画した理由に関するX社の社員のア〜エの発言を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 「甲の権利は、いわゆるワンチャンス主義で制限され、自由に使えるからね」

イ 「他局で制作された甲の出演したドラマの著作権について、他局から許諾を受けられたから大丈夫だよ」

ウ 「甲は、当社と出演時に専属契約を結び、現在も当社に権利があるからね」

エ 「甲の許諾も得られたし、甲の出演したドラマを制作したのは当社だからね」

(22年11月実施)



【解説】
テレビドラマのビデオグラム化に関する実演家の権利の問題です。

放送をビデオグラム化する際、俳優(実演家)の著作隣接権や、素材(音楽等)の著作権は、よく問題になっています。
本検定でも、問われる可能性が極めて高いAランク問題です。

まず、「ワンチャンス主義」とは何か、まとめておきましょう。
文化庁が公開しているマニュアル、テキストには、次のように書かれています。

*   *   *   *   *
演奏や上演を著作権法上は「実演」といい、演奏や上演をする人を「実演家」といいます。
著作権法上、実演家の了解を得て映画の著作物(劇場上映用以外の映像作品も含みます。)に録音・録画された実演について、実演家はその後の利用に関する権利が原則として制限されています。したがって、最初に録音・録画するときの契約が大変重要になってきます。最初の1回の契約でその後の実演の利用までを念頭においた契約条件を決めておく必要があるという意味で、「ワンチャンス主義」といわれることがあります。
「誰でもできる著作権契約マニュアル」
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/keiyaku_manual/2_2_2.html

「映画の著作物に録音・録画された実演」の場合,俳優などの実演家の了解を得て録音・録画された実演は,原則として,権利がありません(第91条第2項,第92条第2項,第92条の2第2項)。
文化庁長官官房著作権課『著作権テキスト 〜 初めて学ぶ人のために 〜』平成21年度
*   *   *   *   *

つまり、実演家が一度録音・録画を許諾したならば、その実演が収録された録音・録画物を複製することに対し、権利を及ぼすことができない(=イヤと言えない)のです。
ではテレビドラマはどうなのか。
出演時に、実演家と制作側が、どういう契約を交わしているのかが問題になります。


テレビドラマは、一般に録音・録画の許諾を受けず、放送の許諾だけを得ています(放送のための録画はOK。著作権法93・94条)。ビデオグラム化するには、録音・録画の許諾が、別途必要になってきます(放送はワンチャンス主義によって、可能です)。

不適切


別のドラマについての権利と、本問ドラマについての権利は別です。当たり前ですね。
ドラマについて著作権の許諾を得られたとしても、甲の、実演家としての著作隣接権の許諾は得ていませんから、「大丈夫」ではありません。

不適切


「専属契約」といっても、その内容は不明ですし、職務著作と言える(?)かどうかは検討の余地がありますので、「最も適切」とは言えないでしょう。

不適切


ドラマを制作した時点で、その素材についての著作権処理は解決していると考えられ、さらに実演家たる甲の許諾も得ているので、問題ないと考えられます。

適切

2012年4月18日水曜日

テレビドラマをビデオグラム化する際の著作隣接権の問題

【問題】
テレビ局であるX社では、人気俳優である甲の芸能生活30周年を記念して、甲が出演している作品のうち、X社が制作した過去のテレビドラマを記念DVDとしてビデオグラム化して発売する予定である。

過去に放送されたテレビドラマのDVD制作にあたり、ア〜エの項目を比較して、X社が新たに許諾を得る必要のないものとして、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 日本脚本家連盟に著作権を信託している脚本家が書いたドラマの脚本に関する権利

イ ドラマで使われている明治時代(1868年〜1912年)に撮影されて公表された風景写真に関する権利

ウ ドラマに出演し、テレビ放送を許諾した俳優の実演に関する権利

エ ドラマで主題歌として使用している市販CDに収録されている曲に関する権利

(22年11月実施)

【解説】
ここから、主に著作隣接権(実演家の権利)の問題になります。

まず、「ビデオグラム」とは何でしょうか。
JASRACの規定によれば、「ビデオテープ、ビデオディスク、DVDなどに映像を連続して固定したものであって、映画フィルム以外のものをいう」とあります。
一般にはあまり使いませんよね。


著作権法2条1項15号に、次のように規定されています。

「複製──印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物──当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。」

脚本は、これを上演して録画することが、「複製」になるのです。
ということは、本問脚本家の複製権につき、許諾が必要になります。

不適切


写真の著作物の保護期間は、現行著作権法施行時は"公表後"50年とされていました。
それが平成8年(1996)改正により、著作者の"死後"50年となりました。
しかし旧著作権法では、発行後10年であり、暫定的に13年まで延長されはしましたが、いずれにしろ昭和31年(1956)以前に発行された写真の著作権は、消滅しています。

