2012年6月23日土曜日

著作物裁定制度を利用する際の準備作業の問題

【問題】
映像制作会社X社では,劇場公開用映画を製作することになり,X社の企画部の部員甲がその企画立案を行っていたところ,偶然とある小説を発見し,これを原作として映像製作を進行したいと考えた。しかしながら,甲が原作使用権取得のために著作権者を調査したところ,作家はすでに亡くなっており,その著作権継承者の連絡先も不明であった。またこの書籍を発行した出版社も10年ほど前に倒産しており,現在では手掛かりすら掴めない状況であることが判明した。クランクイン予定の日程が迫る中,企画をあきらめきれない甲は映像化実現の可能性について,X社の著作権部の担当者乙に相談したところ,乙は「著作権権利者不明の場合の裁定制度」を利用することを提案した。

裁定制度を利用することになった場合,乙が社内各担当者に準備を指示しておかなければならない内容として,ア〜エの記述を比較して最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 裁定が受けられるとしても,申請からは相当の時間を要するので,クランクインの時期を含めた,全体の製作のスケジュールを修正するよう指示する。

イ 一般的な原作使用料の慣行に照らし担保金(あるいは補償金)を製作予算に組み込んでおくよう指示する。

ウ 裁定申請を行ったのち,文化庁長官の裁定が行われる前であっても「申請中利用」の制度を利用して製作作業を進行することはできるので,この制度を利用するかどうかの方針を決定しておくよう指示する。

エ 裁定申請を行った場合,その許諾相談窓口は文化庁に一本化しなければならないので,権利者の調査を即刻に中止し,万一連絡がとれた場合も交渉は一切行わないよう関係部署に徹底するよう指示する。

(23年7月実施)


【解説】
著作物裁定制度を利用する際の準備作業の問題です。
裁定制度については、前に詳しく書きましたので、ここでは省略します。
詳細は、次の『裁定の手引き』をお読みください。
http://www.bunka.go.jp/1tyosaku/c-l/pdf/tebiki.pdf


文化庁では、手続きに必要な標準処理期間を3か月としています(ただし、あくまでも目安であって、最近の実績では1か月程度で処理している例も多いそうです)。

適切


補償金の額は、申請のあった著作物等を利用する場合の一般的な利用料金等を参考に、文化庁長官が決定します。著作権法67条では、「通常の使用料の額に相当する」額とされています。
加えて、手数料(1申請あたり13,000円)も必要です。

適切


著作権法の平成21年改正により、「申請中利用制度」ができました。これは、
「文化庁に裁定申請を行い、文化庁長官の定める担保金を供託すれば、著作者や実演家等が著作物等の利用を廃絶しようとしていることが明らかな場合を除き、裁定の決定前であっても著作物等の利用が開始でき」る、
という制度です。
この制度を利用することによって、裁定の決定を待って利用を開始する場合と比べて、早期に著作物等の利用を開始することができるようになりました。

適切


新設された「申請中利用制度」では、裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間に(つまり裁定を申請して結論が出るまでの間に)、著作権者と連絡をすることができるに至った場合、
「当該担保金の額が……著作権者が弁済を受けることができる額を超えることとなつたときは……その全部又は一部を取り戻すことができる」(著作権法67条の2第7項
とされています。
ということは、権利者との直接交渉によって、支払う額を担保金以下に抑えることができるかもしれません。権利者の調査を中止し、一切の交渉を行わないとなると、その可能性を排除してしまうことになりますから、払わなくてもよいお金を払ってしまう結果になりかねません。それはもったいないことですね。

不適切

2012年6月20日水曜日

著作物の裁定制度の問題

【問題】
映像制作会社X社では,劇場公開用映画を製作することになり,X社の企画部の部員甲がその企画立案を行っていたところ,偶然とある小説を発見し,これを原作として映像製作を進行したいと考えた。しかしながら,甲が原作使用権取得のために著作権者を調査したところ,作家はすでに亡くなっており,その著作権継承者の連絡先も不明であった。またこの書籍を発行した出版社も10年ほど前に倒産しており,現在では手掛かりすら掴めない状況であることが判明した。クランクイン予定の日程が迫る中,企画をあきらめきれない甲は映像化実現の可能性について,X社の著作権部の担当者乙に相談したところ,乙は「著作権権利者不明の場合の裁定制度」を利用することを提案した。

