2012年11月10日土曜日

民法の「債務不履行」に関する問題

【問題】
ゲームメーカーX社の契約担当者の契約書に関するア〜エの発言を比較して、最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 「債務不履行による損害賠償額に関する民法416条は強行規定ではなく任意規定だよね」

イ 「債務不履行に対して損害賠償請求ができる条項を設けない場合には、不法行為に基づく損害賠償請求はできるけど、債務不履行による損害賠償請求はできないことになるので注意が必要だ」

ウ 「債務不履行による損害賠償請求について条項を設ける場合として、損害額の立証が不可能であるか困難であることが想定される場合に損害賠償額を予定しておくことがある」

エ 「債務不履行による損害賠償請求について条項を設ける場合として、当事者の一方が当該取引から得ることの維持できる利益の額に比べて、相手方に生じることの予想される損害の額が過大になりそうなことが想定される場合に損害賠償額の限度額を設けることがある」

(22年11月実施)


【解説】
民法の「債務不履行」に関する問題です。
まず条文を見てみましょう。


第415条(債務不履行による損害賠償)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

第416条(損害賠償の範囲)
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

第420条(賠償額の予定)
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3 違約金は、賠償額の予定と推定する。


損害額の算定は、請求者が行わなければならないことが基本です。



416条は任意規定なので、その特約として420条があります。

適切


不法行為に基づく損害賠償請求と、債務不履行による損害賠償請求は、訴訟物を異にするため、両立するという考えが、多数説・判例です(旧訴訟物理論)。
※「訴訟物」については、民事訴訟法の基本的な勉強をすればすぐに出てきますが、ここでは省略します。

不適切


420条1項のとおりです。

適切


これも、416条が任意規定であることから、公序良俗に反しない限り、契約は有効と考えられています。

適切

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