2012年10月31日水曜日

TRIPS協定による輸出入規制の問題

【問題】
知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)に関するア〜ウの記述を比較して,最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 加盟国は権利者に著作権及び商標権を侵害する物品の輸入差止申立権を付与しなければならない。
イ 加盟国は輸出に関しても税関当局による通関停止措置を講じることができる。
ウ 加盟国は並行輸入品及び通過貨物について輸入差止措置を講じる義務を負う。

(23年7月実施)


【解説】
TRIPS協定による輸出入の規制についての問題です。
これは条文どおりですので、51条を見てみましょう。

第51条 税関当局による物品の解放の停止
加盟国は,この節の規定に従い,不正商標商品又は著作権侵害物品(注1)が輸入されるおそれがあると疑うに足りる正当な理由を有する権利者が,これらの物品の自由な流通への解放を税関当局が停止するよう,行政上又は司法上の権限のある当局に対し書面により申立てを提出することができる手続(注2)を採用する。加盟国は,この節の要件を満たす場合には,知的所有権のその他の侵害を伴う物品に関してこのような申立てを可能とすることができる。加盟国は,自国の領域から輸出されようとしている侵害物品の税関当局による解放の停止についても同様の手続を定めることができる。
(注1)
この協定の適用上,
(a) 「不正商標商品」とは,ある商品について有効に登録されている商標と同一であり又はその基本的側面において当該商標と識別できない商標を許諾なしに付した,当該商品と同一の商品(包装を含む。)であって,輸入国の法令上,商標権者の権利を侵害するものをいう。
(b) 「著作権侵害物品」とは,ある国において,権利者又は権利者から正当に許諾を受けた者の承諾を得ないである物品から直接又は間接に作成された複製物であって,当該物品の複製物の作成が,輸入国において行われたとしたならば,当該輸入国の法令上,著作権又は関連する権利の侵害となったであろうものをいう。
(注2)
権利者によって若しくはその承諾を得て他の国の市場に提供された物品の輸入又は通過中の物品については,この手続を適用する義務は生じないと了解する。



「不正商標商品又は著作権侵害物品」の輸入差止を申し立てることができる「手続を採用する」と規定されています。

適切


「自国の領域から輸出されようとしている侵害物品」の差止も同様に、「手続を定めることができる」と規定されています。
任意であることに注意です。

適切


「注2」において、これらの輸入差止手続を採用する義務が除外されています。

不適切

2012年10月30日火曜日

著作権・著作隣接権に関する国際条約の問題

【問題】
出版社X社は、自社の週刊誌の翻訳本を海外に輸出することを検討していて、諸外国における著作権保護レベルについてX社の法務担当者が発言している。ア〜エの発言を比較して、最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 「当社の週刊誌の翻訳本は、日本で発行された著作物ではありますが、輸出先の国において無断で複製された場合には、その輸出先の国の著作権法によって保護されることになります」

イ 「輸出先の国がどのような保護レベルにあるかを検討するにあたっては、まずどのような条約に加盟しているかを確認するといいね」

ウ 「著作権に関する条約といえば、ベルヌ条約と万国著作権条約が有名だね。TRIPS協定では著作権の保護については規定されているが、著作隣接権の保護については規定がないね」

エ 「ベルヌ条約は無方式主義を採用し、万国著作権条約は方式主義を採用しているけど、万国著作権条約を締結している国のうち、ベルヌ条約を締結していない国は数カ国しか存在しておらず、現在では『C』マークを付す意味はほとんどなくなっているね」

(22年11月実施)


【解説】
著作権・著作隣接権に関する国際条約の問題です。

「とるじいや」さんのサイトに、分かりやすくまとめられていますので、このページを見ればすべて回答が分かります。



この場合は、複製行為が行われた国の法律を準拠法として適用すると考えられています。
これを「属地主義」といいます。

適切


現在は、かなりの国がベルヌ条約に加盟し、保護水準が似てきていますが、すべて同じではありません。
ですので、このような調査は当然に必要でしょう。

適切


TRIPS協定の特色として、特許庁HPにまとめられています。

TRIPS協定の概要

(1)基本原則
1-1. ミニマム・スタンダード
……協定の保護水準は、加盟国が遵守すべき最低基準(ミニマム・スタンダード)。
1-2. パリ条約規定の準用
1-3. 内国民待遇、最恵国待遇

(2)保護基準
2-1. 著作権・著作隣接権
a.コンピュータ・プログラム保護。
b.実演家、レコード製作者、放送機関の保護。
c.著作物のレンタル権。

2-2. 商標
a.保護対象・保護期間の明確化。
b.周知商標保護:非類似商品・サービスであって商標権者と関連性を示す場合は保護。

2-3. 地理的表示
a.地理的表示:商品の品質・名声が、原産地の領域・土地に由来する場合に、その土地の原産であることを特定する表示。
b.地理的表示の保護。
c.ワイン・スピリッツの追加的保護。
d.今後の改正検討