適切


著作権法93条は、「放送のための固定」として、次のように規定しています。

「実演の放送について第92条第1項に規定する権利を有する者の許諾を得た放送事業者は、その実演を放送のために録音し、又は録画することができる。ただし、契約に別段の定めがある場合及び当該許諾に係る放送番組と異なる内容の放送番組に使用する目的で録音し、又は録画する場合は、この限りでない。
 2  次に掲げる者は、第91条第1項の録音又は録画を行なつたものとみなす。
  一  前項の規定により作成された録音物又は録画物を放送の目的以外の目的又は同項ただし書に規定する目的のために使用し、又は提供した者」

92条1項とは何かというと、実演家の「放送権及び有線放送権」を規定した条文です。

「実演家は、その実演を放送し、又は有線放送する権利を専有する」

つまり実演家は、放送権を有しています。
第三者が無断で放送を行うと、放送権の侵害になります。

本問ではテレビ放送を許諾していますから、テレビ局は「第92条第1項に規定する権利を有する者の許諾を得た放送事業者」になります。
テレビ局は、放送のために録画することはできます。

ところが、その「放送のための録画」を、「放送の目的以外の目的」、例えばビデオグラム化するという目的のために使用・提供すると、"91条1項の録画"に当たるのです。

では"91条1項の録画"とは何か。
91条には、「録音権及び録画権」として、

「実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する」

と規定されています。
従って、実演家が専有する録画権を、テレビ局X社が行使(→無許諾だから侵害)することになるのです。

不適切


著作権法91条は、実演家の「録音権及び録画権」として、次のように規定しています。

「実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。
 2 前項の規定は、同項に規定する権利を有する者の許諾を得て映画の著作物において録音され、又は録画された実演については、これを録音物(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)に録音する場合を除き、適用しない。」

本問で問題となるのは、2項でしょう。
これは、実演家の録音権が及ばない場合が規定されています。
映画の著作物において録音された実演を、録音物に録音する場合は、1項が適用されます。
つまり無許諾では行えない、ということです。
ただし音を専ら映像とともに再生することを目的とするものは除かれていますから、ビデオグラム化する場合は除かれる(=無許諾で行える)ようにも読めます。

ところが、本問で問題になっている権利は、「曲に関する権利」なのです。
ということは、著作隣接権ではなく、著作権が問題となります。

たとえこのCDに収録されている局をドラマで主題歌として使用することを許諾されていたとしても、それをビデオグラム化(=複製。2条1項15号)することまで許諾されているかどうかは、本問からは明らかではありませんが、通常はなされていないと考えるべきでしょう。

著作権につき、許諾を得る必要がない場合とは、30条以下に規定されている「著作権の制限」規定に当てはまるかどうかです。
私的使用や引用、非営利利用等、どうやら該当するものはなさそうです。

不適切

2012年4月6日金曜日

著作権侵害における「依拠」の要件についての問題

【問題】
Y社に対して著作権侵害訴訟を提起した新聞社X社の法務担当者のア〜エの発言をを比較して、最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 「われわれとしては、Y社の複製物がわが社の著作物に『依拠』して作成されていることを主張・立証しなければならないね。」

イ 「『依拠』というのは、条文には明記されていないものの、著作権は相対的独占権であるがゆえに要求される要件だね。」

ウ 「依拠性は、要はY社がわが社の著作物の存在を知っていたという事実によって立証できればよいが、このような主観的事実を立証するのは相当に難しいね。」

エ 「依拠性については、Y社がわが社の著作物にアクセスし得る十分な蓋然性があるというだけでは足りず、実際にアクセスした事実を立証する必要があるね。」

(22年11月実施)


【解説】
著作権(特に複製権・翻案権)の侵害に際し問題となる、「依拠」の要件についての問題です。


依拠性は、著作権侵害を主張する者が立証責任を負います。

適切


著作権は、結果として既存の著作物と同じ著作物が創作されたとしても、既存の著作物とは独自に創作されたものであれば、独自の著作物として保護されるという、相対的独占権です。
ここで「相対権」と「絶対権」とは何でしょうか。
『法律学小辞典』を調べると、次のような意味だと書かれています。

相対権……特定の人に対してしか主張できない権利
絶対権……権利者以外の誰に対してでも法律上の主張ができる種類の権利


絶対権として代表的なものに、所有権があります。
これは誰に対してでも主張できます。
そして特許権も、絶対権と言えます。

では著作権はどうでしょうか。
たとえ同じ著作物ができたとしても、既存著作物に依拠して作られたものでなければ、それぞれが独自の著作物として保護されます。
逆に言えば、既存著作物に依拠して作られた著作物は、著作権侵害が問題になる、ということです。
このように、著作権は相対権なのです。

適切


依拠性は、相手方の主観的事実を問題とするものであるため、多くの場合、間接事実から推認せざるをえません。
つまり、「独自に創作したか」「依拠して複製・翻案したか」は、その既存著作物を知っていたかどうかという主観に左右されるのです。
この主観は、基本的に、外見から分かるものではないために、「おまえ知っていただろう!」と立証するのは、難しいものです。

適切


ウと同じことが問題になります。「実際にアクセスした事実」を立証するのは、事実上不可能というべきでしょう。そこで、既存著作物に「アクセスし得る十分な蓋然性」があれば、依拠を認めてよいといわれています。

不適切