ア〜エの項目を比較して,裁定制度の利用申請を行うにあたり,確認しておかなければならない事項として,最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 裁定申請の対象となるものは,「すでに公表が行われた著作物」であるので,この小説の発行形態が「公表」にあたるものであるかどうかの確認

イ 裁定申請は,「相当な努力を払っても権利者と連絡することができない場合」であることが前提条件なので,X社の企画部の部員甲の連絡先の調査が「相当の努力」にあたるものであるかどうかの確認

ウ 海外での利用を行う場合は,担保金(あるいは補償金)が対象国ごとに設定されるので,劇場公開とそれに続くビデオグラム化の海外展開予定状況の確認

エ 著作者人格権は裁定の対象に含まれないので,原作者の同一性保持権を侵害しない使い方であるかどうかの確認

(23年7月実施)


【解説】
著作物の裁定制度の問題です。
通常、それほど利用は多くない制度だと思うのですが、知的財産管理技能検定においては、頻出の、重要事項です!

著作権法67条から70条は、
「第八節 裁定による著作物の利用」
を定めています。

「裁定制度」とは、何でしょうか?
概要が、文化庁で次のように説明されています。

他人の著作物や実演(歌手の歌唱や演奏、俳優の演技など)、レコード(CDなど)、放送番組または有線放送番組を利用(出版、DVD販売、インターネット配信など)するときには、「著作権者」や「著作隣接権者」の了解を得ることが必要になります。
しかし、権利者の了解を得て利用しようとしても、「著作権者が誰だか分からない」、「著作権者がどこにいるのか分からない」、「亡くなった著作権者の相続人が誰でどこにいるのか分からない」、「過去に放送された番組に出演した俳優がどこにいるのか分からない」等の理由で了解を得ることができない場合があります。
このような場合に、権利者の了解を得る代わりに文化庁長官の裁定を受け、著作物等の通常の使用料額に相当する補償金を供託することにより適法にその著作物等を利用することができるのが本制度です(法第67条)。

※出典: 文化庁の説明ページ
「著作権者不明等の場合の裁定制度」
http://www.bunka.go.jp/1tyosaku/c-l/index.html


ここは、平成21年の著作権法改正において変更があった条項ですので、要注意です。
具体的には、以下の3点です。
  • 著作隣接権者が不明の場合でも、裁定制度を利用できるようになった
  • 裁定の申請から処分を受けるまで(結果が出るまで)の間に、担保金の供託によって当該著作物を利用できるようになった
  • 67条の「相当な努力」について、次のように具体的に定められた
権利者の氏名や住所等の権利者と連絡するために必要な情報(以下「権利者情報」という。)を得るために以下のすべての措置をとり,かつ,それによって得られた権利者情報等に基づき権利者と連絡するための措置をとったにもかかわらず,連絡ができなかった場合
  1. 広く権利者情報を掲載している名簿,名鑑,検索サイト等を閲覧すること
  2. 広く権利者情報を保有している著作権等管理事業者,出版社,学会等に照会すること
  3. [1]日刊新聞紙への掲載又は[2]社団法人著作権情報センターのウェブサイトへ30日以上の期間継続して掲載することにより,公衆に対して権利者情報の提供を求めること


改正の概要は、次のページにまとめられています。
「平成21年通常国会 著作権法改正等について」
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/21_houkaisei.html


これらを踏まえたうえで、本問の解説をしていきます。
まず著作権法67条(著作権者不明等の場合における著作物の利用)1項の条文を見ておきましょう。

公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払つてもその著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合は、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により利用することができる。



公表またはそれに準ずることが要件の一つになっていますので、「公表」されているかどうかの確認は大切です。

適切


「相当な努力」を払ったことが要件になっていますが、その「相当な努力」とはどういうものか、上記のとおりに定められましたので、これに当てはまるかどうかの確認は、大切です。

適切


海外における著作物の利用については、原則として我が国の著作権法の効力が及ばないので、裁定制度の適用を受けることはできません。

不適切


裁定の対象になるのは、著作(財産)権と著作隣接権です。著作者人格権は含まれませんので、注意してください。もし人格権にまで裁定制度の適用を認めてしまうと、人格権の趣旨が損なわれてしまうでしょうね。

適切

2012年6月19日火曜日

著作物の保護期間(戦時加算)についての問題

【問題】
X社では,チェコの有名小説家甲の書籍にあるイラストのキャラクターのアニメーションを日本で制作することを企画している。そのイラストは小説家自身が描いたものであり,小説家甲はすでに1942年に死亡している。その後,2004年にチェコが欧州連合に加盟した結果,同国の著作権の存続期間が延長され,現在小説家甲の著作物は保護の対象となっている。この著作物の利用に関するア〜ウの記述を比較して,最も適切と考えられるものはどれか。