2-4. 意匠
a.保護対象・期間の明確化。

2-5. 特許
a.特許対象
b.発明地差別の禁止。
c.保護期間は出願日から20年以上。

2-6. 契約における反競争的行為の規制
a.ライセンス契約などによる競争制限的な行為の規制。

(3)知的財産権の行使(エンフォースメント)
3-1. 一般的義務
a.知的財産侵害行為に対する効果的な行使手続の義務づけ。
b.不必要に複雑な手続、不合理な期間制限、不当な遅延を伴わない裁判手続、行政手続。

3-2. 水際措置
a.水際措置:知的財産侵害物品が輸入されようとする際、これを税関で差し止める手続。
b.商標権者及び著作権者は、適切な証拠があるとき、侵害品の通関の停止を関税当局に申し立てることが可。

(4)紛争の防止及び解決(第63〜64条)
a.加盟国は義務として国内法令をTRIPS理事会に通報国家間の紛争を未然に防止。
b.TRIPS協定違反を巡る国家間紛争に、WTO共通の新たな紛争処理手続を適用。

これらを見ますと、著作隣接権も保護されています。

不適切


万国著作権条約を締結している国のうち、ベルヌ条約を締結していない国は、現在ではカンボジアとラオスの2カ国です。
ですので、この両国で発行する著作物には注意が必要ですが、それ以外の場合なら、無方式主義のベルヌ条約が優先されますので、マルシーマークを付ける必要はありません。
このマルシーマークは、慣行として、いろいろなところで「付けなければならない!」と思われています。
しかし上記のとおり、法的意味はほとんどありません。
書かないと著作権が発生しないわけではありませんし、書いたからと言って特段保護が強くなるわけでもありません。
単なる著作権者は誰かを示す、目印程度の意味ですね。
ちなみに適切な表記方法は、「マルシー+著作権者名+第一発行年」です。

適切

万国著作権条約 第3条〔保護の条件〕
1 締約国は、自国の法令に基づき著作権の保護の条件として納入、登録、表示、公証人による証明、手数料の支払又は自国における製造若しくは発行等の方式に従うことを要求する場合には、この条約に基づいて保護を受ける著作物であつて自国外で最初に発行されかつその著作者が自国民でないものにつき、著作者その他の著作権者の許諾を得て発行された当該著作物のすべての複製物がその最初の発行の時から著作権者の名及び最初の発行の年とともに(c)の記号を表示している限り、その要求が満たされたものと認める。(c)の記号、著作権者の名及び最初の発行の年は、著作権の保護が要求されていることが明らかになるような適当な方法でかつ適当な場所に掲げなければならない。

※(c)は、実際にはマルシーです

知的財産の保護に関する条約の問題

【問題】
次の文章の空欄[1]〜[5]に入る語句の組合せとして、最も適切と考えられるものはどれか。

知的財産権の保護のための取極としては、[1]があります。[2]に対してはその適用に関し[3]が設けられているものの、原則としてすべての[4][1]を遵守する義務を負っています。
すべての[4]で構成されるTRIPS理事会が設置されていますが、その主な役割の一つは、加盟国が[1]に基づく義務を遵守しているか否か、を監視することです。そして、その監視の方法の一つとして、各国の[5]レビューが挙げられます。
具体的には、[1]が定める事項に関し加盟国が実施する[5]等を公表することとなっています。さらに、加盟国における[1]の実施状況を、「検討することに資するために」TRIPS理事会に[5]を通報することと規定されています。[5]レビュー会合においては、通報された[5][1]上の義務を果たしているかどうか、加盟国とレビュー国の間で質疑応答が行われます。

ア [1]=TRIPS協定
   [2]=開発途上国・後発途上国
   [3]=猶予期間
   [4]=WTO加盟国
   [5]=法令
イ [1]=TRIPS協定
   [2]=先進国
   [3]=猶予期間
   [4]=TRIPS加盟国
   [5]=裁判例
ウ [1]=パリ条約
   [2]=開発途上国・後発途上国
   [3]=特別措置
   [4]=パリ同盟国
   [5]=裁判例
エ [1]=パリ条約
   [2]=WTO加盟国
   [3]=特別措置
   [4]=パリ同盟国
   [5]=法令

(22年11月実施)


【解説】
知的財産の保護に関する条約の内容を問う問題です。

知的財産権の保護のための取極としては、TRIPS協定と、パリ条約があります。([1])

【TRIPS協定】(正式名称=知的所有権の貿易関連の側面に関する協定
[基本的な特徴]
・WTO加盟の条件
・猶予期間
・内国民待遇の原則→営業秘密の保護
・最恵国待遇の原則
・知的財産権の侵害行為に対する効果的な措置(エンフォースメント)を国内法において確保する義務
・パリ条約とベルヌ条約の実態条件を満たさなければならない

【パリ条約】(正式名称=1900年12月14日にブラッセルで,1911年6月2日にワシントンで,1925年11月6日にヘーグで,1934年6月2日にロンドンで,1958年10月31日にリスボンで及び1967年7月14日にストックホルムで改正され,並びに1979年9月28日に修正された工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約◆長過ぎ!→工業所有権の保護に関するパリ条約
[基本的な特徴]
・保護対象=工業所有権
・内国民待遇の原則
・優先権
・権利独立の原則


