レコード会社X社の新人アイドルである甲は,今回,昨年大ヒットしたアーティスト乙の代表曲Aをカバーし,CDをリリースすることになった。レコーディングにあたっては,甲のために編曲(アレンジ)をした上で,実演を収録した。ア〜エの記述を比較して,レコード会社X社及び新人アイドル甲が注意すべき点として,最も適切と考えられるものはどれか。なお,代表曲Aは音楽出版社Y社を通じて,JASRACに信託・譲渡された管理楽曲とする。
ア 代表曲Aについては,JASRACに対し通常の楽曲使用申請をするだけで使用できる。
イ 新人アイドル甲のために編曲(アレンジ)を加えるため,著作権法第27条の編曲権の処理が必要となり,代表曲Aの著作権者である音楽出版社Y社の許諾を得る必要がある。
ウ 代表曲Aに関し,新人アイドル甲のために編曲(アレンジ)を加えるため,アーティスト乙の実演を収録した原盤に係る権利を有するレコード製作者の許諾を得る必要がある。
エ 代表曲Aはアーティスト乙の実演を収録した原盤により大ヒットしたため,編曲(アレンジ)に際しては,実演家であるアーティスト乙の許諾を得る必要がある。
(23年7月実施)
【解説】
JASRACに信託された音楽を編曲して利用する際の権利処理の問題です。
(この問題の解説は、少しあいまいな部分があります。より正確な解説をご存じの方があれば、ご教示お願いいたします)
ア
編曲は翻案に当たります。Aの権利がJASRACに譲渡されたといっても、翻案権はY社に留保されたものと推定される(著作権法61条2項)から、通常の楽曲使用申請では足りません。
↓
不適切
イ
同上
↓
適切
ウ
レコード製作者には編曲権は認められていません。
↓
不適切
エ
レコード製作者には編曲権は認められていません。
↓
不適切
※アとイについての別の理由として考えられるのは、
「編曲をすると、同一性保持権の問題が発生しますが、人格権は著作者だけが持っている権利(一身専属性)であるため、JASRACも関与できません」
とも言えそうです。
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