2012年10月2日火曜日

著作権等管理事業法の対象範囲に関する問題

【問題】
著作権等管理事業法に関するア〜ウの記述を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 受託者が、予定された範囲の利用行為についての著作権者等の許諾の意思表示を伝達するにすぎない場合であっても、本法における管理委託契約に含まれる。

イ 受託者が、取次や代理により著作権の管理を業として行う場合は、権利者は受託者となるため、差止請求や訴訟提起の業務を行うこともできると解される。

ウ 受託者が、著作物等の利用を許諾するに際し、委託者が自らの判断において使用料の額を決定する場合は、本法の対象となる管理委託契約から除かれる。

(22年11月実施)


【解説】
著作権等管理事業法の対象範囲に関する問題です。

著作権等管理事業法は、委託者(多くは著作権者)が受託者(著作権等管理事業者)に対し、「管理委託契約」に基づいて、著作権の管理を委託する際のルールを定めた法律です。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO131.html

著作権等管理事業者の代表的なものには、JASRAC(日本音楽著作権協会)がありますが、実はそのほかにもたくさんの団体が登録されており、平成24年6月1日現在で32団体あります。

著作権等管理事業者登録状況一覧
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/kanrijigyouhou/touroku_jyokyo/pdf/touroku_jyokyo_ver07.pdf

では「管理委託契約」とはどのようなものでしょうか。
第2条(定義)に定められています。

この法律において「管理委託契約」とは、次に掲げる契約であって、受託者による著作物、実演、レコード、放送又は有線放送の利用の許諾に際して委託者が使用料の額を決定することとされているもの以外のものをいう。
 一 委託者が受託者に著作権又は著作隣接権を移転し、著作物等の利用の許諾その他の当該著作権等の管理を行わせることを目的とする信託契約
 二 委託者が受託者に著作物等の利用の許諾の取次ぎ又は代理をさせ、併せて当該取次ぎ又は代理に伴う著作権等の管理を行わせることを目的とする委任契約

基本的には、受託者に管理を任せますよ、という「一任型」の管理が、本法における管理委託契約に該当し、委託者自身も一定の管理を行う「非一任型」の場合は該当しません。

具体的にはどういうことでしょうか。
本問の解説をしていくことで、分かってきます。



本問のような、著作権者と利用者との間を取り結び、契約の成立を目指す行為を、「媒介」といいます。最終的に契約を結ぶ主体となるのは、委託者と受託者です。
(例えれば、仲人さんのようなものでしょうか。最終的には結婚するのは新郎と新婦ですし、決定するのも本人たちですよね)
このような媒介行為は仲介業務法では規制対象だったのですが、媒介する者の裁量によって最終的に契約を成立させるものではないことから、管理事業法では非一任型の管理であるとして規制の範囲外となりました。
2条を見ると、「信託」「委任」(「取次」「代理」)の文言はありますが、「媒介」はありません。

不適切


まず「取次」「代理」の意味を見てみましょう。

取次を営業として行う商人を問屋といい、それは商法第551条に定義されています。

問屋トハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為メニ物品ノ販売又ハ買入ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ

つまり、「自己の名を以て他人の為めに物品の販売又は買入を為す」ことを、「取次」というのです。
この法律効果は、いったん自己に帰属した後に、直ちに本人に移転することになります。

次は代理です。
民法第99条(代理行為の要件及び効果)を読んでみましょう。

代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

この法律効果も、本人に生じます。

ということは、取次も代理も、管理の目的たる著作権は、受託者に移転しないのです。
すなわち、受託者は、著作権者ではありません。
ですから、受託者たる管理事業者が、差止請求や訴訟提起をすることはできません。
行えるのは、権利者である作家等のみです。

では信託契約の場合はどうでしょうか。
「信託」では、財産権が委託者から受託者に移転するのです。
従って、受託者たる管理事業者が著作権者として、直接、差止請求や訴訟提起をすることができます。

不適切


これは、上に書いた、「管理委託契約」第2条のとおりです。

適切

0 件のコメント:

コメントを投稿