TRIPS協定は、1995年のWTO(世界貿易機関)の創設に合わせて、新たな貿易関連ルールの一つとして発効したものです。
知的財産権の保護に関してWTO加盟国が遵守すべき最低基準(ミニマム・スタンダード)として機能していますので、WTO加盟国はすべて、TRIPS協定を遵守する義務を負っています。([4])
ただし、開発途上国・後発途上国にとっては特に負担が大きいことから、「猶予期間」が設けられています。([3])
猶予期間とは、TRIPS協定によって政策変更が迫られるのはどちらかというと途上国側であることから、履行義務の発生まで、途上国には特に、数年の経過期間が設けられています。現在は、分野によって、少しずつ延長されている状況です。
また、加盟国の国内法令とTRIPS協定との整合性について、「法令レビュー」という審査が行われます。([5])

TRIPS協定については、特許庁の次のページにある、「特許行政年次報告書」を見てみてください。
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/toushin/nenji/nenpou2012_index.htm

第3章の、313-314ページを見ると、ヒントになります。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2012/honpen/4-3.pdf

2012年10月25日木曜日

税関による輸入差止の問題3

【問題】
キャラクターグッズを販売するX社は、キャラクターAが登場するイラストを作成した。ところが、キャラクターAが刺繍されたタオルを輸入業者であるY社がX社に断りなく輸入して販売しようとしていることが判明した。

Y社が輸入しようとしているタオルのイラストは、X社のイラストを一部改変していたものであった。X社の法務担当者甲と乙とのア〜ウの会話を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。


甲「わが社のイラストを一部改変しているようだけど、税関が判断に困ったらどうするのかな」
乙「特許権に基づく場合には特許庁長官に意見照会ができる制度がありますが、著作権に基づく場合に文化庁長官に意見照会を求める制度はありません」


甲「わが社のイラストを一部改変しているようだけど、このことについても何かいえないかな」
乙「著作者人格権侵害となるべき物の輸入もみなし侵害とされていますので、著作者人格権による輸入差止申立が可能です」


甲「わが社のイラストを一部改変しているため、税関の判断には時間がかかるかもしれないね」
乙「迅速な水際措置という趣旨から、一定期間を経過した後は、Y社は担保を提供して認定手続の取りやめを求めてタオルの輸入許可を受けることができます」

(22年11月実施)


【解説】
税関による輸入差止についての諸制度の問題です。


特許庁長官の意見を聴くことを税関長に求めることができる者は、特許権、実用新案権、意匠権に係る権利者及び対象貨物を輸入しようとした者です(関税法69条の17)。
また、育成者権についても、農林水産大臣に対し認定の参考となるべき意見を求めることができます(69条の18)。
ただし、商標権、著作権については、意見照会はできません。

適切


関税法69条の11第1項9号は、著作権、著作隣接権を侵害する物品の輸入を禁止しており、著作権法113条1項1号の規定する著作者人格権、出版権、実演家人格権の侵害物は対象となっていません。

不適切


認定手続において申立人と輸入者の主張が対立する等の理由で、侵害か否かの認定が容易にできなくなる場合、認定手続が長期化することが考えられるため、輸入できないことによって輸入者に生じる損害の賠償を担保するために申立人に対して相当額の金銭を供託させる制度があります。
ただし本問はこれと異なり、通関解放制度の問題です。これは、輸入差止申立が受理された特許権、実用新案権、または意匠権に係る貨物について認定手続が執られたとき、輸入者は一定期間経過後、税関長に対し認定手続の取りやめを求めることができる制度です。
「通関解放制度」の詳細は、税関HPに解説されていますので、お読みください。
この制度の対象には、アと同じく、商標権、著作権は含まれていません。

