空欄[1]〜[2]に入る語句の組合せとして,最も適切と考えられるものはどれか。
著作者人格権が侵害された場合には,著作者の名誉もしくは声望を回復するために,[1]を請求することができる旨が明文に規定されており,この請求は,損害の賠償に代えて又は損害の賠償とともにすることができる。
なお,著作財産権と著作者人格権とはそれぞれ保護法益を異にするものであるため,同一の行為によって著作財産権と著作者人格権が侵害された場合であっても,それぞれについて精神的損害が両立し得るものであるため,両者の賠償を訴訟上併せて請求するときは,[2]を異にする二個の請求が併合されているものと解される。
ア [1]=謝罪広告 [2]=訴訟物
イ [1]=謝罪広告 [2]=請求し得る法的地位
ウ [1]=適当な措置 [2]=請求し得る法的地位
エ [1]=適当な措置 [2]=訴訟物
(23年7月実施)
【解説】
著作者人格権侵害に対する回復措置ならびに著作権侵害訴訟の訴訟物の問題です。
著作権法115条(名誉回復等の措置)を見てみましょう。
著作者又は実演家は、故意又は過失によりその著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者に対し、損害の賠償に代えて、又は損害の賠償とともに、著作者又は実演家であることを確保し、又は訂正その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができる。
これを読めば、[1]には「適当な措置」が入ることが分かります。
次に[2]ですが、まず用語の意味を確認しておきます。
(有斐閣『法律学小辞典』より)
訴訟物=原告が被告に対して主張する権利・法律関係。
(訴訟上の)請求=原告の被告に対する一定の権利主張とそれに基づく裁判所に対する特定の判決の要求とをいい、狭義には被告に対する権利主張のみをいう。この主張される権利関係を訴訟物と呼ぶ。
実は本問後段は、最高裁昭和61年5月30日第二小法廷判決[モンタージュ写真事件第2次上告審]によって明らかにされた論点です。
(『判例百選』204ページに掲載されています)
判旨は、
「複製権を内容とする著作財産権と公表権、氏名表示権及び同一性保持権を内容とする著作者人格権とは、それぞれ保護法益を異にし、また、著作財産権には譲渡性及び相続性が認められ、保護期間が定められているが、著作者人格権には譲渡性及び相続性がなく、保護期間の定めがないなど、両者は、法的保護の態様を異にしている。したがつて、当該著作物に対する同一の行為により著作財産権と著作者人格権とが侵害された場合であつても、著作財産権侵害による精神的損害と著作者人格権侵害による精神的損害とは両立しうるものであつて、両者の賠償を訴訟上併せて請求するときは、訴訟物を異にする二個の請求が併合されているものであるから、被侵害利益の相違に従い著作財産権侵害に基づく慰謝料額と著作者人格権侵害に基づく慰謝料額とをそれぞれ特定して請求すべきである」
ということで、[2]には「訴訟物」が入ることが分かります。
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