2012年8月21日火曜日

JASRACの音楽著作物の信託についての問題

【問題】
著作権の管理、利用、保護に関するア〜ウの記述を比較して、最も適切と考えられるものはどれか。

ア 原著作物たる楽曲の編曲・翻案権が音楽出版社に譲渡されている場合、二次的著作物の利用権をJASRACが管理することはできない。

イ 音楽著作物の編曲や翻案を許諾する権利は、たとえ契約書に編曲・翻案権が音楽出版社に譲渡されることが明記されていても著作権に留保される。

ウ 音楽出版社が、譲渡された音楽著作物の編曲・翻案権を行使する際も、著作者の同一性保持権に配慮しなければならない。

(22年11月実施)


【解説】
著作権等管理事業法に基づく「著作権等管理事業者」(本文ではJASRAC)の、音楽著作物の信託についての問題です。
背景には、音楽の著作物の著作権は音楽出版社に譲渡されることが一般的だ、という事情があります。
その点、言語の著作物(書籍)等とは異なっています。


二次的著作物の利用権(著作権法28条)は、JASRACの信託契約約款に特掲されているので、信託の対象になっていると解されます。

著作権法28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

JASRAC信託契約約款 第3条(著作権の信託)
委託者は、その有するすべての著作権及び将来取得するすべての著作権を、本契約の期間中、信託財産として受託者に移転し、受託者は、委託者のためにその著作権を管理し、その管理によって得た著作物使用料等を受益者に分配する。この場合において、委託者が受託者に移転する著作権には、著作権法第28条に規定する権利を含むものとする。
(★著作権法第27条「翻訳権、翻案権等」が含まれていないことに注意!)

不適切


著作権法61条2項(著作権の譲渡)
著作権を譲渡する契約において、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。

適切


著作者人格権は一身専属ですので、譲渡することはできません。
よって、音楽出版社に一切の著作権が譲渡されたとしても、著作者人格権たる「同一性保持権」は音楽出版社ではなく、著作者にありますので、注意が必要です。

適切


0 件のコメント:

コメントを投稿