不適切



第69条の17(輸入してはならない貨物に係る意見を聴くことの求め等)
特許権、実用新案権又は意匠権を侵害する貨物に該当するか否かについての認定手続が執られたときは、当該貨物に係る特許権者等(特許権者、実用新案権者又は意匠権者をいう。以下この条において同じ。)又は輸入者(当該認定手続に係る貨物を輸入しようとする者をいう。以下この条において同じ。)は、政令で定めるところにより、当該特許権者等が第六十九条の十二第一項(輸入してはならない貨物に係る認定手続)の規定による通知を受けた日(以下この項及び第六十九条の二十第二項(輸入してはならない貨物に係る認定手続を取りやめることの求め等)において「通知日」という。)から起算して十日(行政機関の休日の日数は、算入しない。)を経過する日(第六十九条の二十第一項及び第二項において「十日経過日」という。)までの期間(その期間の満了する日前に当該認定手続の進行状況その他の事情を勘案して税関長が当該期間を延長することを必要と認めてその旨を当該特許権者等及び当該輸入者に通知したときは、通知日から起算して二十日(行政機関の休日の日数は、算入しない。)を経過する日(第六十九条の二十第一項において「二十日経過日」という。)までの期間)内は、当該認定手続が執られている間に限り、税関長に対し、当該認定手続に係る貨物が当該特許権者等の特許権、実用新案権又は意匠権を侵害する貨物に該当するか否かに関し、技術的範囲等(特許法第七十条第一項 (特許発明の技術的範囲)(実用新案法第二十六条 (特許法 の準用)において準用する場合を含む。)に規定する技術的範囲又は意匠法第二十五条第一項 (登録意匠の範囲)に規定する範囲をいう。第九項及び第六十九条の十九(輸入してはならない貨物に係る認定手続における専門委員への意見の求め)において同じ。)について特許庁長官の意見を聴くことを求めることができる。
2  税関長は、前項の規定による求めがあつたときは、政令で定めるところにより、特許庁長官に対し、意見を求めるものとする。ただし、同項の規定による求めに係る貨物が第六十九条の十一第一項第九号(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物に該当するか否かが明らかであるときその他特許庁長官の意見を求める必要がないと認めるときは、この限りでない。
3  税関長は、第一項の規定による求めがあつた場合において、前項ただし書の規定により特許庁長官の意見を求めなかつたときは、第一項の規定による求めをした特許権者等又は輸入者に対し、その旨及びその理由を通知しなければならない。
4  特許庁長官は、第二項本文の規定により税関長から意見を求められたときは、その求めがあつた日から起算して三十日以内に、書面により意見を述べなければならない。
5  税関長は、第二項本文の規定により特許庁長官の意見を求めたときは、その求めに係る特許権者等及び輸入者に対し、その旨を通知しなければならない。
6  税関長は、第四項の規定による意見が述べられたときは、その意見に係る特許権者等及び輸入者に対し、その旨及びその内容を通知しなければならない。
7  税関長は、第二項本文の規定により特許庁長官の意見を求めたときは、その求めに係る第四項の規定による意見が述べられる前に、第一項の求めをした者が特許権者等である場合にあつてはその求めに係る貨物が第六十九条の十一第一項第九号に掲げる貨物に該当しないことの認定を、第一項の求めをした者が輸入者である場合にあつてはその求めに係る貨物が同号に掲げる貨物に該当することの認定をしてはならない。
8  税関長は、第二項本文の規定により特許庁長官の意見を求めた場合において、その求めに係る第四項の規定による意見が述べられる前に、第一項の求めをした者が特許権者等である場合にあつてはその求めに係る貨物が第六十九条の十一第一項第九号に掲げる貨物に該当すると認定したとき、若しくは第一項の求めをした者が輸入者である場合にあつてはその求めに係る貨物が同号に掲げる貨物に該当しないと認定したとき、又は第六十九条の十二第六項若しくは第六十九条の十五第十項(輸入差止申立てに係る供託等)の規定により当該貨物について認定手続を取りやめたときは、その旨を特許庁長官に通知するものとする。この場合においては、特許庁長官は、第四項の規定による意見を述べることを要しない。
9  税関長は、特許権、実用新案権又は意匠権を侵害する貨物に該当するか否かについての認定手続において、第六十九条の十二第一項の規定による認定をするために必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、特許庁長官に対し、当該認定手続に係る貨物が特許権者等の特許権、実用新案権又は意匠権を侵害する貨物に該当するか否かに関し、技術的範囲等について意見を求めることができる。
10  第四項から第六項まで及び次条第五項の規定は、前項の規定により意見を求める場合について準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。


第69条の18(輸入してはならない貨物に係る認定手続における農林水産大臣等への意見の求め)
税関長は、育成者権を侵害する貨物又は第六十九条の十一第一項第十号(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物に該当するか否かについての認定手続において、第六十九条の十二第一項(輸入してはならない貨物に係る認定手続)の規定による認定をするために必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、育成者権を侵害する貨物に該当するか否かについての認定手続にあつては農林水産大臣に、同号に掲げる貨物に該当するか否かについての認定手続にあつては経済産業大臣に対し、当該認定のための参考となるべき意見を求めることができる。
2  農林水産大臣又は経済産業大臣は、前項の規定により税関長から意見を求められたときは、その求めがあつた日から起算して三十日以内に、書面により意見を述べなければならない。
3  税関長は、第一項の規定により意見を求めたときは、認定手続に係る育成者権者又は不正競争差止請求権者及び当該認定手続に係る貨物を輸入しようとする者に対し、その旨を通知しなければならない。
4  税関長は、第二項の規定による意見が述べられたときは、前項の育成者権者又は不正競争差止請求権者及び当該認定手続に係る貨物を輸入しようとする者に対し、その旨及びその内容を通知しなければならない。
5  税関長は、第一項の規定により農林水産大臣又は経済産業大臣の意見を求めた場合において、その求めに係る第二項の規定による意見が述べられる前にその求めに係る貨物が育成者権を侵害する貨物若しくは第六十九条の十一第一項第十号に掲げる貨物に該当すると認定したとき若しくは該当しないと認定したとき、又は第六十九条の十二第六項若しくは第六十九条の十五第十項(輸入差止申立てに係る供託等)の規定により当該貨物について認定手続を取りやめたときは、その旨を農林水産大臣又は経済産業大臣に通知するものとする。この場合においては、農林水産大臣又は経済産業大臣は、第二項の規定による意見を述べることを要しない。