ア この著作物の権利者であった小説家甲の権利は,チェコの欧州連合への加盟により現在保護の対象となっており,権利元から許諾を得ないで制作することはできない。

イ この著作物の権利は日本ではパブリック・ドメインとなっており,商標権等の他の権利が存在していない場合は,制作するアニメーションに関して何ら許諾を得る必要はなく,また制作したアニメーションは日本国内では自由に利用できると考えられる。

ウ この著作物の権利者であった小説家甲が国籍を有するチェコは日本と平和条約の締結国であるため,戦時加算を考慮せねばならない。よって,わが国でパブリック・ドメインになっているか否かは不明であり,X社のアニメーション制作は権利元から許諾を得る必要がある。

(23年7月実施)


【解説】
著作物の保護期間(戦時加算)についての問題です。


我が国の著作権法においては、イラストの著作権は著作者の死後50年しか保護されないのであるから、1942年に死去したイラストレーターの作品の保護期間は1992年までであり、現在、当該イラストは日本国内においてはパブリックドメインとなっている。
従って、許諾を得ずにアニメを制作することができる。
(ただし、イにあるように、商標権等の他の権利が問題になる場合はある)

不適切


アの反対です。問題文のとおりです。

適切


戦時加算は、最長で4413日(約12年。レバノン)であり、もし適用されれば、考慮しなければならないかもしれない。しかし、チェコは連合国ではないので、適用されない。よって、本問において戦時加算を考慮する必要はない。
[参考判例]
東京地判平成10・3・20 チェコ人ミュシャ絵画の著作物の戦時期間加算事件
http://www.translan.com/jucc/precedent-1998-03-20.html

不適切


※〈参考〉戦時加算の詳細な日数

4413日 レバノン
4180日 ギリシャ
3929日 南アフリカ
3910日 ベルギー
3846日 ノルウェー
3844日 オランダ
3816日 ブラジル
3794日 イギリス
        オーストラリア
        カナダ
        ニュージーランド
        パキスタン
        フランス
        セイロン(現スリランカ)
        アメリカ合衆国

2012年6月13日水曜日

私的複製の例外規定についての問題(違法ダウンロード)

【問題】
ア〜ウの記述を比較して,インターネットを利用した行為についての説明として,最も適切と考えられるものはどれか。

ア インターネット上へ著作権等を侵害してアップロードされた音楽ファイルを,ユーザーがその事実を知りながらダウンロードする行為は,私的使用を目的とする場合であっても,著作権又は著作隣接権の侵害となる。
イ インターネット上へ著作権等を侵害してアップロードされた書籍ファイルを,ユーザーがその事実を知りながらダウンロードする行為は,私的使用を目的とする場合であっても,著作権の侵害となる。

ウ 外国のサーバーに著作権等を侵害してアップロードされた動画ファイルを,ユーザーがその事実を知りながらダウンロードする行為は,私的使用を目的とするものである場合は,著作権又は著作隣接権の侵害とならない。

(23年7月実施)


【解説】
私的複製の例外規定についての問題です。
これは、平成22年1月施行の、著作権法改正で設けられた規定です。
このような、改正された部分は、極めて重要です。

著作権法第五款「著作権の制限」にある、30条(私的使用のための複製)では、次のように定められています。

著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

一 (条文略。レンタルビデオ店の店頭などにある自動ダビング機を使ってコピーする場合)
二 (条文略。コピーガードを外したり、外された海賊版を、そうだと知ってコピーする場合)
三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

この「三号」が、新たな規定です。


30条1項柱書は、「次に掲げる場合を除き……複製することができる」と定められています。
サーバーから自分のコンピュータ等へダウンロードする行為は、「複製」です。
私的複製は、著作権が制限され、自由に行ってよいことになっていますが、では私的複製であっても違法アップロードされたものという事実を知りながらダウンロード(複製)する場合はどうなのか。
従来は、アップロードは違法でしたが、ダウンロードは違法ではありませんでした。
それが、新たに規定された「三号」によって、ダウンロードも違法(=権利侵害行為)となったのです。
(知らないでダウンロードした場合は、侵害行為にはなりません)

