Y社に対して著作権侵害訴訟を提起した新聞社X社の法務担当者のア〜エの発言をを比較して、最も不適切と考えられるものはどれか。
ア 「われわれとしては、Y社の複製物がわが社の著作物に『依拠』して作成されていることを主張・立証しなければならないね。」
イ 「『依拠』というのは、条文には明記されていないものの、著作権は相対的独占権であるがゆえに要求される要件だね。」
ウ 「依拠性は、要はY社がわが社の著作物の存在を知っていたという事実によって立証できればよいが、このような主観的事実を立証するのは相当に難しいね。」
エ 「依拠性については、Y社がわが社の著作物にアクセスし得る十分な蓋然性があるというだけでは足りず、実際にアクセスした事実を立証する必要があるね。」
(22年11月実施)
【解説】
著作権(特に複製権・翻案権)の侵害に際し問題となる、「依拠」の要件についての問題です。
ア
依拠性は、著作権侵害を主張する者が立証責任を負います。
↓
適切
イ
著作権は、結果として既存の著作物と同じ著作物が創作されたとしても、既存の著作物とは独自に創作されたものであれば、独自の著作物として保護されるという、相対的独占権です。
ここで「相対権」と「絶対権」とは何でしょうか。
『法律学小辞典』を調べると、次のような意味だと書かれています。
相対権……特定の人に対してしか主張できない権利
絶対権……権利者以外の誰に対してでも法律上の主張ができる種類の権利
絶対権として代表的なものに、所有権があります。
これは誰に対してでも主張できます。
そして特許権も、絶対権と言えます。
では著作権はどうでしょうか。
たとえ同じ著作物ができたとしても、既存著作物に依拠して作られたものでなければ、それぞれが独自の著作物として保護されます。
逆に言えば、既存著作物に依拠して作られた著作物は、著作権侵害が問題になる、ということです。
このように、著作権は相対権なのです。
↓
適切
ウ
依拠性は、相手方の主観的事実を問題とするものであるため、多くの場合、間接事実から推認せざるをえません。
つまり、「独自に創作したか」「依拠して複製・翻案したか」は、その既存著作物を知っていたかどうかという主観に左右されるのです。
この主観は、基本的に、外見から分かるものではないために、「おまえ知っていただろう!」と立証するのは、難しいものです。
↓
適切
エ
ウと同じことが問題になります。「実際にアクセスした事実」を立証するのは、事実上不可能というべきでしょう。そこで、既存著作物に「アクセスし得る十分な蓋然性」があれば、依拠を認めてよいといわれています。
↓
不適切
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