第69条の11(輸入してはならない貨物)
次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
九  特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品
十  不正競争防止法第二条第一項第一号 から第三号 まで、第十号又は第十一号(定義)に掲げる行為(これらの号に掲げる不正競争の区分に応じて同法第十九条第一項第一号 から第五号 まで又は第七号 (適用除外等)に定める行為を除く。)を組成する物品



第113条(侵害とみなす行為)
次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
一  国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
二  著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為

2012年10月24日水曜日

税関による輸入差止申立制度の問題2

【問題】
キャラクターグッズを販売するX社は、キャラクターAが登場するイラストを作成した。ところが、キャラクターAが刺繍されたタオルを輸入業者であるY社がX社に断りなく輸入して販売しようとしていることが判明した。

社内における相談の結果、X社は税関に対して輸入差止の申立をした。X社の法務担当者甲と乙とのア〜エの会話を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。


甲「税関に対する輸入差止の申立の有効期間はあるのかな」
乙「有効期間は最長2年ですので、その後も輸入差止を希望する場合には更新手続が必要になります」


甲「税関から認定手続開始通知書を受け取ったけど、何かする必要はあるのかな」
乙「輸入業者であるY社が争う医師を示さない限り、タオルは自動的に廃棄処分されますので、もう何もする必要はありません」


甲「税関から証拠と意見を提出するように指示されたけど、Y社が輸入しようとするタオルを提出前に確認したいよね」
乙「税関に申し出れば、タオルの数量に関わらず画像情報を電子メールで送ってもらえます」


甲「写真だけでなくもう少し詳しくY社のタオルの確認や検査をしたいけど、できるかな」
乙「タオルはこちらの所有ではないので、これ以上詳しい確認や検査をすることは一切できません」

(22年11月実施)


【解説】
税関による輸入差止申立制度の問題の続きです。
税関ホームページに、詳しい解説が載っていますので、ぜひお読みください。
http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_001.htm


有効期間は、最長2年で、申立人の希望する期間です。
ただし、申立てする権利の存続期間が、この2年間に達していない場合は、その権利の存続期間の最終日までとなります。
更新は、差止申立有効期間の最終日の3カ月前から手続を行うことができ、更新期間は同じく最長2年の希望日までです。

適切


通知書の日付の日の翌日から起算して10執務日以内に、権利者、輸入者双方が、当該疑義物品について意見・証拠を税関に提出します。
税関は、その内容に基づいて当該疑義物品が侵害に該当するか否かの認定を行います。
従って、何もしなければ、侵害に認定されないおそれがあり、その場合は事後の輸入も止められなくなるでしょう。

不適切


申し出により、疑義貨物の画像情報を電子メールにより送ってもらうことができます。
ただしそれは、証拠・意見を提出するために必要な場合であって、認定手続開始通知書に記載されている疑義貨物の数量が10個以下の場合に限られます。
また、税関が、業務遂行上、真にやむをえない理由により電子メールの送信ができない場合は除かれます。

不適切


権利者及び輸入者は、申請により、当該疑義物品を点検することができます。
また申立者は、申請により、承認条件を満たし、かつ、見本検査に係る供託を行った場合、見本検査(分解・分析)を実施することができます。
税関の立会に加え、輸入者が立ち会うことも可能です。

不適切

2012年10月23日火曜日

税関による輸入差止申立制度の問題

【問題】
キャラクターグッズを販売するX社は、キャラクターAが登場するイラストを作成した。ところが、キャラクターAが刺繍されたタオルを輸入業者であるY社がX社に断りなく輸入して販売しようとしていることが判明した。

X社の法務担当者甲と乙とのア〜エの会話を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。


甲「税関にY社のタオルの輸入差止はできるのかな」
乙「税関は行政機関なので、司法機関である裁判所の決定や判決書がなければ輸入差止の申立ができません」


甲「そもそも税関にY社のタオルの輸入差止を申し立てなければ、税関は差し止めてくれないのかな」
乙「知的財産侵害疑義物品については、税関は申立があった場合に限り、申立人の提出した識別ポイントに従って、タオルに限って輸入差止に関する手続を行います」


甲「輸入差止の申立をお願いする場合、誰に依頼したらいいのかな」
乙「弁護士又は弁理士に依頼できます」


甲「税関は9つあるようだけど、申立先の税関は1つでいいのかな」
乙「Y社がどの税関から通関しているかわからないので、9つすべての税関にそれぞれ申立をしなければいけません」

(22年11月実施)


【解説】
税関による輸入差止申立制度の問題です。
税関ホームページに、詳しい解説が載っていますので、ぜひお読みください。
http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_001.htm