適切


書籍ファイルのダウンロードは、「録音又は録画」に当たりません。
よって、「三号」に該当せず、侵害行為にはなりません。

不適切


アと同じ理由です。ダウンロード自体が違法となりましたので、たとえ外国のサーバーからであっても、侵害行為となります。

不適切


2012年6月7日木曜日

著作権の登録制度の問題

【問題】
著作権の登録について,著作権部の部長と部員が会話をしている。ア〜エの会話を比較して,最も不適切と考えられるものはどれか。


部長 「著作権の登録制度の趣旨を述べてみてください。」
部員 「著作権の登録制度は,著作権法上必要とされる一定の推定効果を付与したり,取引安全のための権利変動の状況を公示したりするために設けられた制度です。」


部長 「著作権の登録制度を簡単に説明してください。」
部員 「登録の種類には,実名登録,第一発行年月日登録,創作年月日登録,著作権譲渡の登録があります。登録は,文化庁の登録原簿への登録により行いますが,文化庁長官から指定登録機関として指定された民間団体が登録事務を行っている分野もあります。」


部長 「登録を申請できる人はどんな人ですか。」
部員 「自然人,法人ができます。そして著作権法第2条第6項により,不動産登記などと異なって,著作権法では法人格なき社団も法人に含まれます。従って,業務執行組合員の定めのある製作委員会の場合は,すべて製作委員会名義で登録することができます。」


部長 「著作権の登録制度の問題点を挙げてください。」
部員 「登録を欠いても不都合な事態がほとんど生じないためあまり活用されていません。また諸外国をみても,対抗要件としての登録制度を有する例はほとんどなく,ベルヌ条約の無方式主義に反するおそれがあるという意見もあります。」

(23年7月実施)


【解説】
著作権の登録制度の問題です。


そのとおりです。

適切


プログラムの著作物については、指定登録期間に登録事務を行わせることができます。
(プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律 5条)
現在は、一般財団法人ソフトウェア情報センターのみが指定されています。

適切


映画の著作物の著作権は、通常、映画製作者である映画会社に帰属します。政策委員会に帰属するのではありません。
(実名登録は、団体はできません)

不適切


そのとおりです。

適切

2012年6月6日水曜日

JASRAC信託音楽を編曲利用する際の権利処理の問題

【問題】
レコード会社X社の新人アイドルである甲は,今回,昨年大ヒットしたアーティスト乙の代表曲Aをカバーし,CDをリリースすることになった。レコーディングにあたっては,甲のために編曲(アレンジ)をした上で,実演を収録した。ア〜エの記述を比較して,レコード会社X社及び新人アイドル甲が注意すべき点として,最も適切と考えられるものはどれか。なお,代表曲Aは音楽出版社Y社を通じて,JASRACに信託・譲渡された管理楽曲とする。

ア 代表曲Aについては,JASRACに対し通常の楽曲使用申請をするだけで使用できる。

イ 新人アイドル甲のために編曲(アレンジ)を加えるため,著作権法第27条の編曲権の処理が必要となり,代表曲Aの著作権者である音楽出版社Y社の許諾を得る必要がある。

ウ 代表曲Aに関し,新人アイドル甲のために編曲(アレンジ)を加えるため,アーティスト乙の実演を収録した原盤に係る権利を有するレコード製作者の許諾を得る必要がある。

エ 代表曲Aはアーティスト乙の実演を収録した原盤により大ヒットしたため,編曲(アレンジ)に際しては,実演家であるアーティスト乙の許諾を得る必要がある。

(23年7月実施)


【解説】
JASRACに信託された音楽を編曲して利用する際の権利処理の問題です。
(この問題の解説は、少しあいまいな部分があります。より正確な解説をご存じの方があれば、ご教示お願いいたします)


編曲は翻案に当たります。Aの権利がJASRACに譲渡されたといっても、翻案権はY社に留保されたものと推定される(著作権法61条2項)から、通常の楽曲使用申請では足りません。

不適切


同上

適切


レコード製作者には編曲権は認められていません。

不適切


レコード製作者には編曲権は認められていません。

不適切

※アとイについての別の理由として考えられるのは、
「編曲をすると、同一性保持権の問題が発生しますが、人格権は著作者だけが持っている権利(一身専属性)であるため、JASRACも関与できません」
とも言えそうです。