輸入差止申立制度は、知的財産権を有する者または不正競争差止請求権者が、自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に、税関長に対し、当該貨物の輸入を差し止め、認定手続きを執るべきことを申し立てる制度であり、申立の主体は権利者です。
裁判所の決定や判決書は参考資料ではあるが、必要書類ではありません。
また、この行政手続と裁判所の司法手続とは別個独立のものであるため、権利者は、税関に対して輸入差止の申立を行う一方、同時に裁判所に対して輸入禁止の仮処分を求める申立を行うことや輸入差止の訴えを提起することも可能です。

不適切


輸入差止には、税関が自主的に行う場合と、権利者や輸入者等の申立に基づいてなされる場合の2とおりがあります。
税関の知的財産調査官は、侵害物品の輸入の取り締まりのため、資料等の収集に努めるものとされています。
関税法69条の11第2項には、
税関長は、前項第1号から第6号まで、第9号又は第10号に掲げる貨物で輸入されようとするものを没収して廃棄し、又は当該貨物を輸入しようとする者にその積戻しを命ずることができる
と規定されており、また69条の12第1項では、
税関長は、この章に定めるところに従い輸入されようとする貨物のうちに前条第1項第9号又は第10号に掲げる貨物に該当する貨物があると思料するときは、政令で定めるところにより、当該貨物がこれらの号に掲げる貨物に該当するか否かを認定するための手続(認定手続)を執らなければならない
と規定されていて、権利者等の申立は、要件とされていません。

不適切


税関ホームページに、「輸入差止申立ての要件」というページがあります。
http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_002.htm

このページの中の、「1.権利者であるか」の欄に、書かれています。

適切


税関ホームページの、「輸入差止申立ての一般的手順」のページの内、「2 提出窓口(申立先税関及び担当部門)」の欄に、書かれています。
http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_003.htm

関税法69条の13第1項では、「いずれかの税関長に対し、(中略)申し立てることができる」と規定されています。

不適切



第69条の11(輸入してはならない貨物)
次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
 一 麻薬及び向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚醒剤(覚せい剤取締法にいう覚せい剤原料を含む。)並びにあへん吸煙具。ただし、政府が輸入するもの及び他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
 二 拳銃、小銃、機関銃及び砲並びにこれらの銃砲弾並びに拳銃部品。ただし、他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
 三 爆発物。ただし、他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
 四 火薬類。ただし、他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
 五 化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律第二条第三項(定義等)に規定する特定物質。ただし、条約又は他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該条約又は他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
 五の二 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第六条第二十項(定義)に規定する一種病原体等及び同条第二十一項に規定する二種病原体等。ただし、他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
 六 貨幣、紙幣若しくは銀行券、印紙若しくは郵便切手又は有価証券の偽造品、変造品及び模造品並びに不正に作られた代金若しくは料金の支払用又は預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録をその構成部分とするカード
 七 公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品(次号に掲げる貨物に該当するものを除く。)
 八 児童ポルノ
 九 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品
 十 不正競争防止法第二条第一項第一号から第三号まで、第十号又は第十一号(定義)に掲げる行為を組成する物品
2 税関長は、前項第一号から第六号まで、第九号又は第十号に掲げる貨物で輸入されようとするものを没収して廃棄し、又は当該貨物を輸入しようとする者にその積戻しを命ずることができる。
3 税関長は、この章に定めるところに従い輸入されようとする貨物のうちに第一項第七号又は第八号に掲げる貨物に該当すると認めるのに相当の理由がある貨物があるときは、当該貨物を輸入しようとする者に対し、その旨を通知しなければならない。


第69条の12(輸入してはならない貨物に係る認定手続)
税関長は、この章に定めるところに従い輸入されようとする貨物のうちに前条第一項第九号又は第十号に掲げる貨物に該当する貨物があると思料するときは、政令で定めるところにより、当該貨物がこれらの号に掲げる貨物に該当するか否かを認定するための手続(以下この条から第六十九条の二十までにおいて「認定手続」という。)を執らなければならない。この場合において、税関長は、政令で定めるところにより、当該貨物に係る特許権者等(特許権者、実用新案権者、意匠権者、商標権者、著作権者、著作隣接権者、回路配置利用権者若しくは育成者権者又は不正競争差止請求権者及び当該貨物を輸入しようとする者に対し、当該貨物について認定手続を執る旨並びに当該貨物が前条第一項第九号又は第十号に掲げる貨物に該当するか否かについてこれらの者が証拠を提出し、及び意見を述べることができる旨その他の政令で定める事項を通知しなければならない。
2 税関長は、前項の規定による通知を行う場合には、当該貨物に係る特許権者等に対しては当該貨物を輸入しようとする者及び当該貨物の仕出人の氏名又は名称及び住所を、当該貨物を輸入しようとする者に対しては当該特許権者等の氏名又は名称及び住所を、併せて通知するものとする。
3 税関長は、認定手続が執られる貨物の輸入に係る第六十七条(輸出又は輸入の許可)の規定に基づく輸入申告書その他の税関長に提出された書類、当該認定手続において税関長に提出された書類又は当該貨物における表示から、当該貨物を生産した者の氏名若しくは名称又は住所が明らかであると認める場合には、第一項の通知と併せて、又は当該通知の後で当該認定手続が執られている間、その氏名若しくは名称又は住所を当該貨物に係る特許権者等に通知するものとする。
4 税関長は、認定手続を経た後でなければ、この章に定めるところに従い輸入されようとする貨物について前条第二項の措置をとることができない。
5 税関長は、認定手続が執られた貨物が前条第一項第九号又は第十号に掲げる貨物に該当すると認定したとき、又は該当しないと認定したときは、それぞれその旨及びその理由を当該認定がされた貨物に係る特許権者等及び当該認定がされた貨物を輸入しようとする者に通知しなければならない。ただし、次項の規定による通知をした場合は、この限りでない。
6 税関長は、前項本文の規定による疑義貨物に係る認定の通知をする前に次の各号に掲げる場合のいずれかに該当することとなつたときは、当該疑義貨物に係る特許権者等に対し、その旨を通知するとともに、認定手続を取りやめるものとする。
 一 第三十四条(外国貨物の廃棄)の規定により当該疑義貨物が廃棄された場合
 二 第四十五条第一項ただし書(許可を受けた者の関税の納付義務等)の規定により当該疑義貨物が滅却された場合
 三 第七十五条(外国貨物の積戻し)の規定により当該疑義貨物が積み戻された場合
 四 前三号に掲げる場合のほか、当該疑義貨物が輸入されないこととなつた場合
7 第二項若しくは第三項の規定による通知を受けた者又は第六十九条の十六第二項の規定により承認を受けた同項に規定する申請者は、当該通知を受けた事項又は当該申請に係る見本の検査その他当該見本の取扱いにおいて知り得た事項を、みだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。



第69条の13(輸入してはならない貨物に係る申立て手続等)
特許権者、実用新案権者、意匠権者、商標権者、著作権者、著作隣接権者若しくは育成者権者又は不正競争差止請求権者は、自己の特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権若しくは育成者権又は営業上の利益を侵害すると認める貨物に関し、政令で定めるところにより、いずれかの税関長に対し、その侵害の事実を疎明するために必要な証拠を提出し、当該貨物がこの章に定めるところに従い輸入されようとする場合は当該貨物について当該税関長又は他の税関長が認定手続を執るべきことを申し立てることができる。この場合において、不正競争差止請求権者は、不正競争防止法第二条第一項第一号(定義)に規定する商品等表示であつて当該不正競争差止請求権者に係るものが需要者の間に広く認識されているものであることその他の経済産業省令で定める事項について、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣の意見を求め、その意見が記載された書面を申立先税関長に提出しなければならない。
2 申立先税関長は、前項の規定による申立てがあつた場合において、当該申立てに係る侵害の事実を疎明するに足りる証拠がないと認めるときは、当該申立てを受理しないことができる。
3 申立先税関長は、第一項の規定による申立てがあつた場合において、当該申立てを受理したときはその旨及び当該申立てが効力を有する期間を、前項の規定により当該申立てを受理しなかつたときはその旨及びその理由を当該申立てをした者に通知しなければならない。
1 税関長は、第一項の規定による申立てを受理した場合又は当該申立てが他の税関長により受理された場合において、当該申立てに係る貨物について認定手続を執つたときは、政令で定めるところにより、当該申立てをした者又は当該貨物を輸入しようとする者に対し、それぞれその申請により、当該貨物を点検する機会を与えなければならない。ただし、前条第六項の規定により当該認定手続を取りやめたときは、この限りでない。

2012年10月17日水曜日

JASRACによる著作権管理事業の範囲についての問題

【問題】
東京に本社をおくX社では,アジア系アーティストの人気が高いため,海外へ向けての音楽配信事業を計画している。事業の立案に際し法務担当者へ意見を求めたところ,回答があった。ア〜ウの記述を比較して,法務担当者の回答として,最も適切と考えられるものはどれか。

ア JASRACが管理している日本の楽曲については,JASRACから許諾を受けることができれば,各国にサーバーを設置し配信をしてもよい。

イ 外国の楽曲については,JASRACが演奏権を管理している場合は,JASRACの許諾を受けることができれば海外に向けた配信が可能である。

ウ 楽曲を有料配信するか無料配信するかの違いによって実演家の権利処理が変わることはない。

(23年7月実施)


【解説】
JASRACによる著作権管理事業の範囲についての問題です。


JASRACが管理しているのは、日本国内の権利のみです。

不適切


同上

不適切


実演家の権利処理が変わるのは、著作権法38条(営利を目的としない上演等)の場合のみと考えられます。

適切

2012年10月13日土曜日

著作権等管理事業法に基づく「著作権等管理事業者」についての問題

【問題】
著作権等管理事業法に関するア〜エの記述を比較して,最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 使用料規程は文化庁に届け出され,かつ公示されているが,そこに定められた使用料の額について,交渉して減額することは許される。

イ 著作権等管理事業者が管理する著作物等は,権利者本人から直接その利用の許諾を得ることは一切できない。

ウ 一定の場合,文化庁に著作権等管理事業者の登録をせずに第三者の著作権等の管理を行うことができる。

エ 文化庁に登録された著作権等管理事業者から許諾を得ても,当該管理事業者が著作権者から著作権の管理委託を受けていない場合には,その利用は著作権侵害となる。

(23年7月実施)