商品化に際し、ライセンシーの立場での権利処理の問題

【問題】
X社は日本国内においてビデオ作品を中心に製作販売を行う映像製作会社である。このたび人気ロボット漫画作品を原作として実写版のビデオ作品を製作して販売したところ,大ヒットとなり,玩具会社Y社より「劇中に登場するロボットの音が出る玩具を商品化したい」旨の申し入れを受けた。
ア〜エの記述を比較して,商品を実際に企画,製造するためにY社がライセンシーとして権利処理する内容として,最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 契約に特段の定めがない場合,ロボットの各部分の配色は自由に変更できるが,その変更後のロボットが第三者の知的財産権を侵害していないかどうかは確認する必要がある。

イ パッケージに作品出演の俳優の肖像を利用する場合,当該俳優のパブリシティ権の権利処理をしておく必要がある。

ウ この玩具を海外でも販売することが予定されている場合,日本での契約とは別に許諾申請を行わなければならない場合があるので,その予定されている国での商品化権許諾状況や契約条件などを確認しておく必要がある。

エ 商品の広告媒体としてインターネットを利用しようとする場合,その許諾がX社との許諾契約の中に含まれるかどうかを確認する必要がある。

(23年7月実施)


【解説】
今度は、商品化に際し、ライセンシーの立場での権利処理の問題です。


ロボットの配色変更は、原作者・デザイナーの同一性保持権を侵害するおそれがあります。

不適切


そのとおりです。

適切


そのとおりです。

適切


そのとおりです。

適切

2012年6月1日金曜日

著作者人格権侵害に対する回復措置ならびに著作権侵害訴訟の訴訟物の問題

【問題】
空欄[1]〜[2]に入る語句の組合せとして,最も適切と考えられるものはどれか。

著作者人格権が侵害された場合には,著作者の名誉もしくは声望を回復するために,[1]を請求することができる旨が明文に規定されており,この請求は,損害の賠償に代えて又は損害の賠償とともにすることができる。
なお,著作財産権と著作者人格権とはそれぞれ保護法益を異にするものであるため,同一の行為によって著作財産権と著作者人格権が侵害された場合であっても,それぞれについて精神的損害が両立し得るものであるため,両者の賠償を訴訟上併せて請求するときは,[2]を異にする二個の請求が併合されているものと解される。

ア [1]=謝罪広告   [2]=訴訟物
イ [1]=謝罪広告   [2]=請求し得る法的地位
ウ [1]=適当な措置 [2]=請求し得る法的地位
エ [1]=適当な措置 [2]=訴訟物

(23年7月実施)


【解説】
著作者人格権侵害に対する回復措置ならびに著作権侵害訴訟の訴訟物の問題です。

著作権法115条(名誉回復等の措置)を見てみましょう。

著作者又は実演家は、故意又は過失によりその著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者に対し、損害の賠償に代えて、又は損害の賠償とともに、著作者又は実演家であることを確保し、又は訂正その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができる

これを読めば、[1]には「適当な措置」が入ることが分かります。
次に[2]ですが、まず用語の意味を確認しておきます。
有斐閣『法律学小辞典』より)

訴訟物=原告が被告に対して主張する権利・法律関係。
(訴訟上の)請求=原告の被告に対する一定の権利主張とそれに基づく裁判所に対する特定の判決の要求とをいい、狭義には被告に対する権利主張のみをいう。この主張される権利関係を訴訟物と呼ぶ。

実は本問後段は、最高裁昭和61年5月30日第二小法廷判決[モンタージュ写真事件第2次上告審]によって明らかにされた論点です。
(『判例百選』204ページに掲載されています)

判旨は、
「複製権を内容とする著作財産権と公表権、氏名表示権及び同一性保持権を内容とする著作者人格権とは、それぞれ保護法益を異にし、また、著作財産権には譲渡性及び相続性が認められ、保護期間が定められているが、著作者人格権には譲渡性及び相続性がなく、保護期間の定めがないなど、両者は、法的保護の態様を異にしている。したがつて、当該著作物に対する同一の行為により著作財産権と著作者人格権とが侵害された場合であつても、著作財産権侵害による精神的損害と著作者人格権侵害による精神的損害とは両立しうるものであつて、両者の賠償を訴訟上併せて請求するときは、訴訟物を異にする二個の請求が併合されているものであるから、被侵害利益の相違に従い著作財産権侵害に基づく慰謝料額と著作者人格権侵害に基づく慰謝料額とをそれぞれ特定して請求すべきである」

ということで、[2]には「訴訟物」が入ることが分かります。