【解説】
著作権等管理事業法に基づく、「著作権等管理事業者」とは何か、何ができるか、についての問題です。


使用料規程に定める額を超えた使用料の徴収は、たとえ利用者との合意に基づくものであっても無効となります。また、著作物の利用形態は日々進化・多様化するものでありますから、既存の規程を適用することができない利用形態については、協議のうえで当面の使用料額を決めて許諾することが認められています。

適切


委託者による管理の留保や制限が認められているので、その分は委託者自らが管理し、許諾することとなります。

不適切


非一任型の管理のみを行う場合や、密接関係者(親族間や親会社・子会社間等)のみの管理を行う場合等、著作権等管理事業法の規制対象外となり、登録不要な場合があります。
文化庁サイトに詳しい説明が載っています。
※下部にある(参考)の表の「許諾件の管理」は、「許諾権の管理」の誤りではないかと思います。

適切


当たり前です……

適切

2012年10月2日火曜日

著作権等管理事業法の対象範囲に関する問題

【問題】
著作権等管理事業法に関するア〜ウの記述を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 受託者が、予定された範囲の利用行為についての著作権者等の許諾の意思表示を伝達するにすぎない場合であっても、本法における管理委託契約に含まれる。

イ 受託者が、取次や代理により著作権の管理を業として行う場合は、権利者は受託者となるため、差止請求や訴訟提起の業務を行うこともできると解される。

ウ 受託者が、著作物等の利用を許諾するに際し、委託者が自らの判断において使用料の額を決定する場合は、本法の対象となる管理委託契約から除かれる。

(22年11月実施)


【解説】
著作権等管理事業法の対象範囲に関する問題です。

著作権等管理事業法は、委託者(多くは著作権者)が受託者(著作権等管理事業者)に対し、「管理委託契約」に基づいて、著作権の管理を委託する際のルールを定めた法律です。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO131.html

著作権等管理事業者の代表的なものには、JASRAC(日本音楽著作権協会)がありますが、実はそのほかにもたくさんの団体が登録されており、平成24年6月1日現在で32団体あります。

著作権等管理事業者登録状況一覧
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/kanrijigyouhou/touroku_jyokyo/pdf/touroku_jyokyo_ver07.pdf

では「管理委託契約」とはどのようなものでしょうか。
第2条(定義)に定められています。

この法律において「管理委託契約」とは、次に掲げる契約であって、受託者による著作物、実演、レコード、放送又は有線放送の利用の許諾に際して委託者が使用料の額を決定することとされているもの以外のものをいう。
 一 委託者が受託者に著作権又は著作隣接権を移転し、著作物等の利用の許諾その他の当該著作権等の管理を行わせることを目的とする信託契約
 二 委託者が受託者に著作物等の利用の許諾の取次ぎ又は代理をさせ、併せて当該取次ぎ又は代理に伴う著作権等の管理を行わせることを目的とする委任契約

基本的には、受託者に管理を任せますよ、という「一任型」の管理が、本法における管理委託契約に該当し、委託者自身も一定の管理を行う「非一任型」の場合は該当しません。

具体的にはどういうことでしょうか。
本問の解説をしていくことで、分かってきます。



本問のような、著作権者と利用者との間を取り結び、契約の成立を目指す行為を、「媒介」といいます。最終的に契約を結ぶ主体となるのは、委託者と受託者です。
(例えれば、仲人さんのようなものでしょうか。最終的には結婚するのは新郎と新婦ですし、決定するのも本人たちですよね)
このような媒介行為は仲介業務法では規制対象だったのですが、媒介する者の裁量によって最終的に契約を成立させるものではないことから、管理事業法では非一任型の管理であるとして規制の範囲外となりました。
2条を見ると、「信託」「委任」(「取次」「代理」)の文言はありますが、「媒介」はありません。

不適切


まず「取次」「代理」の意味を見てみましょう。

取次を営業として行う商人を問屋といい、それは商法第551条に定義されています。

問屋トハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為メニ物品ノ販売又ハ買入ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ

つまり、「自己の名を以て他人の為めに物品の販売又は買入を為す」ことを、「取次」というのです。
この法律効果は、いったん自己に帰属した後に、直ちに本人に移転することになります。

次は代理です。
民法第99条(代理行為の要件及び効果)を読んでみましょう。

代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

この法律効果も、本人に生じます。

ということは、取次も代理も、管理の目的たる著作権は、受託者に移転しないのです。
すなわち、受託者は、著作権者ではありません。
ですから、受託者たる管理事業者が、差止請求や訴訟提起をすることはできません。
行えるのは、権利者である作家等のみです。

では信託契約の場合はどうでしょうか。
「信託」では、財産権が委託者から受託者に移転するのです。
従って、受託者たる管理事業者が著作権者として、直接、差止請求や訴訟提起をすることができます。

不適切


これは、上に書いた、「管理委託契約」第2条のとおりです。

適切